『……聴こえるかい? アレンくん』

空気が、変わった。
耳元の無線機からは、変わらずコムイさんの声が聞こえている。

《方舟》の中に、入れたかい…?』

ゆっくりと、目を開ける。
目の前に飛び込んできた風景に、思わず目を瞠った。

「はれ?」
『は? どうかした!?』

慌てたようなコムイさんの声に、ハッと我に返る。
…いけない。予想外の光景に思考が止まってしまった。

「あ、いえ。予想してたイメージとだいぶ違くて…すみません」
『何が見える?』
「南国のような…白レンガの街がずっと続いてます。歩く…のかな?」
『体は?』
「平気です。進みますよ」

そう告げて足を踏み出した瞬間、ビシッと言い放たれた。

『慎重にね!! 迷子にだけはならないでね!!!』
「……」

…信用無いなぁ…。
とはいえ、迷子にならない絶対の自信もなかったりする。

空を舞うティーズをふと見上げた。
これがあのノア――ティキ=ミックの遣いであることはわかっている。
だとしたら、この蝶に付いて行けばいいのだろう。

「…コムイさん」

歩きながら、呟くように切り出した。

『ん?』
「みんなは大丈夫でしょうか…」
『……』

一瞬の沈黙の後、コムイさんのどこか穏やかな声が返ってくる。

『不安なときは、楽しいことを考えようよ』
「楽しいコト? えーと?」
『あれっ、思いつかないかい? 例えばね…』

慌てる僕を笑って、コムイさんは少し考えてから、告げる。

『「みんなが帰ってきたら」』

その言葉の持つ、優しい響きに何故か泣きそうになった。

『まずはおかえりと言って肩を叩くんだ。で、リナリーを思いっきり抱きしめる!』
「はは…」

目に浮かぶ光景だなぁ…。
きっとコムイさんは、泣きながらリナリーに抱きつくに違いない。

『アレンくんには、ご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。
 ラビはその辺で寝ちゃうだろうから、毛布をかけてあげないと』

ああ、そうかも。
いきなり床に転がって寝たりとか。

ちゃんは眠そうにしてるだろうけど、きっとリナリーが寝かせてあげないよね』

でも結局、リナリーの肩に頭を預けて寝てしまいそうだ。
それを、リナリーが苦笑しながら揺り起こして…

『それで、些細なことでアレンくんとちゃんが痴話喧嘩を始めちゃって、みんなで止めるんだよ』
「あはは…目に浮かぶなぁ…」

――そんな日常を、取り戻したい。
きっと今の僕だったら、些細な喧嘩でも素直に謝ることが出来るだろうから。
でも多分、が「素直過ぎて気持ち悪い」とか言い出して、また喧嘩になるんだろう。

『大人組はワインで乾杯したいね。
 ドンチャン騒いで、眠ってしまえたら最高だね…』

…本当に。
そんな日が早く来るように、今は一刻も早く、みんなのもとに辿り着かなければ。

『そして少し遅れて、神田くんが仏頂面で入って来るんだ』

で、その後またひと騒動起こるわけだ。
容易に想像出来るその光景に、思わず笑った。



Master Scene それぞれの想い




――それは、『恐怖』だった。

痛みでも嫌悪でもなく、『恐怖』そのもの。
これが千年伯爵という存在なのか、と。
リナリーは全身に襲いかかる『恐怖』に、悲鳴を上げた。


心が、絶望しかけていた。
その声を、再び聴くまでは。

――こんばんは、伯爵」

静かなその声に、リナリーは振り返る。
――白銀の光が、そこに在った。

『こんわばんワ またお会いしましたネ

割れた空を背に、伯爵が嗤う。

『アァ~レン=ウォーカァァアァ

その声には、底冷えのするような殺気が孕まれていた。
思わず身を竦ませるリナリーから、伯爵の腕を掴んだまま、アレンが離れていく。
イノセンスの結晶に護られたリナリーは、結晶越しにその光景を見ていた。


伯爵と、互角に戦うアレンの姿を。


『その姿…!

互いの武器を交えながら、伯爵は微かに目を瞠る。
その視線に挑むように、アレンの瞳は鋭さを増す。

『まるで〝愚かな道化(オーギュスト)〟を追い回す〝白い道化(クラウン)〟のようじゃあないですカ
 滑稽な子供ですネェ…

愉快そうに嗤いながら、伯爵は問いを投げかける。

『《姫君》はどこですカ、道化サン?
――渡しませんよ」
『《姫君》はもともと、我々のものデス

そう告げて、伯爵は大きく後ろに飛んだ。
その後を追うアレンに、短く告げられた一言は、彼を動揺させるには充分だった。




『彼女を連れてきたのは私なのですカラ


+++


ドンッ、と。
高い衝撃音を上げながら、何かがラビの前に落ちてきた。

「わっ」

巻き起こる余波の突風に、ラビは咄嗟に顔を庇う。
再び目を開けた瞬間、白銀色の何かが至近距離を通過していく。

「(おっ!? アクマ!!?)」

身構えるラビの直ぐ傍で、それは軽やかな音を立て着地した。
白銀の光から覗くのは、黒い衣装と――白い、髪。

「ラビ!?」
「!!!」

驚いたように目を瞠る相手を見て、ラビの方が数倍は驚いた。
言葉すら出ないラビに、アレンは周囲を軽く見回してから口を開く。

「伯爵がこっちに来ませんでし」
「まちやがれコラァ!!!」

アレンの言葉は、そんな怒声に掻き消された。
え?とふたりが声の方に顔を向けた、瞬間。

「死ねェ!!」
「うわっ!?」

凄まじいスピードで繰り出された攻撃を、アレンはなんとか左腕で受け止める。
物凄い形相で攻撃してきた相手に、アレンは大きく目を瞠った。

「神田!?」
「!!?」

驚いたのは神田も同じである。
殉職したと聞かされた人間が、目の前でピンピンしていればさすがに驚くだろう。
その上、追いかけていた敵じゃなかったときたら、神田にとって無駄以外なんでもない一瞬だ。

「モヤシ…? どういう事だ…!?」
「アレンですッ。僕が聞きたいんですけど」

いい加減武器を退けてくれませんか、と。
言外に含ませるアレンに、神田は盛大に舌打ちした後、ラビの方を振り返る。

「俺は天パのノアを追ってきたんだ!! おい、ラビ。奴知らねェか!」
「あれ? そういやオレの相手してたマッチョのおっさんも…」

言われて、ラビはきょろきょろと辺りを見回した。
――そこに居るのは、彼ら3人と結晶に護られたリナリーだけだ。

「どうなってんだ…どこにもノアがいねェ…?」

ゆっくりと周囲を見回し、神田はアレンを見て舌打ちした。

「ちっ」
「ちょっと…なんで僕に舌打ちするんですか。邪魔しやがって的な」

理不尽な反応に、アレンの表情が引きつる。
既に笑顔を浮かべることすら放棄した彼は、目を眇めながら言った。

「逃げられたのは神田がノロマだからでしょう」
「おい、今何つった。つかテメェ、あとからノコノコ現れて何言ってんだよノロモヤシ」
「アレンですって何回言えばいいんですか? ああ、そうか、神田は頭もノロマなんですね」
「いい度胸だ…どっちがノロマか教えてやるよ。抜け。その白髪、根こそぎ刈ってじじい共に売ってやる」
「黒髪の方が高く売れるんじゃないですか」

え、何コレ。血管の切れるような音がするんですけど。
思わず、ラビはきょろきょろとリナリーの姿を探した。
これを止められるのはかリナリーしかいない。いないのだが…リナリーはまだ結晶の中だ。

「脳天に一本だけ残してやるよ」
「カッパみたいにしてやりますよ」
「お、落ち着くさ二人とも」

止められる人間が見当たらない為、ラビは意を決して睨み合うふたりに声を掛けた。
既に臨戦態勢に入っているふたりに近づきたくは無いのだが、ここで無駄に体力を消費させるのも問題だ。

「ここ、一応感動の再会…」
「「うるせェ、刈るぞ」」
「ええーーーー…」

何でこういうときばかり息が合うんだろう。
とばっちりを受けたような気分で、ラビは深々とため息を吐いた。


+++


「おーい、アレーン…あれ? 珍しいさ。ユウとふたり?」
「ラビ」

振り返ったアレンの表情は、「別に好きで一緒に居るわけじゃないですよ」と語っていた。
さっきの今なので、ラビは曖昧に苦笑する。
しかしこのふたり、予想以上に似た者同士で仲が悪い。

「…おい、モヤシ」
「誰がモヤシですか! いい加減に…」
「おまえに訊くことがある」

まったく話を聞いていない。
聞く気もないんだろうな、と諦めたようにアレンは渋々応じた。

「なんですか」
――はどうした」
「……」

問われた瞬間、アレンの表情が凍りつく。
色を失った表情のまま、搾り出すようにアレンは呟いた。

、は…」
「ちょ、なんて顔してんさ、アレン! まさか、は…」

場が、絶望感に染まる。
その空気を感じ取り、慌ててアレンは左右に首を振った。

「え? ち、違いますよは元気ですよ!? むしろ僕より元気なくらいで…!」
「あ、そ、そっか! なら良いんさ! …なんだよ冷や冷やさせやがって!」
「痛ッ?」

相当焦ったのだろう、思いっきりラビに背を叩かれたアレンは軽く咳き込んだ。
そんな漫才すれすれのやりとりに興味は無いのか、神田の口調は淡々としている。

「…生きてるのは知ってる。それで、なんでがいないんだ」
「え、っと…」
「イノセンスが発動出来ないと聞いた。そのせいか」
「い、いえ。のシンクロ率は正常値に戻ってます、発動に問題はありません」
「……なら、どうして連れて来なかった?」

射る様な視線に、アレンは言葉を詰まらせる。
「何故来ないのか」、ではなく「どうして連れて来なかった」、と敢えて神田が言ったのは、気づいているからか。

「…はアジア支部に置いてきました。
 頃合を見て本部に戻り、ヘブラスカやクラウド元帥、ソカロ元帥の護衛に就きます」

それは、アレンが方舟に乗った際にコムイと決めた『建前』だ。
のイノセンスの能力からすれば、それはどこにも違和感はない。
――という、個人を知らなければ。

「…コムイの指示か?」
「いいえ」
の意思か」
「…いいえ」

という少女を、深く知る者には通用しない。
彼らにだけは、嘘を語ることは赦されない、と。
一瞬瞑目してから、アレンは真っ直ぐにふたりを見つめて、告げた。

「彼女を護りたいという…僕の、我が儘です」
「……」

その言葉に。
神田は無言でアレンに近寄り、ぐっと拳を握り締めた。
次の瞬間、止める間もなく神田はアレンを力一杯殴りつける。

「…ッ」

さすがに吹っ飛ぶことはなかったが、アレンはバランスを崩してよろめいた。
口の中を切ったのか、アレンは視線を落としたまま血を吐き出す。

「って! ちょ、待て、ユウ! 落ち着くさ!!」

ハッと我に返って、ラビが神田の腕を掴んだ。

「離せ! 俺は落ち着いてる!」
「嘘ウソ、全然落ち着いてねぇし!? っていうかアレンも避けろよ!」

そう、避けるか止めるか出来たはずなのだ。
だと言うのに、アレンはそれを甘んじて受けた。

「おい、モヤシ! てめぇは今まであいつの何を見て来たんだ!!」

ラビに押さえつけられながら、神田は怒鳴った。
アレンは視線を落としたまま、顔を上げない。それが余計に神田を苛立たせる。

「あいつは、護られることなんか望んじゃいねぇんだよ!
 半年も傍に居て、そんなこともわかんねぇのか!?」
「…わかってますよ! それでも…っ」

弾かれたように、アレンが顔を上げる。
その表情は15歳の少年らしい、戸惑いや悔しさといった感情が混在した、幼いもの。

「それでも、護りたいと思うのは間違ってますか…ッ!?」

血を吐くように苦い、言葉だった。
思わず、神田もラビも一切の動きを止めてアレンを見る。

「……」
「…神田にだって、わかるでしょ…を、…好きな人を護りたいのは、当然じゃないんですか…っ」
「………」

急に黙り込んだ神田を不思議に思い、アレンは顔を上げた。
唖然と自分を見ている神田に、アレンは目を瞬かせる。

「…って、なんですかその顔」
「……俺が?」
「は?」
「………を?」
「…違うんですか?」
「……」

目を瞠って、神田は自身の口元に手をやった。
ゆっくり目を瞬かせたかと思うと、ラビの手を振り払う。
そしてそのまま、なんの脈略もなしに踵を返した。

「…え?! あれ、神田!?」
「あー…」

アレンは呆然と、そしてラビは疲れたように無言で去って行った神田を見送った。
残されたふたりは、顔を見合わせる。

「バカアレン」
「って、誰がバカですか!」

唐突な暴言に、アレンが眦を吊り上げる。
ため息を吐き、ラビは額に手をやりながら口を開いた。

「…前に言ったろ。ユウは無自覚なんだ、って…」
「え」
「…自覚させてどーすんだよ」
「え…え!? も、もしかして余計なことしちゃった…!?」
「あー、うん。かなり」

ユウみたいなタイプは、自覚すると一直線だからねー、と。
苦笑交じりにラビが言って、小さくため息を吐いた。

「…ま、遅かれ早かれ自覚してたかもしんねーし、やっちまったもんは仕方ねェさ?」
「…もし、」
「ん?」

ぽつりと呟いたアレンを、ラビは振り返った。
銀灰色の瞳が、まるで睨むような視線を向けている。

「もし、…神田がやらなかったら、ラビが殴っていたんじゃないですか。僕のこと」
「…ンな恐ろしいこと出来るわけねェさ!」
「どういう意味ですか!!」
「えー? 例えて言うなら、アクマに素手で立ち向かうような?」
「ラビッ!!」

おどけて答えたラビに、アレンは眦を吊り上げた。
その目が「真面目に答えろ」と脅してきてるので、ラビは苦笑を返す。

「…オレに、アレンをぶん殴る資格なんてねェだろ」
「?」
「それが許されんのは、ユウとリナリーくらいだよ」
「…ラビだって、が好きなんじゃないですか」

胡乱気に目を眇め、首を傾げたアレンにラビは笑みを引きつらせた。
微妙な半笑いで、ラビは槌の柄でアレンをつつく。

「うっわ、おまえが言う? おまえが言うのソレ??
 嫌味か、嫌味なんか。それとも余裕かコノヤロウ、腹立つさー」
「つつかないでくださいよ痛いですよ!」

手で槌を払い除けると、あっさりラビは槌を引いた。
普段ならしつこくからかい半分のその行為が続くはずだが、その珍しい行動にアレンは目を瞬かせる。

「…オレに、を好きだなんて言える度胸はねェんさ」
「は?」
「…『自分』を捨てる度胸がねェから、言えない」
「ラビ?」

自嘲気味に告げられた、まるで独り言のような言葉。
首を傾げるアレンに、顔を上げたラビの表情は普段通りの笑顔だった。

「…はいはい、この話はオシマイ!
 おまえを呼びに来た目的を忘れるところだったさ!」
「そういえば。僕に何か用ですか?」
「おまえホント、いちいち言い方が可愛くねェさ…」

太々しい態度に、ラビは小さく息を吐いた。
そして、軽くアレンの背を叩く。

――リナリーの傍に居てやれ。不安そうにしてっから。
 おまえが勝手に置いて来たんだから、の代わりくらい務めろよ」

一瞬目を瞠ってから、アレンは微笑って頷いた。


+++


「リナリー」

どこか懐かしささえ覚えるその声に、リナリーはゆっくりと目を開けた。
目の前には、変わらない優しい微笑みを湛えたアレンが居る。

「…アレン…くん…?」
「はい」

頷く彼の隣にいるのは、ラビだけだ。
…いつも隣にいた『彼女』の姿が、無い。

「…、は…? どこ…?」
「…ここにはいません」

誰よりも慕う少女の姿を探すリナリーに、アレンは短く結論だけを告げた。
だが、顔を強張らせるリナリーの様子に、慌てて言葉を付け加える。

「でも、元気ですから安心して」
「…置いて…来たの…?」
「…すみません」

リナリーの鋭い一言に、アレンは表情を曇らせる。
そんなアレンとは対照的に、リナリーは微笑んだ。

「そう…そっか…ふたりとも、無事だった…」

信じていて良かった、と。
そう告げた彼女に、アレンは小さく呟いた。

「…すみません」

静かな、謝罪の言葉。

「すみませんでした、リナリー」

繰り返し呟かれるその言葉に、リナリーはゆっくりと目を瞬かせる

「どうして、謝るの…?」

スッ、と。
リナリーは震える指先を、伸ばす。

「スーマンのことなら、アレンくんは救ってくれた…」

ティムキャンピーの持ち帰った映像を見ていたリナリーは、一部始終を知っていた。
だからこそ、アレンの謝罪は受け取れない。

「無残に殺されただけじゃないよ。
 スーマンの心はきっと、アレンくんに救われてた…」

上半身を起こし、リナリーはアレンの左頬に触れる。
今、この場にいない――の代わりには足りないかもしれないが、せめて彼の心の負担が減るように祈って。

のことは…うん、ちょっとだけ私も怒ってるけど。
 でも、アレンくんがを大事に想ってくれてるのは、わかってるから…私は何も言わない」
「……」

じわりと、アレンの瞳に涙が滲む。
その無防備な表情から、それが無意識なのだろうと、リナリーは微笑んだ。

「おかえりなさい、アレンくん」
「…だ、いま…」

頬に触れるリナリーの手に、アレンは自身の手を重ねる。
張りつめていた何かが、崩れるような感覚がした。

「ただいま…リナリー」
「あら~、泣いちゃったさー」

ここぞとばかりにからかうラビに、アレンはキッと視線を向ける。
当然、涙目のままなので迫力はない。

「ラビも泣いたくせに」
「なっ、泣いてねぇさ!!」
「あははははっ」

騒ぎ出すアレン達を微笑ましい気分で見守りながら、リナリーは思う。
ここにが居たら、どんなに良いか――と。

その瞬間。
リナリーは、ピシ…ッという微かな異音を聞いた。


急に地面が無くなるような感覚が襲ってきて、リナリーの体が地中に沈む。
それと同時に、奇妙な光を発する陣のようなものが現れた。

「え…リナ、リ…ッ!?」

それに吸い込まれていくリナリーの手に、アレンは手を伸ばす。
指先が触れた瞬間、陣から発せられる光はアレンをも包んだ。

「アレンッ」

慌てて、ラビが立ち上がる。

「アレン!」

叫ぶように名前を呼び、ラビもまた、光に吸い込まれていくアレンに腕を伸ばす。

「狙いはリーだ! いかん、とめろ――っ!」

ティエドールの言葉に、咄嗟に反応したのは神田だった。
そしてその後に続くように、クロウリーも腕を伸ばし――


陣が眩い光を放って、彼らの姿は消えた。


「…き…っ、消えた…!?」
「チャ…チャオジーがいない…!!」
「ラビ…クロウリー、神田も」

混乱する面々の中、さすがにティエドールも言葉を失う。
困惑のままに彼らが消えた場所を見下ろしていると、不意に上がった声に顔を上げた。

「何だ、あれは!?」
「空から変なものが…!!」

――まるで、空がパズルのピースのように、バラバラと割れていく。

「神よ…こんなことが……」

割れた空から姿を現したのは――不思議な物体だった。

「なんだ、あの物体は…」

――まるでそれは、光り輝くキューブ。

「……」

一歩、ブックマンが前に進み出た。
その物体を見上げ、彼は不思議な言語で呟く。

『…ノアの方舟、出現…』

――方舟、と。
彼は、はっきりとそれの名称を口にする。










『五人のエクソシストの行方は、おそらく――…』






崩れる空と方舟と、不吉な招待状。



To be continued?

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