「……おい、
「なんだ高杉」

ゆったりと出されたお茶を啜っていた私は、掛けられた声に視線を向けた。

「なんで居るんだ。お前、何日か前に母艦に帰ったんじゃねェのか?
 神威の部下が迎えに来て、一緒に帰ったのを見送ったはずだが」
「うん。帰ったんだけど、なんか今回の件で上が、ええと査定?に来るらしくて」

といっても、実際に「来る」わけではないらしいが。
私の存在が何かややこしい事態を招きかねない、というのが阿伏兎さんの意見で、それを受けて私はここに来た。

「私が居ると色々問題ありそうだし、…というか神威が問題起こしそうだから避難しとけって阿伏兎さんがね」
「それでなんでここに居るんだ?」
「他に無いでしょ、安全な場所が」

第七師団の船はまだメインシステムの復旧中だ。
他の師団の船は以ての外。鬼兵隊の船くらいしか安全な場所がない。
なんてことはない。単なる消去法の結果である。



閑話 ~ File03 お茶とお菓子と能く在る噺




「…で、あの隅にいるのは?」
「神威の部下。あんたが私に手出ししないように見張りだってさ」
「随分な話だな。俺がお前に手出しなんかするわけねェだろ。
 提督殿じゃあるめェし、銀時のお下がりには興味無い」
「誰がお下がり!? だから私と銀さんはそういうのじゃないと何度言わせんのさ!!」

いや、確かに一緒に住んでいたという事実はあるので、世間一般的には誤解されるかもだけど。
…神威はまあ、仕方ないにしてもだ。
銀さんをよく知る高杉が勘違いしてるとは思えないので、これは恐らくただの嫌がらせだ。

「どっちにしろ、今手ェ出したら提督殿のお下がりにゃ違いねェだろ」
「やっぱそういう意味かよ! 最低だなてめぇは!!」

何が悲しくてこいつらの船でああいうことになってしまったのか、私にもいまいちわからないのだけど!
いや良いんだけどさ…やってしまったもんは仕方ないよね…うん…。
……………いやちょっと待て、それとこいつの暴言は関係ない。許してはいけないのでは?

「しかし意外と言えば意外だな。お前が神威とくっついてんのは」
「言うな…私も意外だと思ってるよ…」
「そもそも、なんで春雨に居るんだお前」
「今更!? …いや、神威の馬鹿に誘拐されて来た…」
「こんな凶暴な猪女を誘拐たぁ、物好きだなあのガキも」
「うるせーな、猪女言うな!!」

だからなんでどいつもこいつも、私を猪に例えるの!!
憤慨する私を面白そうに眺めながら、ふと思いついたように高杉は口を開いた。

「暇潰しに馴れ初めって奴を聞かせろよ。どうせ面白おかしい話なんだろ」
「暇潰しって失礼な奴だなコノヤロウ。別に面白くもなんともないわ!!」
「お前だって暇だろ」
「…いや、暇だけどさ」

実際、暇は暇だ。
また子ちゃんでもいればからかって遊ぶけど、残念ながら今はこいつしか私の前にはいない。
いやしかし、私はともかくこいつは暇で良いの? 顔見知りとは言え、なんで鬼兵隊の総大将が私と雑談してんの?

「………本当に面白くないどころか不愉快な話だよ」
「心配するな。お前が不愉快なら俺は面白い」
「思ってても言うなよそういうこと」

本当にこいつは一言多いし、性格最悪だと思う…。
…しかし、馴れ初め…馴れ初めねぇ…どう説明したら良いか…。

「…まぁ、多分、事の発端は…私が間違って、神威に斬り掛ったからだと思う…」
「お前はどれだけ怖いもの知らずの馬鹿だ。いくらお前でもあのガキ相手はきついだろ」
「だから間違ったんだって! 気配だけで斬り掛っちゃったの、姿も確認しなかったの!」
「ますます馬鹿じゃねーか。見ず知らずの一般人だったら死んでるぞ」
「馬鹿にすんな殺す気はなかったわッ!!」

私が薙刀振り回して死ぬような奴、そうそういないっての!
…多分。多分。…いや振り回してはいない、よね…? 当たったら怪我はしたかもしれないけど…。

「まぁ、お前が馬鹿なのは今に始まったことじゃねェか。それで?」
「ほ、本当にムカつく野郎だな…!
 ……どうもこうも、首に手刀突きつけられてプロポーズされた挙句、気絶させられて誘拐された」
「なんだその急展開」
「私が聞きたいわ!! おまけに次に目が覚めたら宇宙のど真ん中だったていうね…!
 ホントに話通じないし! 勝手なことばっか言うし!! 今思い出しても腸が煮えくり返りそう!!」
「…
「なんだ!」

勢いのまま怒鳴り返すと、珍しく高杉は困惑したような表情を浮かべていた。

「………なんであいつとくっついてんだ?」
「………わかんないです」

…なんで。なんでだろ。
まず神威が私を好きになる要素ってなに? どこ?
そんで私が神威を好きになる理由ってなに? きっかけってどれ??
…………うん? 混乱してきたぞ??

「…高杉。私の魅力ってなに? どれ?」
「それを俺に訊いてどうするんだお前は」
「それもそうだ…」

どうせ無いって言うだろうしな、こいつの場合。
神威には顔と腕っ節と性格の悪さが良いとか言われたけどアレ本気かなぁ…。
あいつはなんだ、まあ顔は良いな、うん。あとはダメでは? うーん?

「…辛いものと甘いものを同時に口に入れたような顔になってんぞ。大丈夫か?」
「…あんまり…。理由、特に無いかも…」

好きだと言われたから好きになったわけでは、ないんだが。
じゃあなんでかと訊かれると、返答に困る。
お互いの常識はズレてるし、価値観も同じではないし、気を抜けば殺されそうだなとか常に思ってるし。
神威のどこか刹那的で危なっかしいところを私が変えてやろうとか、そういうのもないし。
かと言って、私自身の何かを神威に変えてもらおうとかカケラも思いはしないし。そもそも変わる気ないし。
共依存の関係には程遠く、少女漫画のような優しい恋でもなく、ハーレクインのような激しいラブロマンスでもなく。
なのに互いに執着だけが、ある。理由も曖昧で名状しがたいソレを、私達は仮に愛と呼称する。
考えれば考えるほどに、私と神威の関係性は、なんだかひどくあやふやだ。
もっとわかりやすい性格してれば良かったのに。お互い様だけど。

「…気の強ェ女ってのは、案外流されやすいんだな」
「そこは反論したいな! さんはそんな安っぽい女じゃないですよ!!」
「安くはねェだろうがお前、馬鹿だろ。色んな意味で」
「なんで馬鹿なの! 今脳みそフル稼働で哲学的な考え方してるよ!!」
「それで思考が迷子になってるならただの馬鹿だろ」

呆れたように言われて、思わず言葉に詰まる。
確かに迷子だけども。

「…だいたいお前、春雨に連れて来られたのどのくらい前だよ」
「………半年ちょい?」
「で、その間は?」
「………基本的には、ちょっかいかけてくる神威を迎撃してた」
「で、なんでこうなった」
「わかんないです。気が付いたらこんなことに…」
「…やっぱ馬鹿だな」
「だからなんでだよ!!」

そんな溜息混じりにしみじみ言わなくても良くない!?
こいつに真っ当な理由で呆れられるとか、無性に腹が立つ…!

「…恋なんてのは馬鹿でみっともないくらいがちょうど良いもんだろ!」
「わかったわかった。…どうにも、クセのある男しか居ねぇな。お前の周りには」
「…それあんたも含まれるんですが」
「そりゃ光栄だ」

寧ろこの世界の主要人物、クセのある奴しかいない気がするんだが。
まるで私がクセのある男を集めてるように言うけど、逆じゃないかな。
クセのある男どもの中に飛び込んでしまっただけというか。

「…しかし改めて考えると、どうにもお前の存在は腑に落ちねェな」
「え。ついに存在否定?」
「違ェよ。…お前、考えたことないのか」
「なにを」
「お前と瓜二つの藤の姫。未だに見つからないのはおかしいと思わねェか?」

思わず、一切の動きを止めた。
私と瓜二つ、というより生き写しの、成金貴族のお姫様。
何を思ってか生家を出奔した彼女の行方は、杳として知れない。

「藤原道三の長女,蝶子姫と言やぁ、徳川御三家のひとつ、一橋家の坊が一目で気に入ったほどの娘だ。
 親父の方は黒い噂が絶えねェが、娘は絶世の美姫だ傾城だと大層評判が良い」
「へー」
「で、実の親でも間違うほどだ。実物もお前と同じ面してるなら、そんな娘が目立たないわけがねェ」
「人を指さすのやめてくれませんかね」
「姫が行方を眩ませた数日後に突然現れた、そっくりな顔した女。間違ってくれと言わんばかりだな」
「知るか。周りが勝手に間違ったんだよ」
「そもそも、」

人の話聞けよ。
好き自由に喋る高杉にげんなりしていると、ふと。
私に向けられる、探るような鋭い視線に思わず息を飲む。

「…お前はどこの誰なんだ?」

――きっと、多分。
本当はもっと早くに、誰かが「それ」を私に訊いてくるのが普通だったのだと、思う。

「………」
という名前の女の痕跡が、銀時がお前を拾う以前にはない」

程良くされた勘違いをそのままにして、この世界での「素性」を得た私に、親兄弟の話を振る人は滅多にいなかった。
元商人今成金貴族の娘,「藤原蝶子」を本名とする、万事屋銀ちゃんの居候で真選組女中の「」。
家も親も拒んで万事屋に居座り、「別の人間」になりたがるお姫様。それが私なのだという周囲の認識を、私はそのまま放置した。
嘘の中に隠された嘘は、気づかれにくい。きっと銀さん達も、真選組のみんなも気づいていない。
――だから、逆に。高杉だけが私を疑ったことには、しっくりきてしまうのだ。

「…いや、なんであんた私のこと調べてんの? 私のこと好きなの?」
「誰がだ。話の腰を折るんじゃねェよ」

折ろうとしたのにダメですか。
この話、続けても平行線なんだけどなぁ…なにせ答えようがない。

「名前が消されたんなら、吉原や島原からの足抜けかとも思ったが、該当する女がいない」
「遊女でも芸妓でもねーよ」
「じゃあ、お前はなんだ。出身は? 親兄弟は?
 妙に腕っ節が強いが、喧嘩慣れしてるわけでもねェ。教養もあるが庶民的で口は悪い。素性に見当がつかん」
「……いや、それは」

この世界でどんなに「私」を調べたって無駄だ。何か出てくるわけもない。
だって、言ったところで信じないだろ。別の世界から来ましたとか。
良くて冗談、悪くて頭がオカシイと思われるだろう。私が逆の立場なら信じない。
だから、私は敢えて嘘をつく。どこの誰でもない自分を、どこかの誰かにして。

「…どうでも良いだろ? 私がどこの誰か、なんて。なんか不都合でもあるの」
「………」
「それを言ったら銀さんの素性だってわかんねーじゃんよ。何か問題あった?」
「…それもそうだな。くだらねェことを言った」

そう言って、高杉は続く言葉を飲み込んだ。…納得したわけではないのだろうが。
こういう一面を見ると、高杉と銀さんはよく似た性質なんだろうなと思う。

「なんで急にそんな話し出したかね」
「大した理由じゃねェよ。少し気になっただけだ。
 藤の姫は駒として使えそうだと思ったんだが、行方がまったくわからん」

そこは私も多少は気になっていたが。
家出の理由なんざそれこそ駆け落ちかなにかで、もう江戸にいないんじゃないかなぁ、と思っている。

「さすがに不自然だ。だからお前が、本当に蝶子姫本人である可能性も少しは考えたが、」
「が?」
「…ねェな。甘やかされて育った令嬢にしては、お前は獣の性が強過ぎる」
「獣ってお前。うら若き乙女に向かって」
「乙女ってガラかよ猪女」
「ぁんだとコノヤロウ」

だからなんで猪に例えるんだよ。立派に乙女ですよまったく。
獣だとか鬼だとか、私を形容する例えがどいつもこいつも物騒なのはなんでなの。
花とか蝶とかじゃダメなのか。…ダメか。知ってた。涙出そう。

「お前のそういうところを気に入っているんだろうよ、提督殿もな」
「…うーん…それはあんまり嬉しくない…」

そして「腕っぷしが強いところと性格悪いところが良い」とか言われた手前、否定も出来ない…。
…いや、仕方ない。もうこの歳では性格は直らない。そこを受け入れてくれる男なんて希少だ喜ばしい、ってことにしておこう。

「だが…まァ、気を付けることだ」
「なにを?」
「お前みたいな女は、敵を作りやすい」

敵ってなんだよ、敵って。お前か。
私はよく言われる通り口も性格も悪いのは自覚しているし、嫌われることも多々あるのは理解しているつもりだが。
高杉の言う「敵」っていうのは何を指すのか。

「実際のお前はただの馬鹿な猪女だが」
「オイコラ言い過ぎだぞ」
「見目の良い妙齢の女。腕っぷしが強くて物怖じせず、その上頭の出来も悪くない。
 夜兎とはまた別の意味で、組織からは疎まれる存在だろうよ」

春雨ほどの組織が? 私如きを??
いやいや、ないだろ。たかが地球人の小娘ひとり、海賊が何を恐れるというのか。

「お前が考えているほど、世の悪党は楽天家じゃねェよ。仲間意識も薄っぺらだ。
 神威に付く以上、自衛は怠らない方がいいぜ。敵は外だけにいるとは限らねェ」
「………」
「護られるだけの女で居たいなら、無能な振りをして羊の皮を被って過ごせば良い。
 組織の頭の傍に控える女なんてのは、外野からしたら人形か野心を持つ悪党のどっちかだ」

両極端な例えではあるが、言ってることはわかる。
人形であれば無害、野心家であれば有害。
同じ組織に属しながらも仲間意識は薄く、己の利権を争う海賊達にとっては、同じ野心家の悪党は邪魔だろう。
それが、武力を以って新提督となった男の傍にいる女なら、なおのこと。
…まあ、なぁ。私がアレしろコレしろって言えば、神威は平然と「それでいいよ」とか言いそうだしなぁ。
十中八九阿伏兎さんが止めるけど、外野からしたらそんなのわからないわけで。
馬鹿馬鹿しい、と笑い飛ばすには、春雨は組織としてあまりにもアンダーグラウンドだし、内部はとても不安定だ。
面倒事は御免だけど、人形扱いはされたくない。かと言って周囲なんて気にしないと言えるほど、私の頭は花畑ではなく。
――だから私は、高杉の問いに対する答えをまだ、持っていない。


「さて――。お前はどっちがいい?」


+++


「歓談中のところ悪いがな、姐さん。母艦の方は片付いたようだぞ」

花が咲くというよりナイフで斬り合ってるような歓談だけどな。
聞いててわかってるはずなのに、そう言ってくるあたり神威の部下も曲者揃いだよね…。

「じゃあもう戻っても大丈夫?」
「団長が姐さんがいなくて不貞腐れてるらしい」
「あいつなにやってんの!」

なんなんだあいつは。子供か!!
大丈夫かなぁ。査定とやらは無事に終わったのかなぁ…心配になってきた…。

「…わかった。さっさと帰ろう…」
「姐さんの顔見りゃご機嫌も治るだろ。そういうところは単純だからな団長は」
「言われてるなぁ…」

どうせ話の途中で退屈過ぎて面倒くさくなったとか、そんなのだろう。
放っておいても問題ないのだろうけど、直せるなら機嫌を直して欲しいってことかなこれ。

「なんだ、帰るのか」
「帰りますよ。お世話にナリマシタ」
「カケラも思ってなさそうだが」
「思ってないもん」
「…お前な…」

斬り合いみたいな雑談をしただけで、特に世話になったというほどのことはない。
でもお茶とお茶菓子は頂いたのでそこはちゃんと感謝してる。

「お茶とお茶菓子は美味しかったです。ご馳走様でした」
「飲食に関してだけ礼儀正しいのもどうなんだ」
「台所を制する者は全てを制するというのが私の持論だ」
「そうかい。…変な奴だな」
「変とはなんだ失礼だぞ」

家庭のお母さん然り、食堂のオバちゃん然り、厨房の料理長然り。
生命維持に欠かせない食を提供する台所の主こそ、最も偉いんだぞ。
ただし味付けに於いて手を抜くのは許さない。

「…まぁ、茶の味がわかる程度の教養があるなら、俺が暇なときくらいはまた相手してやるよ」
「…え。なに。高杉が私に優しいとか気持ち悪いんですけど何企んでるの」
「オイ。言い過ぎだぞ小娘」
「というか暇で良いのかよ総督サマ」
「俺をなんだと思ってるんだ、機械じゃねぇんだたまには暇な日もある。
 お前が馬鹿みたいにぎゃあぎゃあ騒いでるのを眺めてるのは、ちょうどいい暇潰しになるからな」
「わぁ、感じ悪いですね高杉さん!!」

その馬鹿と同レベルで言い合いしてるお前はなんなんだよ!!
よっぽど言い返そうかと思ったのに、当の本人は馬鹿にするように笑いながら部屋を出て行ってしまった。
今日も絶好調に嫌な奴ですねコノヤロウ。というかホントに私で暇潰してただけかあいつ!









「…あー…あっちでは高杉の暇潰しに付き合って、こっちでは神威のお守りかー。
 私は休む暇も与えられないのかね? さんはさすがに疲れたよ」
「ははは、そう言うなって。姐さんじゃないとあの団長の相手は務まらねぇよ」
「…あとなんか第七師団のみなさまがみんな私のこと姐さんって呼ぶのなんで」
「いや、そう呼べって言ったの姐さんだろ」

え、そこ律儀に守っちゃうの。案外素直だな、第七師団の皆様は。

雑談に興じながら母艦の入り口をくぐり、ロビーのような開けた部屋を進む。
第七師団の船が主な生活空間であった私にとっては、多種多様な種族が入り乱れる母艦は、あまり居心地の良い空間ではない。
ことこの中に於いて、地球人は珍しい。恐らくだけど、私は高杉の配下か何かだと思われているんだろう。面白くはないが。
なるほど、そう考えれば高杉の忠告は的を射ている。案外、私の立ち位置は危ういらしい。

「あ、だ。おかえりー」
「神威」

遠巻きに私を眺める他の師団員の視線も何もお構いなしに、軽いノリで近寄ってきたのは一応提督サマのはずの神威だ。
…本当にノリが軽いなコイツ。良いのかな、こんなのが提督で。
偉そうに踏ん反り返るタイプでは確かにないし、威圧感はあるだろうけど、威厳はどこに。

「晋助に何もされてない?」
「開口一番それはどうなの。なんもされてないよ…」

何かされること前提で送り出されたんだろうか。
…そうだとしたらこいつとの付き合い方を改めなければいけないな。

不貞腐れていると聞いたのに、まあ、見事に笑顔である。
さすが、付き合い長いだけあって第七師団の皆さんは団長のことをよく理解していらっしゃる。

「あんたの方こそ、ちゃんと大人しくしてた? 査定とやらは?」
「途中から面倒くさくなって聞き流してたから、詳しいことは阿伏兎に聞いてよ」
「…あんたね…もう少し真面目にやるフリくらい…」

ある意味予想通りの返答に頭を抱えた、瞬間だった。

――え…?」

ドン、と背後から衝撃が来た。
目の前にいる神威の表情が、凍り付く。
…え。なに。これ、なに。何が起こったの。

チカチカと目の前が赤く点滅する。
耳障りなほど、脈打つ鼓動の音がうるさい。
熱い。熱い。喉が焼けそう。

――…」

咄嗟に伸ばした指先は、すぐに捕らえられる。
抱きとめられたと理解して、ああ、私は倒れたようだと他人事のように思う。
神威が何か言ってる。…聞こえない。周囲の音も、何もかも。





――意識が、落ちた。






それは、失念していた報い。



To be continued?

気に入っていただけたら、ぽちっと押してあげてください。コメントは入れなくてもOKです。