「……………………あの、神威サン?」
「ん? なに?」
「……………………なんで押さえつけられてるのかわからないんですけど。説明してよ」
頭上でひとまとめに片手で手首を押さえられてる、この体勢はなんだろうか。
っていうか、さすが夜兎ですね。どう動かそうが腕がびくともしなくて、なんだか軽く怖いんだけども。
「え? が暴れそうだから」
「いやいや、何なのその「何当たり前のこと聞いてんの」みたいな顔。
暴れるようなことする気なんですかちょっと」
「ホラ、今にも暴れそうじゃない?」
「……………あれ。もしかして暴れて欲しいってことかなコレ」
「そうそう。が無抵抗とか有り得ないよね。従順なとか、つまらないよそういうの」
「あんたやっぱ性癖異常だよ!! 合意がどうこう言ってたくせに!!」
おかしい。絶対おかしい。
なんかちょっと騙された感はあったけど、合意で始めたはずだ。
こういう場合、男なら女を安心させる優しい言葉なりなんなり掛けるのが普通だろう。
なのになんだ。無抵抗とか有り得ない? 従順だとつまらない??
こいつはいったい私に何を求めてるんですか!!
「何言ってるの。俺はを愛してるからさ、無理矢理とかしたくはないんだよ。
言っただろ? の悲しそうな顔も辛そうな顔も好きじゃないんだ」
「こんな胡散臭い愛の言葉は初めてです!! 言ってることが色々矛盾してると思う!」
「してない。無抵抗ななんて張り合い無いよ、俺はの嫌がる顔と怒ってる顔は好きなんだからさ」
「あんたねぇッ!!」
蹴飛ばしてやろうかとジタバタ暴れてみるが、上に乗っかられてるこの体勢ではまるで意味がない。
そして暴れるのに比例して腕を拘束する手に力が入ってくるので、地味に痛い。これは絶対痕になる。
なんなのこの扱い! 嫌われたくないとか言ってたのどこの誰!!
「そうそう、その調子。無駄な抵抗を必死にするは可愛いネ」
「あんたホントに変態だな! 死ねよ!!」
「あははははッ」
この体勢で、それだけ楽しそうに笑われると複雑な気分になるんですが。
…あれ。これは合意の上での行為だよね…無理矢理じゃないよね…あれ…自信無くなってきた…。
「あー…やっぱ、俺って変態なのかな? に罵られると興奮するんだよね」
「何言ってんのホントに死んで今すぐ死んで! がっつかないって言ったくせにっ、うそつき!!」
「俺は嘘つきで良いんでしょ? が言ったんだよ?」
「あ、あれはそういう意味じゃないでしょっ」
「良いんだよ、意味なんてどうでも。
俺はが好きだし、は俺のモノだ。それ以上何が必要なの」
「いやそれあんたの言い分だけじゃん。私の言い分はどこいったの」
「あー、知ってる? みたいなの、往生際が悪いって言うんだよ。
は好きでもない男とこういうこと出来ないでしょ? 俺のこと好きなくせに」
「あんたのそーゆーとこ嫌いです。死んでくれ」
「またまた。素直じゃないネ」
実に楽しそうに笑って、神威はぐっと顔を近づけてくる。
普段の、一見無害そうな笑顔を消した――獰猛な獣の微笑に、思わず息を呑んだ。
「――言えよ。俺が好きだって」
「…ッ」
耳元で低く囁かれた言葉に、一瞬、体に震えがはしる。
それでも私は、なけなしのプライドで、笑みを返して吐き捨てた。
「――絶対言ってやらない」
「ははっ…ホント、ってイイ女だね…意地でも言わせたくなったよ」
耳朶を擽る艶を含む声音に、ぞくりと震えがはしる。
拘束されたままの手を、反射的にぎゅっと握り締めた。
脚から腰、わき腹へと這う冷たい指の感触が、余計に意識を引っ張って行く。
首筋に小さな痛みがはしる。だけど、その程度で気が紛れるわけでもなかった。
「…っ、…神威…ッ」
「ん?」
「腕っ…痛い…ッ」
「ああ、ごめん」
おざなりな謝罪とともに、腕の拘束は外される。
圧迫感が多少緩和した。結構強く掴まれていたらしい。互いに無意識だろうか。
「痕付いちゃったね。でも意外と頑丈だな、鬱血もしてないや」
「…ねぇ、なんでいちいち発言が不穏なわけ…?
私は夜兎じゃないからさ、怪我したらそう簡単に治らないんですけど…」
「わかってる、わかってる。冗談だよ」
嘘だ。8割くらい本気だった。
赤く痕の付いた手首を這う舌先の感触に、足元から妙な衝動が駆け上ってくるような錯覚を覚える。
自分でも、何に耐えているのかわからない。ただ無意識に唇を強く噛んだ。
「そんなに強く噛むと傷になる。治りにくい体なんだからさ」
「ぅぐ…っ」
無理矢理口をこじ開けられて、指を咥えさせられる。
唇を噛み切らないようにとの配慮なのか、それとも加虐的な思考の産物なのか、判断出来ない。
「ただ肌に触れるだけでも、反応するもんだね。感じやすいのかな」
「~~~っ」
「ああ、これじゃ喋れないか。ごめんごめん」
咥えさせられた指を引き抜かれるのと、二の腕を掴まれて引き起こされたのはほぼ同時。
後ろから抱え直されて、反射的に逃れようと身を捩った。
「逃げたいの? …逃がしてあげないけどね」
「んっ…ぁ…あ…ッ」
耳元で低く囁かれる声音と、肌蹴られた服の隙間から侵入してきた手の動きに、噛み殺し切れずに声が上がる。
神威の指が冷たいのか、私の体が熱いのかわからないけれど、触れられているという感覚が強い。
「…っん……ッ」
「…ってさぁ」
「……ぇ?」
「着痩せするタイプ? 腰とか細いのに胸はあるよね」
「…………」
唐突に、何を言い出すの。この人。
「…なんですかいきなり」
「いや、手に余るな、と思ってさ」
「ひゃぁ!? ちょっ、そんな強く掴まないでよ…ッ」
鷲掴みにする奴がありますか! 女の子は丁寧に扱ってください!!
「よく胸が大きいと不感症か物凄く感じやすいかのどっちかだ、って言うけどさ…はどっちだろうね?」
「し、知るわけないでしょッ?」
「試してみようか」
くすくす、と耳元で嗤う声に。
外気に晒された胸元を這う指先が、先端の突起を掠めた瞬間、目の奥が白く点滅するような錯覚がした。
「んぁ…ッ」
「わかりやすいなぁ。やっぱり感じやすいね」
「…っんく…や…ッ」
「イヤ? 気持ちイイでしょ?」
「んんっ…」
反論しようにも、感情を言語に変換する能力が低下してる。
反射的に体を捩るけれど、そんなことは何の意味もない。
ぞくぞくと、寒気にも似た感覚が、背筋にはしる。
「っ…手、止め…ッ」
「可愛いね、は。…いやらしい顔になってきた」
「ぁ…あ…く…ッ」
零れそうになる声を、抑えるように自分の口を塞ぐ。
無駄な抵抗だと言わんばかりに、耳元で嗤う声は楽しそうだった。
「声、聞かせてくれないんだ? 艶っぽかったのに」
「~~~~っ」
「声我慢すると、感度が上がるって本当かな?
じゃあ、もともと感じやすいはどうなっちゃうんだろうね?」
耳元で囁く声は、言葉こそ辱めるようなものだけど、その声音には艶が含まれていた。
私は翻弄されているようでいて、その実、翻弄する側でもあるのかもしれない。
耳朶を擽る熱を帯びた吐息に、視線に、私に欲情しているのだと、理解する。
怖い、という感情よりも。
愉悦に近い感情の方が、僅かに勝った。
ほとんど無意識に、私の唇は微かな笑みを象る。
ああ、私の頭もとうとうイカれたんじゃないだろうか。
「ねぇ、何を考えてるの? それ、余裕…?」
「…全然…あんたのことしか、考えてないよ」
「凄い口説き文句だね」
ゆっくりと、胸から腹を辿り、脚へと指先が流れるように動く。
素足を撫で上げられる感覚に肌は泡立ち、脚の付け根へと指が滑ると、反射的に体が硬直した。
「ふぅん? 胸しか弄ってないのに、結構濡れるもんだね?
それともが特別感じやすいのかな。…初めてのくせに、だらしないなぁ」
「ひっ…あぁッ?!」
直に触れられた瞬間、私の意思とは関係なく体が跳ね上がった。
自分でも予想していなかったほどの声量に、慌てて口を塞ぐ。
なに、今の。なんなの、いまの。
「…軽くイッった…のかな? 今の」
「…ぇ…ぅ…?」
「イッったことないの? 自分でしたことくらいあるでしょ」
「なにその決めつけ!? やめてよ、基本主人公は清純イメージなの!
どんだけドSだろうが性格悪かろうが清純派なの! 与えられる以外の快楽を求めちゃいけない存在なんだよ!!」
「誰に言い訳してるの、ソレ? 自慰経験なかったらこんなに濡れない」
「やめて色んな意味でイメージ大事にして! 良いんだよ二次元だから良いんだよ!!」
「えー。リアリティないなぁ」
「誰がリアリティ求めんだよこういうのに!!」
「ハイハイ。まあ、タワゴトはその辺で」
「戯言扱い!?」
凄く大事なことだったのに?!
言うに事欠いて戯言! しかも納得もせずに軽く流された!?
「お前が空気読めないせいで色々ぐだぐだだーーーっ!!」
「ハイハイ。…さて、これだけ濡れてれば入るよね」
「は?」
「指」
「…二本に見える」
「二本だもの」
え? 二本?
いきなり二本? 普通、徐々に増やすもんじゃねぇの?
いや、だって、二本って。太さ考えてみようよ。
女の細い指じゃないんだよ? 無理じゃね? 普通に無理じゃね?
「え、えと…本気…?」
「うん」
「む…無理…いきなり二本なんて無理っ、入らな…ッ」
「指より太いもの入れるんだから、慣らさないといけないでしょ?」
「は、初めてなんだから二本も入るわけないでしょ!?」
「どうせ一本でも痛いって言うんでしょ? なら二本でも変わらないじゃない。三本入れないだけましだよ」
「ど、どういう理屈…ッ」
三本の選択肢があったことに吃驚ですけども!
三本入るなら最初から指入れる必要性ないじゃん!
「やめてください死ぬ死んじゃうお願い許して何でもするからぁっ!」
「指で死ぬわけないだろ。そんなこと言ったら俺の入らないよ」
「そうだけど! そうなんだけど!!
ああああダメださっきまでの色っぽい雰囲気ぶっ飛んだダメですもう怖い無理やめる!!」
「あのね…あんま前戯に時間取ると俺が無理なの、限界なの!
二次元だから無理も平気なんでしょ。良いから大人しく脚開け」
「怖いセリフを吐くなぁぁぁぁぁっ!!」
「往生際が悪い! 女に二言は無いって言い放ったのどこの誰」
そりゃ私ですけども!!
でもそういう意味で言ったんじゃないし!
「…あのさぁ、…俺はのこと好きだから無理矢理はしたくないとは言ったよ?
でもそれってつまりしたくないだけで、出来ないってわけじゃないんだよ?」
「今の展開がまさに無理矢理です神威さん落ち着いて!! そんな余裕のないあんたは誰も求めてないよマジで!!」
「だからさっきから誰に対する発言してるのは。
――指が嫌ならこのまま無理矢理突っ込むよ、良いの!?」
「嫌ですごめんなさい! わかったから、言うこと聞くから落ち着いて怖い!」
「よし」
よし、じゃねーよ!!
なにこのぐだぐだ感…泣きたい…凄く泣きたい…。
「泣いても良いけど、俺を興奮させるだけだと思うよ」
「…あれ、また声に出てた…?」
「うん。あと少し力み過ぎ。力抜いた方が良いよ、怪我するから」
「無理言うな! ッ…ぃ…!?」
抗議の声は、鈍い痛みにかき消された。
粘着質な水音を立てながら、徐々に、異物が薄い肉壁を押し広げて侵入してくる感覚に、肌が泡立つ。
だけど今回は、圧倒的に痛みが勝った。
「痛…ッ」
「やっぱキツいね。結構濡れてるのに」
「やっ…痛っ…痛いってばぁ…ッ」
「体に力が入り過ぎなんだよ。力抜いて」
「無理無理っ…自分の意志でどうこう出来るレベルじゃないってば、無理だから!!」
「…あー…なんか、前に言ってた意味がなんとなくわかった」
「な、なに?」
痛みに涙が滲んできた。
だというのに、対するこいつはどこまでも呑気で、いっそ殴りたくなる。
「前にさ、うちの団員が? 言ってたんだけど」
「何の話…ッ…痛いってば無理ッ! 入らないからッ!!」
「はい、黙る」
「もがっ」
無理矢理口を塞がれて、抗議の声は封じられる。
…いや待て、これどう見ても明らかに合意の上の行為じゃない。無理矢理だ。
「…処女はメンドクサイ、って」
「!?」
「嫌がるか痛がるかしかしないからメンドクサイって話」
「~~~ッ!!」
ナニソレ!?
それは何か、私が面倒くさいって暗に言ってるの!?
「ああ、は別だよ? だからさ、好きでもない女だったら確かにメンドクサイだろうなぁ、って思っただけ。
たかが処理作業で相手が文句つけてきたら腹立つしね。逆に、好きな相手だと慣れてるより嫌がられる方がまだましかな」
「………」
「大人しくなったね」
口を塞ぐ手が外れて、反射的に息を吸う。
…鼻まで塞ぎやがって、殺す気かと思ったわ。
「っは…あ、あんたは本当に空気読まないな…ッ」
「そう? が辛そうだったから、気を紛らわせようかなと思っただけなのに」
「だからってその話題はない!!」
「でも気は紛れただろ? 頑張れば入るもんだよねぇ、偉い偉い」
「うぅ…ッ」
そこまで長さはないとは言っても、指二本はさすがにきつい。
防衛反応も手伝って、そう酷い痛みは無い。痛みよりは異物による圧迫感の方が強い。
…指でこれって、私の体は最後まで保つんだろうか? 体力尽きそうだ。
「…も、あんたは…色んな意味で最低だ…」
「そうかなぁ。優しくしてるんだけど」
「…優しいとか優しくないとかもうそういう次元じゃない…」
行為云々は、確かにそこまで酷いわけじゃない。
暴力を振るわれるわけでもない。傷つけられているわけでもない。
ただ、悪気が無いのが問題だ。やっぱりこいつはどこかオカシイと思う。
「人間の防衛本能って凄いよね、合理的だ。
指、さっきまで食い千切られそうだったのに。だいぶ緩んだね」
「ははは…防衛本能だとわかっててやってるお前がおっかないわー…」
「さすがにこれで感じてるとは思ってないよ。無理矢理突っ込まれて感じてたらただの変態だしね。
痛みを快楽に変換する奴もいるけど、はそういうタイプじゃないだろうし」
「冷静に分析されると嫌なんですが……んっ」
「動物はどうか知らないけど、人間の本能は実に合理的だ。
楽な方へと意識を切り替えて、それに見合うように体も慣れていく。不思議だね」
首筋を這う舌先と、一定のリズムで内部を蠢く指の感触とに、体が震える。
それでもまだ痛みの方が強いが、ぞわぞわと下から駆け上がってくるような、何か奇妙な感覚もあった。
「痛みと快楽は常に表裏一体で、ほとんど同じ場所にあると言っても良いのかもね。
だから、痛みを快楽に変換するのは、実はそれほど特殊でもない。単なる本能だから」
呼吸が定まらない。
意識も揺らぐ中で、いったい何の話をしているんだったっけと、茹だった脳が問いかけてくる。
「痛みから快楽へのシフトを、脳と体が覚えれば良いんだよね。
痛みの後には快楽がくる、って刷り込めばいい。簡単な自己暗示。結構効果的らしいよ?」
「んんっ!?」
一瞬、痛みに何かが勝った。
また、目の奥がチカチカする。今のは、何?
「は飲み込みが早いね」
「…ぇ…今の、何…?」
「うん? 教えてあげようか?」
狼狽える私を面白がっているのか、楽しそうに神威は嗤う。
中に埋められた指先が、大きく動いた。
「感じやすい場所、っていうのは必ずあるんだけどさ。
個人差はあるけど、大抵はみんな同じなんだよね」
「ぁ…ッ…やっ…な、何? なんか変…ッ」
「特にはわかりやすい。初めてだからかな、反応が素直だ」
脚の先から駆け上がってくるような、この奇妙な感覚。
ともすれば叫びだしたくなるほど、気が狂うような、衝動。
ここまでくれば、さすがにわかる。
「どうすれば気持ちよくなれるか、体に直に教え込んだ方が良いんだよ。
だからさ、ナカでイクの覚えてね。そうしたら――初めてでも、イケるかもよ?」
「んっ…く、…ぅ…ぁッ」
チカチカと、目の奥で光が点滅する。
それは錯覚で、自分がどうなっているのかも、なんとなく理解出来るようになっていた。
半ば無意識に傾ぐ体。
空いていた方の手が頬に触れて、強引に顔の向きを変えられる。
舌で唇の輪郭をなぞり、歯列を割って入りこんでくる舌先に、反射的に舌を絡ませる。
貪り合うような口づけの最中でも、中を蹂躙する指先は止まってはくれない。
感覚に酔うように、瞳を閉じた。
荒く、乱れた自身の呼吸が耳障りだ。
「ひ…ッぁ、…ッ――――ッ!」
喉を突く細い悲鳴は、音に成りきれずに虚空に溶ける。
目の前が、一瞬白くなった。
急激に力が抜けて、私の体は崩れ落ちる。
浅く呼吸を繰り返す自分の体が、自分のものではないかのようだった。
とにかく気怠くて、重い。
「…? 、大丈夫? ここで気ィ飛ばしたままだと俺が困る」
ぺちぺちと頬を軽く叩かれ、私は顔をしかめた。
浅い呼吸の合間に、なんとか声を絞り出して、顔を叩く手を払う。
「…叩かないでください起きてマス…」
「良かった。ごめん、にはちょっとキツかったね」
さらっと言わないでください。
…悔しい。何かよくわからないけど悔しい。
いや、わかってたけど! こっちがいっぱいいっぱいなのに、こいつが余裕綽々なのが腹立つの! 悔しいの!!
「…ここまできて全然進まないとかなんなの…ナニコレ、私死ぬの? 死亡フラグ?」
「いや、死なないよ。殺す気はないから。…でもコレ、このままやって入るかな…」
まあ私の知識なんざ本やらゲームの知識でしかないんですけどね?
…普通、こんなに体力使うものなんでしょうか。
私は、自分の体が発育不良だとはまるで思えないのですが。
…ここまでやってもまだ入らないの? もしかして足りないの? そういうもんなの??
「…まあ、赤ん坊が出てくる穴だし、入らなくはないか」
「…なんか恐ろしい事言ってませんか神威サン…?」
「冗談だよ、冗談。可能か不可能かで言えば可能だろうけど、初めてなら痛いと思うんだよコレ。
極力優しくするって約束したしね、無理矢理捻じ込んだりしないから安心して」
「……………表現が不穏だよね? 捻じ込む? 突っ込むですらなくなったよ?」
捻じ込むレベルなの? そんな大掛かりな作業なのコレ?
というか、女の体は男を受け入れられるように出来てるんじゃなかったっけ?
…気遣いなの? それとも本当にサイズ的に厳しいの? …なんか怖くなってきた。
「んー…どうしようかな。そうだ、ローション代わりになるもの貰ってこよう」
「ちょ、ちょっと待って…ッ!!」
色々突っ込みたい発言だが待て、その前に待て!
「なに? どうしたの?」
「ど、どこ行く気? 誰に貰いに行く気?」
「晋助」
「やめてマジでそれだけはやめて」
どの面下げてそんなことあいつに頼みに行く気だ!!
向こう数年はそれをネタに苛められる! 主に私が!!
「でもさ、入らなくはないけど、このまま挿入れたら相当痛いよ多分。
指でもキツいのに簡単に入ると思ってるの? 痛いの好きなの?」
「んなマゾいこと考えてねーよ! でもやめてあいつのとこには行かないで頼むから!」
「んー…じゃあ、あの派手なおねーさん?」
「余所のお嬢さんにまでセクハラすんじゃねーよ」
「え、そんなこと言われても、他にこの船に知り合い居ないよ?
…あ、そうか。簡単なことだった」
妙案を思いついた、みたいな顔してるんだけどさ。
…こう、私の知識をフル動員させてもだな…嫌な予感しかしないんだが…。
「」
「…なに。嫌な予感しかしないんだけど」
「要は滑りを良くすれば良いんだからさ、が口ですれば良いんだよ」
「………………………………」
「あれ? わからない? だから俺の」
「言わなくて良いですわかります!! あんたその顔で平然と放送禁止用語連発するのやめようよ!!」
「いや顔は関係無いよ?」
はいはい、顔は関係ないですねそうですね!
可愛い顔と下ネタのギャップじゃ萌えねーから! 恐怖でしかねーから!!
っていうか、初めての女子に口でやれとかマジ酷い! しかも悪気まったく無いあたりが怖い!!
「じゃあ、に選択肢をあげようか」
「…選択肢になっていなさそーなんですが」
「まず、口でするか、このまま捻じ込むか」
「いやだから捻じ込むってあんた」
「あとは、――じっくり時間かけて、ほぐすか」
「……………………………」
「まあは感じやすいから、大丈夫だよ。朝までに寝るのは無理かもしれないけど」
「……………………………良いです口でやりますやれば良いんだろコノヤロウ」
やっぱ選択肢になってないじゃん!!
しかし背に腹は代えられない…高杉の玩具にされるのは御免蒙るし、朝まで寝られないとか体力が保たない。
かといって神威が言うほどだから、捻じ込まれたら死ぬかもしれない。揶揄ではなく。
…選択肢無いじゃないか。ホントに。
「………」
恐る恐る、視線を向ける。
…ええと。他をまじまじと見たことは無いので比較は出来ませんが、アレは口に入るもんですか?
……………そして口に入るかどうかも怪しいモノが、私の中に入るのでしょうか。視界の暴力で軽く恐怖心が増しました。
「………」
「…ー? やるかやらないかはっきりしてくれないと困るよ?
出来ないなら他の選択肢選べば? 別に強要しないよ」
「うっさいです! やるっつってんだろ黙れ!!」
強要してるも同じだろあの選択肢は!!
怒鳴り返して深く息を吐いてから、恐る恐る手を伸ばす。
熱を持つそれは、まるで個別の生物のようだ。無意識にか、指先が震える。
「歯、立てないでね? 急所だから、ソレ」
「立てません!! 余計なこと言わないで決心が鈍るから!!」
知識はある。とは言え、どうすれば良いのかなんて半分も理解していない。
――そして思っていたより、結構勇気が要る。この行為。
「…っ」
舌先を伸ばして、恐る恐る熱の中心へと這わせる。
味、は気にしないことにする。気にしたら恥ずかしくて死ねる、確実に。
「。ちょっと視線だけこっち向けて」
「…?」
「まあホラ、初心者のには技術とか何も期待してないからさ?
その体勢で上目使いされると、思った以上にそそるね」
「………」
………ああ。こいつ、馬鹿だ。
呆れたように目を細めれば、楽しそうに嗤われた。
だけど、その青い瞳に情欲とともに嗜虐の色が浮かんでいるのを見て、ぞくりと背筋に寒気がはしる。
「…初心者に舌技とか期待しないし。拙いのもそれはそれで悪くはないんだけど、もどかしいし。
――――だから、こうした方が早いよね?」
「んぐっ…!?」
いきなり、上から頭を押さえつけられた。
逞しいそれが喉を突く苦しさに、その腕から逃れようと試みるが、
完全に押さえ込まれている状態では、抵抗のしようがない。
喉の奥まで圧迫されて、息苦しさに顔を顰めた。
「ぅ…ぐッ…んぅ…ッ」
「さすがに苦しいかな。でも呼吸は出来るでしょ?」
出来る出来ないの問題じゃない!
口に余るようなモノを、喉の奥まで突っ込まれたら吐き気しか生まれないだろうが!!
なんとか頭を上げようとしても、ほぼ身動きが取れないこの状態では無意味に等しい。
「必死になって抵抗するは可愛いね? 酷い事したくなる」
「んっ…んぐ…ぅッ…」
「さすがに口呼吸は出来ないか。苦しそう。
…でもさ、って案外、マゾっ気あるんじゃない? いやらしい顔してるよ、今」
お前がドSなだけだ! ホント死ねば良いのにこの変態は!!
歯でも立ててやろうかと思っても、舌先すらまともに動かせない状態ではそれも不可能だった。
「っ…ぅ…んん…ッ」
「…ねぇ、。出して良いかな」
「!?」
返事が出来ないのがわかってて訊いてるような気がする。
頭を押さえつける手に、僅かに力が籠った。
「…頑張ってネ?」
「んっ!? んぐ…ッ…んんーーーーっ!?」
喉の奥に吐き出された熱に、顔を顰めた。
この状態で吐き出すことは出来ず、仕方なく喉を鳴らして飲み込む。
それでも一度では飲み込み切れなくて、口内を犯す熱が引き抜かれると同時に、残りは吐き出した。
「ぅぐっ…げほっ…か、は…ッ」
「あー、やっぱ全部は無理だったか。
でも半分くらいは飲めたかな? 初めてにしては上出来だよ、良い子だね」
「…っは…あの、神威…ひとつ聞いてもいいかな…」
「なぁに?」
喉がひりつく様な感覚を飲み下して、浅い呼吸の合間に訊ねる。
生き物の体液が美味しいわけはないし、苦しいのも恥ずかしいのも言い知れない怒りもとりあえずは置いておく。
これでも私も乙女なので…これ以上直視するのも耐えられないんだけども…でも興味がないわけでもないので…
いや、言い訳はどうでもいい。率直に疑問がある。
「こ、これって、出したら、萎えるんじゃない、の?」
「え? …あぁ…普通はね。でもほら、俺はまだ若いし。のせいで溜まってるし」
「~~~~ッ!!」
そうなの? そういうもんなの!?
え、じゃあ一回で終わらないんじゃないの? その場合は一回で終わりにするって約束はどうなるの!?
「じゃあ、準備も出来たし、そろそろやろうか」
「え。あ、あの、神威サン。そのまま突っ込むおつもりデスカ」
「そうだよ?」
「いや待ってよなんだよその吃驚した顔。こっちが吃驚だよ!
ダメだろ。生はいかんだろ。あんたの頭がオカシイのはわかってるけど、避妊とか考えてくれよ」
「おかしくはないよ、とは常識が違うみたいだとは自覚してるけど。
そもそも、避妊する必要あるの? 無いでしょ?」
「ええええっ!? ちょ、さすがのさんもその返答は予想外なんですけど!!」
なんですかそれ、最初から考慮に入ってなかったと!?
茫然とする私に対して、神威は不思議そうに首を傾げてきた。
「なんで? だって、は俺の子供を生んでくれるんでしょ?」
「子…ッ」
「に初めて会った時、そう言ったはずだけど」
「…言ってたね…」
「だから、問題ないでしょ」
「え。う。いや、あの、あると思うんだけど」
「そう? でも俺にとっては問題ないし良いんじゃない?」
「いやいやいや、そりゃ生むのあんたじゃねーし」
「うちの親もデキ婚だったから問題ないよ」
「うわー、それが当たり前みたいに言われてもなー。
っていうかそのデキ婚の結晶はあんたじゃねーか…」
「ハイハイ。あんまくだらない話しないでよ、萎えるから」
いっそ萎えればいいのに!!
と、言い返す気力は無かった。色々衝撃的過ぎて。
初めてって妊娠しやすいとか聞くけど、あれ迷信だよね? 迷信って言って。
そりゃあ男に「好き」って言わせるのは簡単でも、「結婚しよう」って言わせるのは難しいって言う。言うよ。
それ飛び越して「子供欲しい」って言われるのは、そりゃあ女としては喜ぶところかもしれない。
でもね。でもですよ。さんはまだ19歳です。神威だって大して歳は変わらない。
…このまま流されて良いのか。後悔しないかこれ。
「…か、神威サン…ちょっと待とう…あの、少し話を」
「今更? もう充分話したでしょ。なに、怖気づいたの?」
「誰がですか! 女に二言はないと言った!!」
「…ああ、って本当に馬鹿だね」
…
……
………うん。私もそう思った、今。
「先延ばしにしたって意味ないでしょ。俺が嫌いならそう言えば? やめてあげるよ」
「ひ、卑怯者ッ!」
「あははっ、ありがとう。は可愛いね」
この状況下で、冗談でも嫌いとか言えるわけないだろ!
言えないのをわかってて訊いてくるなんて、狡い!!
「――良い子にしててね。酷くしないから」
膝の裏に手を掛けられて、脚を広げられる。
さすがに恥ずかしくて直視は出来ない。顔を逸らして、きつく目を閉じた。
…やっぱ痛いよね。痛くないわけないよね、これ。
さ、さすがに怖くなってきた…。
思わずシーツを握り締めるのと、下腹部に焼けるような痛みが来たのは、ほぼ同時だった。
「…ッ!!」
目の前が赤く点滅するような、錯覚を覚えた。
引き裂かれるような、焼けるような痛みに意識を持って行かれる。
「…ん、やっぱキツいね」
「…ぃ…ッ」
ともすれば悲鳴を上げそうになるのを耐える為に、唇を噛む。
…あれ。なんだ。呼吸の仕方ってどうやったっけ…?
「…え? ちょ、? 呼吸! ちゃんと呼吸して!?」
「タ、タイミングわかんない…ッ」
「混乱し過ぎ! 普通にすれば良いだけだから!」
「いッ、痛…動くな馬鹿ッ、痛い痛いッ」
「…ああ、そうか。普通を意識すると普通に出来なくなるタイプか…手が掛るね…」
「う、うるさ…っ」
苦しくて涙目になっている私をあやすように、神威は触れるだけの口づけを落としてくる。
ほんの少し、それで落ち着いてしまった自分がなんだか悔しかった。
「わかってるよ。だから今は俺に集中して」
「…?」
「余計なこと考えてると、さっきみたいになるでしょ?
だから俺に集中してなよ。ずっと喋っててあげるから」
「喋りながらするの!? え、それなんか凄く嫌なんですけど!!」
ずっと黙られるのも怖いけど、ずっと喋られるのも嫌過ぎる。
もうこの際、雰囲気大事にしてとか言わないけど、それはいくらなんでも無い。
「だよねぇ。沈黙は金って言うし」
「言葉の使いどころおかしくない?」
「良いじゃない、別に。…ほら、気が紛れたでしょ?」
「へ…?」
「うん。全部入った」
「……」
さらっと言われた。
…思わず動きを止めた私に、神威は悪意のある笑みを返してくる。
「見る?」
「見ないです見ません私そんな変態じゃないですッ!!」
「そう? でもそういうものだと思ってはいるけど、よく入るよね」
「要らんこと言わんでいいッ!! まじまじ見るな!!」
なんなのこいつ。なんで実況中継されなきゃいけないの!
ああもう怒鳴り過ぎて喉痛いですもうやだ!
「痛い?」
「え。…あ、いや…思ったよりは、痛くない…」
「そう、良かった。
涙目のも色っぽかったけど、痛いままだと可哀想だもんね」
「あんた何言ってんの!」
「ハイ、は動かない」
「きゃんっ」
反射的に起き上りそうになったところを押し返されて、変な声が出た。
…え、なに。今のどこから出たの。私の口ですか。
「………」
「………」
「なに、今の可愛い声」
「わ、私じゃない」
「いや、しかいないし」
「違う違います私じゃない」
「そういう声も出せるんだね」
「だから違うと!」
「ハイハイ」
「話聞いてっ」
怒鳴る声が掠れるのは、喉が枯れてるからってだけでは、ないだろう。
内側からくる圧迫感。痛みはさほどではないけれど、無理に広げられて異物を受け入れているのだから、苦しいのは当然だ。
呼吸が止まるほどの衝撃は過ぎたけど、今度は自分の中にあるという認識が生々しくて困る。
そんなことを考えてる時点で頭がダメになったとしか思えない。どうしようこれ。私はどうすればいいの。
「…? 痛いの?」
「い、痛くは、ない、けど」
「じゃあ苦しい?」
「く、苦しいけど、そうじゃなくて…」
「?」
「…わ、私は、何か、するべきなの…?」
恐る恐る訊ねると、神威はきょとんと眼を瞠った。
そして、不思議そうに首を傾げてくる、
「…出来るの??」
「え」
「何か出来るほど余裕があるように見えないけど?」
「うぅ…」
ごもっともなんですが!
しかしこの後どうしていいかわからないの! どうあるべきなのコレは!
「何もする必要ないよ。下手に何かされると困る」
「こ、困るんだ…」
「それこそ理性飛んでも責任持てないよ?」
「怖い事言うな!!」
なんでこのタイミングでそういうこと言うのかな! 空気読めよ!!
戦けばいいのか恥ずかしがればいいのかわからない私に、神威は面白そうに笑う。
なんだか玩具にされてる気分だ。いや、こいつのこういう態度は今更か…。
「騒ぐ余裕は出たみたいだね。動いて良い?」
「え」
「突っ込んで終わりじゃないんだけど」
「…え」
「終わりだと思ってたの?」
そ、そうではない、けども。
認識出来てなかったというか。
…さ、さすがに動かしたら痛いんじゃないかコレ。
「いきなり激しくしないから安心してよ」
「ど、どこに安心すれば良いの?」
「うん、動揺し過ぎ。は本番に弱い子なの?」
「そそそそんなことはないはずですが! 何事も初めては上手くいかないものでしてっ」
「でもこのままだと終わらないよ?」
「う…っ」
わかってる。わかってるんだけど。
ああああ、もう、こういうときに限って言い返す言葉が出てこない…!
「…、ホントに往生際が悪いよね。メンドクサイ」
「ちょ!?」
唐突に、腰を掴まれて引き寄せられた。
抉るように動かされて、一瞬呼吸が止まる。
「もう入ってるんだからさ、いい加減にしようよ」
「だ、だからそういう問題じゃ…ッ…や、ちょっと、止め…ッ」
「さっき言っただろ? 痛みは快楽にシフトする、って。
ナカでイク感覚はさっき覚えたんだから、そんなに怯えなくても大丈夫だよ」
痛みなのかなんなのか、よくわからない。
ただ、獣じみた情欲を映す青い瞳に、濡れた唇を舐める舌の動きに、ぞくりと肌が泡立つ。
それは恐怖からきた震えではなく――恐らく、同じように情欲だったのかもしれない。
「は…ぁ…っ…あ…ああっ…っっ!」
狭い内壁を押し開き、奥へと突き上げらるたびに、殺し切れない声が零れる。
無意識に伸ばした腕を、虚空で彷徨わせた。
ただ、縋りつくように腕を伸ばして、無意識に抱き締める。
…不思議だ。抱きつく、ではなく抱き締める、と自然に思ったのは何故だろう。
「――あんまり煽るなよ。酷くしたくなるだろ…?」
「…ぁ…?」
「…聞こえちゃいないか」
微かに笑う気配がした、ような気がした。
その瞬間、衝撃に体が跳ね上がる。
痛みは無い。というより、それを痛みとは認識出来ない。
衝撃。もしくは圧迫感。
表現するなら、内臓を押し上げられるような、そんな感覚。
「…ぁ…ぐ…ッ」
「…優しくするって言ったのに、出来てないよなぁ、これ…
ごめんね、。でも今は許して?」
「…ぃ…ッ」
熱い。苦しい。意識が混濁する。
呼吸がうまく出来ない。それでも何かを吐き出すように、意味の無い声を上げる。
何もかも、よくわからなくなっていた。
痛みと言うほど明確なものはなく、熱に浮かされているような感覚。
意識は霞むけれども、途切れることもない。
朧げな意識の中で、かけられた言葉すらも認識出来なかった。
だからきっと、私が発していた声も、言葉にはなっていなかったに違いない。
だけど、互いに余裕のない、切羽詰まった触れ合いの中で、
――どこか満足して、私は自分が笑ったような、気がした。