別れてからの、ふたりぐらし 02





、今日は泊まる場所は決めてあるのかな? 荷物が来るのは明日なんだろ?」
「あー…テキトーにカプセルホテルとか…?」
「経費で落ちるんだからせめてビジネスホテルに泊まりなよ…」

相変わらず雑だな、と呆れたように目を細める硝子に、は誤魔化すようにへらりと笑って見せた。

「まあ、いいけど。宿が決まってないならうちに来なよ、久しぶりに飲もう」
「え、良いの? 行く行く。硝子大好き」
「はいはい」

時計を見やれば、もう定時時間だ。仕事が残っていないわけではないが、別に明日でも構わない。
今日はもう上がろう、と硝子に促されたは、彼女より先に廊下に出て見知った顔を発見する。

「あれ? 七海じゃん?」
「…さん? 珍しいですね」

――七海健斗も足を止め、の方に向かってくる。
一学年差の先輩後輩だ、いくらが地方勤務とはいえ、彼との接点は割と多い。等級に差はあるが、仕事の内容は似たり寄ったりだ。

「滅多に東京に近寄らないアナタが高専にいるなんて。漸く観念して東京勤務になったんですか?」
「観念して、って。ただの出張だよ、期間不明だけど」
「それはなし崩しに地方に帰れなくなるパターンですね。今後は少し楽ができそうです」
「嫌なこと言うなァ」

薄々そんな予感がしていたは、心底嫌そうに顔を顰めた。
そこに、仕事を片付けた硝子が医務室から顔を出す。

「おや、奇遇だね。七海は任務の報告かな?」
「ええ。帰るところです」
「だったら久々に一緒に飲まないか? これからと飲みに行こうと話していてね。暇があれば」
「飲みに、ですか」

一瞬、七海は思案する素振りを見せた。
基本的には、定時後の仕事はしない主義の彼だ。一応同僚に当たる達との飲み会は、プライベートになるのか否か。

「そうですね、たまには良いかもしれません。ご相伴に与ります」

堅物ではあるが、こういうときに意外とノリが良いのも彼の一面である。



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硝子おすすめの食べ処――『小鳥箱』。
店名のセンス以外は酒から食事、店員に至るまで当たりの店である。
おすすめの料理をつまみながら酒を傾けていた三人の話題は、近況報告からつい少し前にの身に起こった珍事へと移行した。

「昇級、ですか」

顔色一つ変えずに度数の強い酒を平然と呷りながら、七海は普段通りのテンションで淡々と口を開く。

さんが準一級止まりなのは確かに損失ですが、随分今更な話ですね」
「まー、加茂家の中でも私を一級に上げるか上げないか、そもそもから籍抜けば良いんじゃないか、とかたまーに話に出るらしいんだけども」
「アナタ、そんな重要人物なんですか?」
「七海よ、さらりと先輩をディスるとはどういう意図だ」
「純粋な疑問です。さんが少々特殊な家庭事情と体質なのは理解していますが、それほど特別とも思えません」

加茂家傍流の家に生まれた、本来術式を持って生まれてくるはずのない、呪力の流れが奇妙な呪術師。
呪術師としてのを表すなら、そうなるだろうか。実際のところ、彼女の『状態』が珍しいだけで『術式』が珍しいわけではない。

「確かにね。その特殊さも、前例はないが呪力コントロールが得意な奴には再現できるものだ。術式もピーキー性能だしね」
「御三家絡みが色々面倒とは言っても、発言権の低い一般の呪術師に過ぎないアナタの昇級を、今更邪魔する必要は無いでしょう」
「あの頃はまあ、邪魔される理由は一応、あったしね。でも、それも今は解消されてる」
「そう考えると…さんが一級に上がれないのは単に勤務態度が悪いから、ではないですかね」
「ふたりして酷いな! そもそも私、昇級したいなんて一言も言ってないのに!!」

一級と準一級では給料や待遇は大きく差があるが、それに比例するように危険度も雲泥の差だ。
好き好んで昇級したがる奴は大抵、出世欲があるか、使命感や正義感が強いかのどちらかだろう。はどちらにも該当しない。

「五条さんの融通で昇級してしまうと、後が面倒だと思いますよ」
「…それは私にもよーくわかっているんだが、夜蛾学長まで絡んでるとなると、私にはもうどうにも出来ねェよ…」

今更、現状に不満など無いにとって寝耳に水の話であったし、そもそも五条はのために昇級の話を通して来たわけではない。
相変わらずひとの都合なんて考えない奴だな、とはげんなりと肩を落とした。

「あいつホント面倒くさい…」
も十分面倒くさいけどね。ろくに意思表示しないまま地方に逃げるからこうなるんだよ」
「五条さんが面倒臭いのはその通りですが、さんのその面倒くさがりな性分のせいで、余計に事態が拗れているんですよ。自重して下さい」

味方がいない。
両手で耳を塞いで、小言を聞こえないふりをする。正論は耳に痛い。

「硝子も七海も私に厳しい…」
だから厳しいわけじゃないよ」
「私は誰にでもこうですよ」
「うん、知ってた」

手放しで慰めてくれるようなこともないが、相手を見て対応を変えるようなふたりでもないのは、もよくわかっている。
愚痴を言ったところで非生産的だ。気を取り直して、両耳を塞いでいた手を外す。

「…今は仕事のことは忘れたいと思います。よーし飲むぞー」
「ほどほどにね。は自分で思っているほど酒に強くはないよ」
「大人らしく節度を保ってお願いします」
「…なんなのお前ら揃いも揃って!!」

良い気分になろうとしているのに水を差すな、と。
そうがなる彼女を、「相変わらず短気ですね」と称しながら七海は三杯目の酒を注文した。


+++


「おっはよー! ー! 荷解きの手伝いに来たよー!」

変なハイテンションで、思いっきり派手に開け放たれたドア。
リビングの床に転がっていたは、ひどく緩慢な動きで頭を上げた。昨日見たばかりの顔が、当たり前のように鍵を開けて部屋に上がり込んでいる。
やっぱり鍵持ってたんだな、とぼんやり思いながらは気怠げに口を開いた。

「……………………あ?」
「今日は一段とガラ悪いな。どうした?」
「……二日酔い……」

転がったまま、は呻くように応えた。
ロングTシャツ一枚でフローリングとお友達になっている理由は、一応寝室から出て来たはいいものの、二日酔いで立っていられなくなって倒れ込んだら動くのが億劫になった――といったところだろう。

「あー…硝子か。アイツのペースに合わせて飲んだろ、オマエは大して酒強くないんだから硝子に合わせんのやめろよ」
「下戸に言われたくねーわ…ところで後ろでそわそわしてる少年は何…」

玄関の向こうに、身の置き所に困ってそわそわしている少年いる。五条が連れて来たのだろうが、なんで彼はこんなところに引っ張ってこられたのか。

「あ、そうだった。僕が担任やってる高専一年の虎杖悠仁くんです。ハイ、悠仁。挨拶」
「高専一年、虎杖悠仁です! 好みのタイプはジェニファー・ローレンスです! よろしくお願いします!」
「あぁ、うん…準一級呪術師、です…で、虎杖クンは何しにここへ…あとなんで好みの女いきなり宣言してきた…?」

勢いよく頭を下げる少年――虎杖悠仁に、は一応、挨拶を返す。起き上がる気力はまだ無い。

「いや、自己紹介は大事かなって。で、引っ越しの荷解きの手伝い、って言われて来たんだけど…」
「……五条よ。学生を私的な用事に駆り出すな」

制服だったので高専生なのはもわかっていたが、まさか荷解きの手伝いに連れて来たとは思ってもいなかった。

「半分任務みたいなもんだし、悠仁が暇してたから手伝ってもらおうと思っただけだよ。男手、必要かなって」
「学生は暇じゃねーだろ、授業どうした。何やってんだ担任教師…」
「他の子達が任務で出払ってるんだよ」
「あー…」

だからといって私用に巻き込むのが正当化されるわけではないが。
どういう経緯で彼が連れてこられたのか把握したが、それに苦言を呈したところで右から左に流されることを、はよく知っているのでそんな無駄なことはしない。

「…五条先生」
「うん?」
「先生って暫くここに住むって話だったよね?」
「そうだね」
「…さん、女の人だよね?」
「うん。見たまんまだね」

未だに転がったままのを困惑気味に眺めいた虎杖が、ゆっくりと視線を五条に戻す。

「彼女と同居する家の荷解きを生徒に手伝わせる教師ってなに? さすがにこれは常識無いよ、俺でも引くわ」
「真顔で言われると傷つくなぁ」
「…彼女じゃねーから…」
「余計にダメじゃん。どういう関係?」

第三者が抱くにはもっともな疑問である。
虎杖の問いにが答える前に、五条が的確ではあるものの詳細の一切を省いた雑な一言で片付けた。

「ん? 同期で元カノ」
「ごめん先生、情報多過ぎて俺の頭で処理しきれない。それ俺が聞いて良いやつ? どういう顔してここに居ればいいの俺」

困惑する虎杖に、さすがに補足説明をしようかと口を開きかけたは、しかし頭痛を覚えて顔を顰め、呻き声を上げてうずくまる。

「…ぅあー…」
「ちょっと、。いつまで転がってんの、起きろよ。ほら、水」
「んー…」

差し出されたペットボトルを受け取って、ふと違和感には動きを止めた。

「………なんで水持ってんの? 冷蔵庫開けた?」
「開けてない。なんでだと思う?」
「…………実は私が二日酔いで転がってるの知ってた?」
「うん。硝子から連絡来た。朝は一応自力で歩いて行ったけど、多分グロッキーになってるから助けて来いって」
「なんでその情報持ってて面識無しの学生連れて来たの? 私に恥かかせて喜んでんの?」
「オマエそういうの気にしないじゃん」
「お前相手なら今更気にしねェけど、さすがに初対面の男子高校生の前では気にするわバカ。そういうところがダメなんだお前は」
「青い顔で無様に転がりながら言われてもねぇ」
「むっかつく…」

どこか小馬鹿にしたような物言いは、相変わらずだ。
今日も絶好調に嫌な奴だなコイツ…と。ただでさえ二日酔いによる頭痛で苛立っているの人相が、徐々に悪くなっていく。

「悠仁もそんなところに突っ立ってないで、取り敢えず部屋入りなよ」
「俺、中まで上がっていいのこれ? さん、凄い格好で転がってるけど…」
、取り敢えず着替えて来い。幼気な少年が目のやり場に困ってるから」
「勝手に学生連れて来ておいてなんて言い草だよ…」

腹は立つが、正論だ。舌打ちして起き上がり、ペットボトルの水を呷る。
そのまま、若干鈍い動きでは歩き出した。寝室とは別の方向に。

「おーい。そっち風呂だぞ」
「シャワー浴びてくるー…」
「服持って行けよ、真っ裸で出てくる気か。それは悠仁にはまだ早い、刺激が強過ぎる」
「テキトーに持ってきて…」
「それ、僕にやらせんの? 正気?」
「ふたりとも本当に今は付き合ってないの? せんせー、俺もう帰っちゃダメ?」

所在無さげに挙手した虎杖の訴えは、故意にか偶然か綺麗に無視された。



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「シャワー浴びたらスッキリした」

先ほどまでの醜態が嘘のように、普段通りの所作ではリビングに戻ってきた。
その様子に、五条はこれみよがしなため息で出迎える。

「良かったね。典型的なダメな独身女の姿晒して言うことそれかよ」
「独身男に言われたくねェんだよ。こっちだって不本意極まりないわ。
 お前の女の服の趣味こんななんだなって、要らないことまで知ってしまって泣きそうだよ」
「泣くなよ。オマエが持ってるものから選んだだけだろ。そもそも僕にここまでやらせるの、だけだと思うよ」

10年来の付き合いとはいえ、いい歳した異性間の遣り取りとしては致命的に間違っている。
さすがに互いに大人になった、学生時代のノリではいけない。暗黙の了解でそこは徹底してきたつもりだったのだが、やれ、酒の力とは恐ろしい。一瞬で人間をダメにする。

「酒って怖いね。、もう飲まない方がいいんじゃない?」
「うるさい、飲まないとやっていられない日だってあるんだよ。今日は事前予告なく来たお前も悪い。
 …あー、なんだっけ、そうそう、虎杖悠仁クン? なんか変なとこ見せちゃってごめん。君は悪くない、悪いのはこのバカだ。後で叱っておくので安心してくれ」
「はぁ…」

完全に、カップルの痴話喧嘩に巻き込まれた顔で虎杖は曖昧に頷いた。
それでもなんとか意識を切り替えられるのは、彼の長所である。

「…ま、いいか。ところで引っ越し荷物ってどこ? まだ業者来てねぇの?」
「いや、朝一に来たよ」
「その割には部屋、ずいぶん殺風景じゃない? 家具は?」
「寝室に寝具一式と服類入った段箱あるけど」
「テレビとか…テーブルとか…台所用品とか…」
「無いねぇ。あ、冷蔵庫と洗濯機はある」

それも無かったら、家として機能しない。
はどうやら、最低限のものしか持ってきていないらしい。
虎杖自身も東京に来る際には大した荷物は持って来なかったが、そこは転居先が学生寮だったからだ。
このマンションは、特に備え付けの家具があるような物件ではない。それなりの広さもある。
果たして彼女は、ここでいったいどういう生活をする想定をしているのか。

「電子レンジすら無いけど…さすがに不便じゃ無い?」
「あー、忘れてた。五条ー買ってー」
「すぐ買わせようとするなよ、そのくらい別に良いけどさ。それよりこの生活力の無さはどういうこと? 地方に行ってる間に何があったわけ?」

明確な基準がある話ではないが、それにしても女性の一人暮らしにしては生活が雑過ぎる。
世の単身赴任のサラリーマンだって、もっと荷物があるだろう。
職業が職業だ、人手不足で多忙を極めるため自炊など無理だろうが、コーヒーの一杯も淹れる準備が無い。

「え…基本的に、家は寝る場所でしか無いし…テレビ見なくてもネットニュースで事足りる…」
…オマエ、管理してくれる相手がいないと私生活ぐだぐだなんだな…」

学生時代、寮生活は普通にしていたはずだが、それは周囲に第三者が居たからなのだろう。
完全にひとりになり、尚且つ変に慣れて手を抜くことを覚えた結果、この適当な生活が染み付いてしまった…と。

「どうせ冷蔵庫の中身、半分以上酒だろ」
「失礼だな、半分だよ」
「嘘だろ、ホントに半分酒だった」

五条は冗談のつもりだったが、思ったより実際の割合が多かった。
自身も冷蔵庫の中身をぼんやりとしか記憶していないのか、考えながら口を開く。

「後の半分は水とか、さけるチーズとか…あとは氷とか…」
「女子力云々以前に生活力が無い奴の冷蔵庫だな」
さん、飯ちゃんと食ってる? いくら忙しくても飯抜くのはダメだよ」
「…高校生男子に至極真っ当な説教された…」
はひとりになるとダメなタイプの女だよ。知ってる? オマエみたいなの、干物女って言うんだって」
「うるせェよ、誰が干物女だ」

即答で返しつつも、先程の醜態を振り返れば否定するのは難しい。
そう言えば、普通に入らせてしまったが寝室は散らかり放題だった。
上手く言い返す言葉も浮かばず、は眉間に皺を寄せて渋面をつくる。


「?」
「人相悪い」
「いてッ!?」

笑いながら眉間をピンと指で弾かれ、は思わずその場に蹲った。地味に痛い。

「五条先生とさん、仲良いな」
「え。どこが…!?」
「なんでそんな不満そうなんだよ。トモダチでしょー」
「…はいはい。トモダチ、トモダチ」

友達は、ここまで容赦なくデコピンを見舞って来るだろうか。
しかも笑いながら。

「…ホントに…こいつの行動と言動はいちいち臓物にくる…吐きそう…」
「それは二日酔いだと思うよ」
「ふたりが仲良いのはわかったからさ。話戻すけど、結局引っ越し荷物って何箱あったの? せっかく来たし、箱潰すくらいは手伝うよ」
「え…三…箱?」
「少なっ!?」

それは、本当に寝具と衣類くらいしか無いのではないか。
自分の時よりも少ない箱数に唖然としている虎杖の視線を受けて、さすがに居心地悪そうには視線を逸らした。

「…だから荷物多かったら昨日のうちに五条に手伝え、って言ってるっつーの…」
「それにしたって荷物無さ過ぎだろ…わざわざ悠仁まで連れて来たのに」
「それこそ私の勝手だろうがよ。無関係の学生に手伝わせようとしたお前の感性の方が意味不明だわ」

初対面ではあるが、ここまでの反応から見るに虎杖のコミュニケーション能力が高く、大抵の人間とすぐに打ち解けられる性格であるのは、にもわかる。だからこそ連れてこられたのだろうことも。
しかし、普通、当人に確認なく連れて来るか。これに関して非難される謂れは、には無い。

「家具はともかく服、足りるの?」
「足りなかったら買えば良いじゃん」
「…オマエさ、もしかしてすぐ地方に帰れると思ってる? 帰さねーよ?」
「何それ怖い」

帰れない、ではなく帰さない、という言葉のチョイスに若干の不穏さを感じる。
昨日、七海から頂戴した有り難くない言葉が脳裏を過り、振り払うようには頭を左右に振った。

「あー、虎杖。そんなわけなんで荷解き作業ねェんだわ。わざわざこんな遠くまで来てもらったのに申し訳ない。お詫びに朝食…えー、もう昼食?でも食べに行くか」
「え。良いの? 俺、本当に何もしてないけど」

なんと謙虚な反応か。どこかの誰かと比べて、涙が出るほど良い子だなぁ、などと思いながら、は鷹揚に頷く。

「良いとも。どうせこいつの金だ」
「オマエ、人のことナチュラルに財布扱いするよな」
「金持ちだろ。なに、ダメなの?」
「良いけど、どうせなら可愛くお願いして欲しい」
「可愛く」

少し考えてから、は小さく咳払いをして喉の調子を整えた。

「………五条クン、わたし、タカノフルーツパーラーのフルーツワッフルが食べたいな!」
「はははッ、似合わねー!」
「言わせといてなんだ、はっ倒すぞ」

確実に喉を痛めそうな裏声で発せられた言葉に、腹を抱えて爆笑する五条をはジロリと睨み付ける。
ある程度反応は予想していたが、それにしても笑い過ぎだろう。

「もういい。…虎杖は何食べたい? やっぱ米か」
「え? うーん…どっちかっていうと米かなぁ。丼物とか麺類好き」
「なるほどなるほど。五条ー、久しぶりに喜三郎行こー。虎杖には親子丼がオススメです」
「おー」

無意味に胸を張るに、虎杖はノリで拍手を送る。
この短時間で、ある程度ノリを掴んだらしい。

「卵専門店だっけ。良いけどちょっと遠くない? 三田線だろ?」
「大丈夫、大丈夫。ほら、電子レンジも買わなきゃいけないし」
「他にも買わせる気だろ」
「私一人なら特に要らないんだけど」
「あー、そういうことね。なに、諦めて一緒に住む気になった?」
「やだ、って言っても勝手に来るんだろ」
「うん。そもそもをひとりにしておくとダメなのわかったし」
「ダメって言うな。さっさと行くよ」
「はいはい」

大人ふたりは、実に行動が自由である。
適当な言い合いをしながら玄関に向かうふたりは、不意に同時に立ち止まって振り返り、虎杖に向かって「はやくおいで」と手招きした。

「やっぱ仲良いじゃん」

割と似たもの同士なのかな、と考えながら返事を返して、虎杖はふたりを追いかけた。









To be continued?

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