――に続き、今回卑劣なテロに狙われた犬威星大使館。
 幸い死傷者は出ていませんが…、え…あっ、新しい情報が入りました』

テレビを囲む私達は、ジッとその画面を見つめていた。
無論、ニュースキャスターのお姉さんをガン見してるわけではない。

『監視カメラに、テロリストと思われる一味が映っているとの…
 あ~~、バッチリ映ってますね~~』

監視カメラの映像が流された瞬間、場の空気は異様なものになる。
ひとりだけ、私はにっこりと微笑み、晴れやかな気分で口を開いた。

「あー、良かった。私、映ってない」
「俺らを前にしてそういうこと言いますか、ちゃんよ」
「あたっ」

がしっと、上から銀さんに頭を押さえつけられた。
痛い。首もげる。むしろ髪がぐちゃぐちゃになる!

「銀さんの馬鹿ー! 自分がクルクル天パだからって私の見事な黒髪に何すんのー!?」
「お前被害者面して実は加害者だよな? さすがの銀さんも泣くぞ。泣いちゃうぞ」
「あー。銀さんの泣き顔見てみたいなー? 泣けよ」
「何このサド娘。真性だよ絶対。怖いんですけど」
「何馬鹿やってんですかあんたらは!」

私と銀さんのくだらないやり取りに、つかさず新八が突っ込みを入れる。
打てば響くような反応だなぁ。本人、相当今の状況に焦ってるけど。

「…バッチリ映っちゃってますよ。どーしよ、姉上に殺される」
「テレビ出演。実家に電話しなきゃ」

神楽はどこまでも呑気だった。
不名誉極まりないテレビ出演だと思う。実家の家族が泣くぞ。

「何かの陰謀ですかね、こりゃ。なんで僕らがこんな目に。
 唯一、桂さんに会えたのが不幸中の幸いでしたよ」
「…新八。あんたホントそう思ってんの…?」
「え? はい。だってあそこで助けて貰わなかったら、今頃警察にしょっぴかれてますよ!」
「…まぁ、そうだろうけどさ」

目を眇める私を不思議そうに見やって、新八は首を傾げた。
まぁ、知らないでこの状況を見れば、単なるお人好しの恩人だよなぁ。確かに。

「こんな状態のかくまってくれるなんて。
 銀さん知り合いなんですよね? 一体どーゆー人なんですか?」
「んー…テロリスト」
「はィ!?」

さらりと返された言葉に、新八は思いっきり顔を引きつらせた。



File04 過去と今とその生き方と




「そんな言い方は止せ」

そんな言葉と共に、襖が開かれた。
その向こうには桂さんと、それに付き従う数名の男達。
なまじ桂さんの顔が整っているせいか、非常にむさ苦しい。

「この国を汚す害虫、〝天人〟を打ち払い、もう一度この国を立て直す。
 我々が行うのは、国を護るがための攘夷だ。卑劣なテロなどと一緒にするな」
「攘夷志士だって!?」
「なんじゃそらヨ」

驚く新八の横で、せんべいを貪り食っていた神楽が口を挟んだ。
もうね、なんか女の子の食べ方じゃないよねそれ。

「攘夷とは20年前に天人襲来の時に起きた、外来人を排そうとする思想で、
 高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を覚えた侍は、彼らを江戸から追い払おうと一斉蜂起して戦ったんだ」

それでも世話焼きな新八は、丁寧に神楽に説明を始める。
まるで歴史の教科書のような、長ったらしい説明。一斉蜂起なんて言葉、神楽に理解できるんだろうか。

「でも天人の強大な力を見て弱腰になった幕府は、
 侍達を置き去りに勝手に天人と不平等な条約を締結。
 幕府の中枢を握った天人は侍達から刀を奪い、彼らを無力化したんだ」
「おーーー、新八ってば物知りーーー
「…さん。神楽ちゃんならまだしも、さんはこのくらい知ってるでしょ」


……
………世界的に一般常識なんだ、ソレ。
怪しまれない程度に、勉強した方が良いんだろうか…嫌だなぁ、面倒くさい。

「…その後。主だった攘夷志士は大量に粛清された、って聞いたけど…まだ残ってたなんて」

まじまじと桂さん達を見る新八を横目に、ふと銀さんが目を眇めた。

「…どうやら俺達ァ踊らされたらしいな」
「?」
「なァ、オイ。飛脚の兄ちゃんよ」

銀さんの言葉に、桂さんの後ろにいたひとりが、申し訳なさそうに視線を逸らした。
そう。お登勢さんのお店にバイクで突っ込んだ、あの飛脚だ。

「あっ、ホントだ!! あのゲジゲジ眉、デジャヴ」
「ちょっ…どーゆー事っスかゲジゲジさん!」
「ゲジゲジさんて」

名前の無いモブキャラの宿命でしょうか。
あ、なんか名前気になってきた。本当にゲジゲジさんだったらどうしよう。

――全部てめーの仕業か、桂。
 最近世を騒がすテロも。今回のことも」

一歩前に進み出ると、銀さんはじっと桂さんと睨み合う。

「たとえ汚い手を使おうとも、手に入れたいものがあったのさ」

桂さんはただ静かにそう告げると、腰に佩いた刀を外し、持ち上げた。

「…銀時。この腐った国を立て直すため、再び俺と共に剣をとらんか」

銀さんの表情は変わらない。
普段の微妙にやる気の無い、気怠そうな表情のままだ。

「白夜叉と恐れられたお前の力、再び貸してくれ」


+++


その言葉に、どれほどの重みが込められていたのかは、私にはわからない。
ただ、彼らの脳裏には、あのシーンが浮かんでいるのだろうと、思う。

攘夷戦争。
多勢に無勢の状況でなお、生きて戦い抜くことを選んだ、その生き方。

私にとっては、所詮は漫画の世界。更には夢の世界だ。
だけど、どうしてだろう。
ピリピリとした空気が、肌を刺すような不思議な感覚。
痛いほどのそれに、居心地の悪さを感じてしまう。

「天人との戦において鬼神の如き働きをやってのけ、敵はおろか味方からも恐れられた武神…
 ――坂田銀時。我らと共に再び天人と戦おうではないか」

桂さんの言葉に、銀さんは面倒くさそうに視線を明後日の方に向ける。
そんな彼に、新八が恐る恐る口を開いた。

「…銀さん、アンタ攘夷戦争に参加してたんですか」

驚愕の滲むその声に答えたのは、銀さん本人ではなく桂さんだ。

「戦が終わると共に姿を消したがな。お前の考えることは昔からよくわからん」
「俺ァ派手な喧嘩は好きだが、テロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの」

ため息混じりにそう言い返して、銀さんは真剣な眼で桂さんを見る。
普段のやる気のなさを拭い去るような、真っ直ぐな視線。
思わずドギマギしてしまって、ああやっぱ私って腐女子だなぁと自分を誉めてみた。

「俺達の戦はもう終わったんだよ。
 それをいつまでもネチネチネチネチ、京都の女かお前は!」
「バカか貴様は! 京女だけでなく、女子はみんなネチネチしてる。
 そういう全てを含めて包み込む度量がないから、お前はモテないんだ」

…どっちも馬鹿だ。
否定もしないけど、誰も彼もがネチネチしてると思うなよコノヤロー…。

「バカヤロー。俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ多分」
「何でも天然パーマのせいにして自己を保っているのか。哀しい男だ」
「哀しくなんかないわ。人はコンプレックスをバネにしてより高みを…」
「あんたら何の話してんの!!」
「よーし、新八。ナイスツッコミだ」
「なにさんすごい偉そうなんですけど!?」

すくなくともヒエラルキーは君より上です。確実に。
そんな突っ込みに我に返ったのか、桂さんは小さく咳払いをした。

「…俺達の戦は、まだ終わってなどいない。貴様の中にとてまだ残っていよう、銀時…
 国を憂い共に戦った同志達の命を奪った、幕府と天人に対する怨嗟の念が…」

スッと、桂さんが刀を持ち上げる。
それを真っ向から見据える銀さんは、ただ黙っていた。

「天人を掃討し、この腐った国を立て直す。
 我等生き残った者が、死んでいった奴等にしてやれるのはそれぐらいだろう」
「…くだらない…」

思わず。
私は、そう呟いていた。
全員の視線が私に集まった時点で、「あ、しまった」とか思ったけど後の祭りだ。

「くだらないだと…?」
「…うん。くだらない」

微かに怒気を孕む桂さんの声に、それでも私は視線を上げて答えた。

「詳しい事情は知らないけど。
 生き残った奴は、生きてる奴の為に生きるべきでしょ」

平和な現代日本で生きる私に、戦争だの武士道だのなんてものは、よくわからない。
だけど思う。死んだ人の無念を晴らす為に生きるなんて、なんて空しい、空虚な生なのか。

「っていうか、そもそもですよ?
 やる気の無い他人様を巻き込むのは如何なもんでしょうかー」
「…娘。見たことのある顔だな。幕臣の娘ではないのか」
「は、」

思わず、私はきょとんと目を瞬かせた。
いやいや、桂さんとは初対面ですけども。新手のナンパですか狂乱の貴公子さん。

「確か…天人相手の商売で成り上がった貴族、藤原道三の娘だな?」
「あー…」

そういえば私、お姫様だっけか…。
あのハゲ、随分ご大層な名前があったのねー。知らなかったー。

「銀時。何故お前が、このような娘と行動を共にしている?」
「あ? うるせぇな、拾いもんだよ。人ン家の居候に文句つけんな」

…まさか銀さんが庇ってくれるとは、思っていませんでした。
思わずまじまじと銀さんを見上げると、くしゃりと頭を撫でられる。

「お前もねー、言いたいこと言うのは良いけど、無駄に喧嘩吹っかけないよーに」
「…ごめんなさい」
「え。何、ちゃんが素直。気持ち悪い」
「ちょっと銀さん失礼だからソレ」

素直に謝っちゃいけないのかコノヤロウ。

「…まあいい」

小さく息を吐くと、桂さんは視線を私から外へと向けた。
外、と言っても窓は硬く閉じられているから、見えるわけじゃない。

「我等の次なる攘夷の標的はターミナル。
 天人を召喚するあの忌まわしき塔を破壊し、奴等を江戸から殲滅する。
 だがアレは世界の要…容易にはおちまい。お前の力がいる、銀時」

真っ直ぐに銀さんを見据える桂さんの表情は、どこまでも本気だ。
黙り込んだ銀さんの態度をどう受け取ったのか、淡々と紡ぐ言葉が、どこか怖い。

「既に我等に荷担したお前に、断る道はないぞ。テロリストとして処断されたくなくば俺と来い。
 迷うことはなかろう。元々、お前の居場所はここだったはずだ」
「銀さん…」

不安そうに、新八が銀さんを見た、瞬間だった。
大きな物音を立てて、襖が蹴破られたのだ。

『!!』

ハッと顔を上げて、私達は視線を襖の方に向けた。
そこで半ば忘れかけていた記憶が戻る。そうだ――真選組!!

「御用改めである! 神妙にしろ、テロリストども!!」

うわーうわー!
あれ、土方さん!? ホンモノ!? うっわ、目つき悪ッ!

「しっ…真選組だァっ!!」

思わずまじまじと監察していると、いつの間にか周囲は真選組に取り囲まれていた。
…呑気に監察してる場合じゃないよ。ピンチじゃないか、これ。

「イカン、逃げろォ!!」
「一人残らず討ちとれェェ!!」

桂さんの声と、土方さんの声はほぼ同時だった。
銀さんは咄嗟に腰の木刀を引き抜き、真選組が入って来たのと逆の襖を蹴破る。
その勢いのままに、わたし達は一目散に駆け出した。
…って、なんで銀さんが先頭走ってんの。

「なななななんなんですかあの人ら!?」
「武装警察『真選組』。反乱分子を即時処分する、対テロ用特殊部隊だ」
「っていうかなんで私まで逃げなきゃいけないんですか桂さん。ワケがわかりません」
「そう思うなら保護でも求めろ。どうせ奴らは聞く耳持たんだろうがな」
「オイオイなんですかその投げやりっぷり!?」

絶対この人、私のこと嫌いだよね!?
なに、さっきのこと根に持ってるの? ちっせぇ男だなまったくもう!

「厄介なのにつかまったな。どうします、ボス?」
「だーれがボスだ!! お前が一番厄介なんだよ!!」
「ヅラ、ボスなら私に任せるヨロシ。善行も悪行も、やるからには大将やるのが私のモットーよ」
「オメーは黙ってろ!! 何その戦国大名みてーなモットー!」

併走するふたりのボケに、普段はボケ担当の銀さんが遂に突っ込みを。
しかし善行どころか悪行も、ってところが良いな。神楽ちゃん最高です。

「オイ」
「ぬを!!」

私の顔の真横を通って、真剣が壁に突き刺さった。
狙われたのは銀さんなんだろうけど、あの、私が怪我したらどう責任とってくれるの土方さん。
木刀を構えて体勢を整えた銀さんを見据えながら、刀の持ち主である土方さんが口を開いた。

「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ、楽しもうや」
「オイオイ、おめーホントに役人か。よく面接通ったな。瞳孔が開いてんぞ」

銀さんの言葉に、思わず私は吹き出した。
そんなはっきり言わないでよ銀さん…笑い堪えるのって結構苦しいんだから…!
笑いを堪えるのに必死でふるふる震えていた私は、向こうの部屋の襖から顔を出し、手招きしている新八に気づいた。
銀さんと睨み合ってる土方さんは、気づいてない様子。今がチャンスだ。

「人のこと言えた義理かてめー! 死んだ魚のよーな目ェしやがって!!」
「いいんだよ。いざという時はキラめくから」

最高に頭の悪い言い合いを始めたふたりから距離をとって、私は新八達の隠れている部屋に向かう。
私がその部屋に滑り込んだのと、抑揚の無い声が響いたのは、ほぼ同時だった。

「土方さん、危ないですぜ」
「「! うおわァァァ!!」」

向かい合う銀さんと土方さんが顔を上げるのと、その轟音が響いた時間差は1秒もない。
容赦なくぶっ放されたそれの衝撃で、壁に大きな穴が空き、瓦礫が飛び散った。

…この容赦の無さっぷり。
これはひょっとしなくてもサドスティック星の王子、沖田総悟に違いない。

「生きてやすか、土方さん」
「バカヤロー、おっ死ぬところだったぜ!!!」
「チッ、しくじったか」
「しくじったって何だ!! オイッ! こっち見ろ、オイッ!!」

そんな言い合いを襖越しに聞きながら、なんとも奇妙な気分を味わう。
…なんだろう。これってある意味恐怖体験なのに、変な脱力感に見舞われているんですけど。


+++


「オイッ、出てきやがれ! 無駄な抵抗は止めな!」

しばらくして。
立てこもる私達に向けて、土方さんの怒声が廊下中に響き渡っていた。

しかし、だ。
私としては、目の前の問題の方が気になってしまうわけで。

「髪増えてない?」
「もう天パとかそういう次元じゃないよコレ。可哀想に」
「…あのねちゃん。本気で哀れみの視線向けないでくれる?
 銀さんこれでも繊細ハートの持ち主なんですけど」

先程のバズーカに爆風のせいで、銀さんの頭が愉快なことになっていた。
あれだ、『のだめ』のマスミちゃんヘアーだ。そっくり。

「ここは15階だ! 逃げ場なんてどこにもないんだよ!!」

マジで。ここ15階かよ。
こんな木造で? あ、でももしかしたら表面だけで中身は鉄筋コンクリート?
くだらないことを考えるくらいには、私の頭も少し混乱気味らしい。

喧騒の中、ひとり静かだった桂さんが、おもむろに懐を探る。
そして、丸い妙な物体を取り出した。

「? そりゃ何のまねだ」
「時限爆弾だ」


……
………平然と爆弾とか言いやがったよこのテロリスト。

「ターミナル爆破のために用意していたんだが、仕方あるまい。
 コイツを奴等におみまいする…その隙にみんな逃げろ」

桂さんが言った瞬間、ガッと銀さんがその胸倉を無言で掴んだ。

「!!」
「貴様ァ! 桂さんに何をするかァァ!!」

怒鳴る桂さんの部下には答えず、射抜くような視線を桂さんに向けて、銀さんは重く口を開く。

「……桂ァ。もう終いにしよーや。
 てめーがどんだけ手ェ汚そうと、死んでった仲間は喜ばねーし、時代も変わらねェ」

その緊迫した雰囲気に、誰一人動けない。
静寂の中、静かな銀さんの声が、響く。

「これ以上薄汚れんな」

その言葉を、どう受け取ったのか。
桂さんの表情が険しさを帯びた。

――薄汚れたのは貴様だ、銀時」

秀麗な顔に険を滲ませて、桂さんもまた、銀さんを真っ向から見据える。

「時代が変わると共に、ふわふわと変節しおって。武士たる者、己の信じた一念を貫き通すものだ」
「お膳立てされた武士道貫いてどーするよ。そんなもんのために、また大事な仲間失うつもりか」

ハッ、と。
桂さんが一瞬目を瞠ったのは、私の見間違いじゃないと、思う。

「俺ァもうそんなの御免だ。どうせ命張るなら、俺は俺の武士道を貫く。
 俺の美しいと思った生き方をし、俺の護りてェもんを護る」

真っ直ぐな、言葉だった。
周囲の皆がその言葉に聞き入り、一言も言葉を発さない。
…その中で、私は沈黙に耐えられずに口を開いた。

「…くっせーセリフですねー」
「………ちゃーん? 銀さん頑張ってシリアスやってんの、面白くしないでお願いだから」
「そんなマスミちゃんヘアーで何格好つけてんだよ」
「誰だよマスミちゃんって」
「のだめのマスミちゃんだよ」
「知らねぇよ。っていうかどうすんだよ、お前のせいでぐだぐだだよ」

いや、だって。
その頭でシリアスやられても、既にギャグと言うか。
むしろドリフ? あ、言ってて古いな自分とか思った。

「銀ちゃん」
「今度はなんだよ」
「コレ…いじくってたらスイッチ押しちゃったヨ」

そう言って神楽が差し出してきたのは――さっき桂さんが取り出した、時限爆弾。
時間を刻み始めたそれを見下ろして、銀さんと桂さんは呟いた。

「…ベタだな」
「ああ。ベタベタだな…」


ンなこと言ってる場合じゃないんですけど。


+++


「オーイ、出てこーい。マジで撃っちゃうぞ~」

だんだん、土方さんの降伏勧告もおざなりになってきたなぁ。

「土方さん、夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」
「やべェ。ビデオ予約すんの忘れてた」

…オイ、役人。仕事中に何言ってんだ。

「さっさと済まそう。発射用意!!」

カチャ、とバズーカを装填する音が鳴った瞬間。
私達は、思いっきり襖を蹴破った。

「「!!」」

目を瞠る土方さん達の横をすり抜け、爆弾を持った私達は廊下に駆け出す。
…あれ? なんで私までついて来ちゃったんだろ。

「なっ…何やってんだ、止めろォォ!!」
「止めるならこの爆弾止めてくれェ!!
 爆弾処理班とかさ…なんかいるだろ、オイ!!」

周りを固めようと近づいてきた真選組に、銀さんは爆弾を突き出した。
残り10秒。大ピンチです。

『おわァァァッ、爆弾持ってるぞコイツ!!!』
「ちょっ、待てオイぃぃぃ!!」

一目散に逃げ出していく真選組。
うわぁ、何の役にも立たなーい…。

「げっ!! あと6秒しかねェ!!」
「銀さん窓、窓!!」
「無理!! もう死ぬ!!」
「大丈夫、銀さんなら星になれる!」
「わけわかんねぇよ!!」
――銀ちゃん。歯ァ食いしばるネ」
「!」

野球のバットを握るように、神楽が自身の傘を両手で握った。
そして、銀さんをボールに見立てて思いっきり傘をスイングする。

「ほあちゃアアアアア!!!」
「ぬわァァァァァ!!」

…人間って、こうも簡単に吹っ飛ぶものなんですね…。
窓ガラスを割って外に吹き飛ばされた銀さんを見送りながら、私はしみじみと思った。
空中で思いっきり上に爆弾を放り投げたのだろう、遥か上方で大きな爆発音が響く。

「ぎっ…銀さーん!!」
「銀ちゃん、さよ~なら~!!」
「いやいや、生きてるって。ほら、ゴキブリ並にしぶといよあの人」

割れた窓ガラスから下を見下ろしながら、私達は口々に言い合った。
もちろん、下の垂れ幕に銀さんがぶら下がっているのを確認してから、だ。

「神楽! !! てめーら、まるで俺に死んで欲しかったよーな口振りだなオイッ」
「そんなことないよー」
「ないヨー」
「全然心こもってねェじゃねーかァァァァァッ!!」

うわぁ、必死だよこの人。
しかしこの高さから落ちて無傷って。どれだけの強運の持ち主だ。

「あはは、ウソウソ! お疲れさま、銀さん!
 帰ったら美味しいごはん作ってあげるから、機嫌直してよ」
「言ったなコラ。俺の舌は肥えてんぞ!」
「白飯にアンコでも盛りゃ、あんたにゃごちそうでしょ」
「オイィィ! なんだお前その見下し目線! あ、でもちょっとそれ美味そう!」
「マジですか銀さん!? さんの冗談じゃないんですかそれ!?」
「白飯が泣くアル。やっぱり白飯にはタクアンヨ」
「渋いよ神楽ちゃんッ」

そんな馬鹿なことを言い合って、笑い合う。
ああ、なんだか良いな。楽しいな、と。

非日常の世界での生活に、私はすんなり順応していた。
違和感を感じない。
『先』を『知っている』くせに、この世界に違和感を感じていない。

そして私は、それにすら疑問を抱かない。



だって、これは『夢』だから。






変わらないものと、変わりゆくもの。



To be continued?

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