「サルジュに何の用だ、坊や達」
小麦色の肌をしたそのひとは、どこかざっくばらんな口調で言いながら、わたし達のテーブルに近づいて来た。
…綺麗なひとだなぁ…少しワイルドな感じが格好良い。今まで見たタイプとは違う美人さんだ。
「あなたは…?」
「……」
一瞬、彼女は思案するように沈黙した。
そして、何故か顔をしかめながら応える。
「…ルージュ」
「は?」
…名前だろうか、それ。
苦虫を噛む潰したような表情で告げられたそれは、彼女の名前と受け取って良いのだろう。
アレンもそう判断したのか、少し戸惑い気味に口を開いた。
「ええと…では、ミス・ルージュ…
あなたは、サルジュ=アルサール氏とお知り合いなんですか?」
「ああ。パートナーだからな」
「「「「え?」」」」
さらりと言われた言葉に、わたし達は目を瞬かせた。
…え。いま、なんて言った?
「え? え? サルジュさんのパートナー!?」
「そんなに驚くことか?」
「あ、いや、誰も見たことがないって聞いたから…」
「ああ…サルジュは不敗だからな」
なんだそれ、ノロケか。
とは思ったものの、彼女――ルージュさんは、別に嬉しくもなさそうな表情だ。
むしろ、つまらなそうというか。自分のパートナーが不敗で、何が不満なんだろう?
「…で。サルジュに何か用でもあるのか」
「あ。え、はい…リアルレイドの覇者だと聞いて、会ってみたいなぁと…」
「………」
わたしがそう返すと、ルージュさんは目を眇めた。
そして、一通りわたし達の顔を見回してから、視線をアレンと神田に向ける。
「参戦者は、そっちの優男と少年か」
「え、はい。そうですけど」
「…悪いことは言わない。初戦をなんとか勝ち抜いて、ドロップアウトしろ」
妙にきっぱりと言われて、一瞬、言葉の意味が理解出来なかった。それはアレン達も同じだったんだろう。
誰ひとりとして言葉を返せない中で、ルージュさんは抑揚に欠けた口調で話を続ける。
「褒賞金を返還すれば、ドロップアウト出来る。
俺がサルジュに掛け合ってやろう。『闘神』であるサルジュは実質、この大会のルールみたいなものだからな」
そんなルールは、さっき説明されなかったけど。
それとも、サルジュさんは『闘神』の称号を得ているから、ルールをねじ曲げられるってこと…?
………それにしても、印象通りのひとだな。男みたいな口調が様になってる。
「純粋に剣や拳の強さだけでは、このリアルレイドを勝ち抜くことは出来ん。
…特に、坊や達のような育ちの良さそうな奴らには過酷な世界なんだよ」
育ちの良さそうな、と言うところに、妙に力が入っていた。
思わず、わたし達は顔を見合わせる。…どういう、意味だ?
「参戦せずとも、最終決戦日に闘技場に来れば、サルジュには会える。
…確かに忠告したぞ。その娘達の為にも、早々にこの都市から立ち去ることだ」
言いたいことだけ言うと、ルージュさんはさっさと踵を返して行ってしまった。
後に残されたわたし達は、呆然とその背を見送る。
彼女に感じる漠然とした違和感が、消えない。
「どういう意味だったんだろうね、あれ」
あれから数時間後。
お風呂も終えて、あとはさぁ寝るだけだ、という現状。
わたしはティムキャンピーとソルトレージュをつつきながら、そう呟いた。
「ルージュさんのことですか? 、ティムを苛めないでください」
「うん。あ、ごめんアレン、トランク取って」
「…ひとのベッドの上に荷物置くの、やめてくださいよ…」
ため息混じりにそう言うと、アレンはトランクを投げて寄越した。
もうちょっと優しく扱って欲しい。一応乙女の私物なんだから。
「…サルジュ氏は半年、この大会で現役の『闘神』として闘ってるそうですよ。
そのパートナーなんですから、色々と思うところがあったんじゃないですか?」
「んー…サルジュさんって、敗者のパートナーに酷いことをするような人なのかな?」
それなら、わたしやリナリーを心配して――っていうのも、頷けるんだけど。
…それとも、アレンも神田も、あんまり強そうに見えなかったんだろうか。失礼な。
「そんなことはないらしいですよ。
褒賞金は受け取りますけど、特別室の鍵はいつも受け取らないそうです」
「へぇ…って、いつの間にそんな情報仕入れてきたのよ」
「え? ああ…さっき、給仕の女性から聞きました」
さらりと言われた一言に、わたしは目を瞬かせる。
…ええと、つまり。なんだ。
「「…………」」
流れる不自然な沈黙。
わたしは目を眇め、呆れたように呟いた。
「…タラシ」
「いきなりなんですか失礼なッ!」
「まぁ、役に立ったから良いけどさ」
「…なんですか、ヤキモチですか」
「は?! なんで!?」
何言っちゃってんのこの子!?
ヤキモチ。ヤキモチ?! 誰が。わたしが!?
「生意気言っちゃってんじゃないよ、このモヤシっ子!」
「誰がモヤシですか訂正してください、いい加減に!」
「いーや、訂正しないね! 色白いし細いしちっさいし女顔だし!」
「最後思いっきり関係ないし女顔なら神田の方でしょう!?」
「確かに神田も腰細いよね! おまえらムカつくよ!?」
「なにそれ八つ当たりですか!?」
そうですよ八つ当たりですよ!…って。
ちょっと待て、それはわたしの腰が太いと認めたのか!?
「きーッ! 悪かったわね悪かったわねッ! なにさ、モヤシのくせにーーーッ!」
「だから誰がモヤシなんですか! にまで言われる筋合いはありませんッ」
そう怒鳴り返して、アレンはぐいっとわたしの両手首を掴んだ。
そのままぐるりと視界が回って、わたしの後頭部はシーツの上に押しつけられる。
無茶な体勢で、ちょっと首が痛い。
「い…っ」
「くらいなら、簡単に押さえ込めるんですよ!
わかりましたか!?」
「……………」
「?」
いや、あのさ。
わたしも悪かったかもしれないけどさ。
………この状況、おかしいよね? なんで押し倒されてんの、わたし。
「……………」
アレンもようやく状況を把握したのか、口を噤んだ。
でも、やった本人がそんなに驚いてどうするんだ。わたしはどう反応したら良いのさ。
「「………………」」
わたしとアレンはその体勢のまま、硬直した。
声も出せない。不自然なほどの静寂。
どっちかが動けば良いのだろうけど、お互い動こうにも動けない。
――完全に時間が止まった、その瞬間だった。
『…。聞こえてる?』
「「うわあぁぁぁあっ!?」」
急に聞こえたリナリーの声に、わたし達は同時に悲鳴を上げた。
で、わたしは咄嗟に上に乗ってたアレンを蹴飛ばし、ソルトレージュを引っ掴む。
アレンがベッドから落ちたけど、それを気遣ってやる余裕は、残念ながら無い。
『ちょ、ちょっと今の音、なに?』
「な、なんでもないなんでもない! ベッドから落ちただけ!
ええと、なぁに、リナリー?!」
勢い良く訊ねたわたしに、向こう側のリナリーは困惑しているようだ。
ああ、ごめん、リナリー。でももう、本気で心臓止まりかけたの、わたし。
『あ、うん…明日のことを決めておこうと思って』
「え、あ、うん! でもそれ朝食の時で良くないかなっ?!」
『それもそうね…今日は長旅で疲れたものね。ごめんなさい、』
「いやいや! 謝ることじゃないよ、リナリー!
愛してるよ!」
『もう、ったら。じゃあ、また明日ね。おやすみなさい』
「うんうん! おやすみなさいっ」
そう返して、わたしはソルトレージュの口をばちんっと閉めた。
…あ、不満そうだ。でもごめん、理解して。
「…挙動不審ですよ、」
「うるさいっ、誰のせいよ!?」
床に座り込んだアレンに声を掛けられて、わたしは怒鳴り返した。
だけど、振り返ってその顔を見た瞬間、なんだか急に恥ずかしくなる。
…なんだこれ。なんだこれ! 顔が熱い。耳も熱い。絶対ヤバイ。
「~~~ッ…もう寝る! わたし寝る! おやすみッ!!」
「あ」
アレンが何か言ってたけど、わたしは聞こえない振りをして毛布を被った。
違う、わたしのせいじゃない。わたしが悪いんじゃない。あんなことしたアレンが悪い!!
自分に言い聞かせて、必死に落ち着こうとしても、なかなか落ち着かない。
逸る鼓動に、余計に落ち着きを消される。わたしは、ぎゅっとソルトレージュを抱き締めた。
…こういうとき、クッションとかぬいぐるみがいないって、不便だ。
+++
翌日の朝。
よく眠れないまま、僕は集合場所になっていたロビーに居た。
先に着いていた神田が、僕の顔を見て軽く目を瞠る。
「…おい、なんだおまえ。酷ェ顔だな、モヤシ」
「アレンです。…神田、ひとつ聞いても良いですか」
ゆらりと近づいて、僕は神田の胸ぐらを掴んだ。
神田がムッと顔をしかめたのを気配で感じたけど、こっちはそれどころじゃない。
「神田! 君はにどんな教育をしてるんですか!?
なんでくらいの年齢の女性が! 年下とは言え男と同室で平気で寝れるんですか!?」
「俺に言うんじゃねぇよ! それを言うならリナリーだって同じ様なもんだ、仕切り一枚でさっさと寝たぞ!?」
「なんか仕切りすらしませんでしたよ!
なんなんですかあの人?!」
「だから俺に聞くな! 俺はあいつの保護者じゃねぇんだよ!!」
ふたりで怒鳴り合って、肩で息をする。
胸ぐらを掴む僕の手を払うと、神田は襟元を直してため息を吐いた。
「…あいつはそういう奴なんだよ。諦めて受け入れろ」
「そういう問題じゃないですよ…こっちの方が寝不足です…」
頭を抱える僕に、神田は面倒くさそうに舌打ちする。
…ええ、ええ、そうでしょうとも。何も期待してませんよ、神田になんて。
「ちょっとそこの2人組ー。仲良く喧嘩してないでさっさと朝ご飯食べようよー」
「そうよ。早く食べて行動しないと。今日は館内を散策するって言ったでしょ?」
人の気も知らないで、逞しい女性陣はそんな事を言う。
…昨日の今日で、態度が変わらないのは、喜んで良いのか悲しんで良いのか。
だけどやっぱり、平然とされると腹が立つのだから仕方ない。
「…先に行っててください…後で追いかけます…」
「あ、そう? じゃあ神田、アレンをお願い」
「は?! なんで俺がモヤシの世話を…」
「だってアレンが迷子になったら困るじゃない。お兄さんなんだから神田が面倒見てあげてよ」
「……てめぇが見てやれよ」
「わたしはリナリーのお姉さんだもん」
またあのじゃじゃ馬は、勝手な事を言う。
何か神田が色々言ってるけど、多分、に押し切られるんだろう。
僕もだんだん、彼女の理不尽さに慣れてきてしまった。
……神田とふたりで残されても苦痛なんですけど。コレ、新手の嫌がらせですか。
腹立たしいほどにこやかに去っていくの姿を見送って、僕は何度目かのため息を吐いた。
+++
「わたし、飲み物を貰ってくるわね」
気を利かせたリナリーがそう言って、席を立って結構経つ。
いくらなんでも、飲み物を取りに行っただけにしては遅い。
席を立って、わたしはリナリーを探しに出た。
リナリーは美人だ。結構目立つから、すぐ見つかるはず。
…あ、居た。
居たけど。…なんか、無骨な男性に取り囲まれてる。
「ちょっと、離して!!」
腕を掴まれたリナリーが、そう怒鳴った。
瞬間、わたしはそこに飛び出す。
「ちょっと! リナリーに触らないで!!」
「!」
わたしの登場に、リナリーは焦った表情になる。
…なんか、「お願い、問題を大きくしないで!」と目で訴えられてませんか、コレ。
お、おかしいな。わたし、助けにきたんだけどな??
「あ? なんだ、ねーちゃん。この嬢ちゃんの連れか」
「そうよ、連れですよ! わたしの可愛いリナリーから手を離しなさい、って言ってるのが聞こえないの?!」
強面の男に、わたしはズイッと近づいた。
リナリーのお相手は、美形で線の細いタイプとわたしが決めてんのよ。
こんな無骨な筋肉ダルマは認めません! わたしの美的意識が全力拒否してる!!
「威勢の良いねーちゃんだな。参戦者か?」
「ンな世間話する気はないのよ。リナリーを離して、こいつらあんたのオトモダチでしょ」
わたしの前に進み出て来た、やたら偉そうな態度の男にわたしは食って掛かった。
その男の取り巻きなのだろう。リナリーを連れていこうとした男達が、下卑た笑いを漏らす。
「この色彩は日本人か。珍しいな」
「こっちのツインテールは中国人だろ?」
不愉快な視線に、血管が切れそうだ。
いや、もう、どこかでぶちっと切れた音が聞こえた。
「…リナリーを離せつってんのよこの筋肉ダルマ共!!
参戦者は他人のパートナーに危害を加えちゃいけないんでしょ、ルール違反だわ!」
ギッと睨み付けると、偉そうな筋肉ダルマはわたしの言葉で鼻で笑った。
「おいおい、それは酷い言いがかりってもんだ。
オレ達はこのお嬢ちゃんをお茶にお誘いしただけだぜ、危害は加えちゃいねぇ」
「いけしゃあしゃあと…。どうやら脳味噌も筋肉のようね。
嫌がってんのを無理矢理連れていくのは、危害を加えてるって言うのよわかったか!!」
「ちょ、ちょっと…ッ」
リナリーは顔色を悪くして、狼狽えている。
大丈夫よ、リナリー。わたしが守るからね!
そんな決意を新たにして、わたしは目の前の男を睨み付けた。
「従順より、気位の高い女の方が男は悦ぶ。よくわかってるじゃないか」
「あんたを悦ばせる気はないわ。そこらの猫にでも発情して来い」
「――良い啖呵だ、気に入った」
口角を持ち上げて嗤い、男はわたしの腕を掴む。
ちょっとやめろよ、触んなよ。だからわたしは、エロゲーのヒロインになる気はないんだって。
「――そこまでです」
「!?」
わたしの腕を掴んでいた男の腕が、強く掴まれた。
赤い、左手。埋め込まれたクロス。
それを見て、安堵してしまったのがなんだか悔しい。
「アレン!」
「彼女達は僕の連れです。これ以上の手出しは許しません」
そう告げたアレンの声は、酷く低い。
筋肉ダルマを睨め付けるその眼光は鋭く、普段の穏やかさは微塵もない。
…怒ってます。ものすごく怒ってます、この子。
「……」
そんなアレンを見下ろしていた筋肉ダルマは、不意に小さく嗤った。
そして、わたしから手を離す。瞬間、わたしはアレンに強く腕を引かれて後ろに追いやられた。
「…てめぇの名前は?」
「――アレン=ウォーカー」
「その流暢な英語、英国人だな。オレの名はガウト、出身はデンマークだ。
で? てめぇのパートナーはどっちだ。あっちの綺麗なお嬢ちゃんか、この気の強いねーちゃんか」
…綺麗でなくて悪かったなコノヤロウ。
わたしの形容詞に「可愛い」とか「綺麗」とかは世辞でも付けたくないってか。失礼な。
「こっちのじゃじゃ馬ですよ」
「…をいこら」
身内にも無礼者がいました。
よりによって「じゃじゃ馬」って。せめて気が強いって言って欲しい。
「なるほど! 小僧、年の割になかなか趣味が良い。
おい、おまえら。気が変わった、そっちのお嬢ちゃんも離してやれ」
言われて、リナリーの腕を掴んでいた男が、その手を離した。
対するリナリーは、割と冷静だ。そのままパタパタと軽快な足取りでわたしの方へ走ってくる。
「てめぇと対戦出来る日を楽しみにしてるぜ、小僧。それまで生きていたらの話だが。
おお、そうだ。せいぜい女を磨いておけよ、ねーちゃん。オレがその小僧を負かした後の為にな」
お断りです。なんでこんな筋肉ダルマの為に女を磨かなきゃいけないんだ。
睨み返すと、筋肉ダルマ――もとい、ガウトは愉快そうに嗤った。
そしてそのまま、取り巻き達を連れて立ち去って行く。
…どっと、疲れた。
「…目、付けられましたね」
「…う…」
ガウト達が立ち去ったのを確認すると、ゆっくりとアレンが振り返った。
その表情は、例えるなら、そう…親が子供を叱るときのあれですよ。
「…僕、言いましたよね。大人しくしててください、って」
「で、でもさ…リナリーを守らなきゃと思ったらさ…」
「もうちょっと穏便な方法があったでしょうが。なんですか、思いっきり啖呵切ってたくせに」
聞かれてた…!
いや、だって仕方ないじゃない。咄嗟に出てくるんだもの、罵詈雑言が。
「ア、アレンくん…そのくらいにしてあげて?
私を助けようとして、は無茶をしたの…だけが怒られるのは不公平だわ」
「……」
おずおずと、リナリーがアレンの服の裾を引く。
泣きそうなリナリーを見て、アレンは困ったように顔をしかめた。
…なんですか、その態度の違いは。わたしは説教されたのに。
「…わかりました。今更言っても、仕方ないですよね。ふたりだけで行動させた僕達も悪かったですし。
とにかく、今後は女性だけで行動するのは避けましょう。必ず僕か神田と一緒にいてください」
そんなアレンの言葉にリナリーは頷き、わたしにもそれを強要する。
まぁ、正論ではあるので、何か癪だけど頷いた。…ところで。
「…そう言えばアレン、ひとり?」
「……いえ、あの。神田とはぐれました……」
そう言って、アレンは視線を目一杯逸らした。
…つまり、だ。
「迷子かよ!!」
「ま、迷子じゃないですよ?!
神田を捜してるうちに、言い争う声が聞こえて来てみたら、が啖呵切ってたんですよ!」
「それ迷子だよ、迷子って言うんだよ世間一般的には!」
じゃあ神田は、いつの間にかいなくなったアレンを探し回ってるんじゃあるまいか。
普段素っ気ないけど、あれで面倒見の良い奴だ。あり得る。
「し、締まらないなぁアレンは…ッ」
「失礼ですね! 良いでしょう、そのおかげでは助かったんですからッ」
「いや、そうなんだけどさァ!」
でも確かに、その通りだった。
わたしは考えなしで突っ走ったし、あの後アレンがいなかったらどうなっていたか。
…とりあえず暴れただろうけど、そうなると任務遂行は難しくなったに違いない。
それに――、
「…ありがと」
「…………え?」
きょとんと、アレンが目を瞬かせた。
よっぽど、普段わたしは、アレンにお礼を言ったりしないらしい。
…ごめん、そんなつもりはなかったんだけど。ほら、素直に言う前に喧嘩になるからさ、普段は。
「助けてくれて、ありがとう。ちょっと男らしかったよ。ちょっとね」
「…それは、どうも…」
一瞬、何を言って良いかわからなかったらしい。
らしくない歯切れの悪さで、ぼそりと呟かれた言葉に、わたしは笑った。
お礼言われた方がお礼を返してどうするんだか。
傍に立つリナリーも、微笑ましそうに見ていた。そんな彼女に、わたしは微笑い返す。
昨日の今日でちょっと気まずかったけど、もう大丈夫だ。
ちょっと問題は起こったけど、結果オーライ。うん、それで良いじゃない。
ちなみに。
この後、アレンが神田に怒鳴られたのは言うまでもない。
前途は多難。だけどわたし達なら、きっと大丈夫。
To be continued?
気に入っていただけたら、ぽちっと押してあげてください。コメントは入れなくてもOKです。