※過去編です。呪専時代編はこれで完結。
ハルノアラシ 08





「…夏油~」
「なんだい、硝子」

自販機から戻って来たふたりは、寮の共有スペースで足を止めた。

「アイツらって付き合ってたっけ?」
「いや、まだ付き合ってないと思うよ」
「だよね」

ふたりの視線の先にいるのは、五条と
なぜか、くっついてそれぞれ違うことをしていた。

「…これどうやり直しても姉ちゃん死ぬんだけど。なんで?」
「そこ固定イベントだから必ず死ぬぞー」
「マジか。仲間108人揃えたら死なねぇんじゃねーの?」
「うん。でも一回死ぬ」
「あー生き返る系? ところでオマエはさっきから何やってんの」
「右手の爪が上手く塗れねェのよ」
「不器用か。ホラ、手出せ」
「はみ出さないようにお願いします」

仲が良いのは良いことなのだろうが、その距離感はなんなのか。そしてなぜ共有スペースでイチャついているのか。

「距離感のバグり方が激しい」
「あれ、恐ろしいことに無自覚みたいなんだよね」
「…いやもう付き合えよ面倒くさい」

良い意味でも悪い意味でも、有名人なふたりだ。
それがくっついて寮の共有スペースに陣取っていれば、嫌でも目立つ。既にちょっとした噂になっているのだが、幸か不幸か本人達の耳には届いていないらしい。視線に晒されることに慣れている、というのも善し悪しだ。

「お~。上手いじゃん」
「俺は器用なんだよ」
「じゃあ器用な五条クン、足の爪も塗って」
「…オマエ、マジか」

手はともかく、足を差し出してくるのは年頃の少女としてどうなのか。
さすがに若干戸惑いつつ、数秒躊躇してから五条はの足を手に取った。代わりに、先程まで遊んでいたゲーム機を差し出す。

「爪塗ってやるからレベル上げしといて」
「おー。パーティメンバーで良い?」
「んー」

ゲーム機を受け取って操作しながら、ふとは視線を上げた。
若干困惑した表情で突っ立っている級友の姿を見つけて、小さく手を振る。

「あ。硝子と夏油だ」
「ん? 遅ぇよ、傑。どこまで自販機探しに行ってんだよ」
「ああ、うん」
「何してんのオマエら」

訊かれて、と五条はまったく同じ動きで首を傾げた。

「え? の爪塗ってんの」
「塗ってもらってる間にレベル上げしてる」
「なんで…?」
「成り行き」
「………あ、そう」

適当だった。思わず、硝子と夏油は顔を見合わせる。
ふたりにとっては、特別なことでもなんでも無いのだろう。

「足の爪って塗る必要ある?」
「サンダル履く時見えると可愛いじゃん」
「…履くの?」
「この前硝子と出掛けた時にさ、可愛いミュール見つけたんだよね」
「……足出して歩くの? 危なくない?」
「何が? …ああ、蹴り技にはまあ向かないけど。五条が一緒にいれば別に良いでしょ?」
「え」

思わず、といった様子で手を止めた五条の反応に、はゲーム機から視線を上げずに応えた。

「任務以外で外出ると大抵ついて来るじゃん」
「…え?」
「自覚ないの? 任務があるときと、硝子と出掛けるとき以外は、私ら一緒に出掛けてるでしょ?」

が任務以外で出掛けた先で、何か危険な目に遭う可能性は著しく低い。
銃火器でも持ち出さない限り彼女に危害を加えること自体が困難であるし、例えばナンパされたとしても初対面の相手に無防備になることはまず無い。しつこく付き纏われたとしても、目の前でその辺に落ちている小石でも砕いて見せれば一発で逃げていく。
心配するだけ無駄なのだが、要するに恋は盲目というやつだ。当人に自覚がほとんど無いのは問題だが。

「…ええと…は、悟と出掛けるためにオシャレするの…?」
「え? なんで? 五条は勝手について来るだけだよ、オシャレは私がしたいからするの」
「言葉選べって言ってるだろ! 俺は犬か!」
「まあ、そうだよね」
だからね。なんか安心した」

も大概自覚が無いが、いつも通りの反応が返ってきて硝子と夏油はなんだか安心して胸を撫で下ろした。
さっさと付き合えよ、と思いつつも面倒くさいことになるのは級友としては勘弁して欲しい、というのが彼らの本音だ。

「荷物持ちさせるわ爪塗らせるわ、コキ使っておいてなんて言い草だよ。…ホラ、塗れたぞ。これで良いですかお嬢様」
「わーいありがとー。五条さぁ、ネイリストの資格取ってきてよ」
「やだよ。俺に何の得もないじゃん」
「私から感謝されるよ」
「そんなおざなりな感謝の言葉に喜ぶわけないだろ」

そう言いながら、五条はが操作しているゲーム機を覗き込む。途端、僅かに顔を顰めて困惑したように首を傾げた。

「…オマエなにそのレベルの上げ方エグい」
「これ、生存者で経験値割るから」
「だからって仲間を戦闘不能のまんま転がしておくなよ。酷過ぎる。俺、このキャラ好きなのに」
「主人公カンストさせよーぜ」
「主人公だけ強いとかバランス悪くなるだろ。返せ返せ」
「えー」

ゲーム機を取り上げてから、ふと思いついたように五条は夏油と硝子の方を振り返る。

「そういや傑と硝子は今日何か用事ある?」
「ん? 無いよ」
「私も」
「さっきと言ってたんだけどさ、四人で飯食いに行かねぇ? 最近行ってねぇし」

言われてみれば、それぞれ忙しくしていて、そういった遊びに四人で出かける頻度はだいぶ減っていた。

「あぁ、なるほど。構わないよ」
「まあ付き合ってやるよ」
「ついでだし七海と灰原も呼ぶかー」

が携帯電話を開くと、間髪入れずに五条は手を伸ばしての携帯電話を無理矢理閉じた。

「…オイ。携帯壊れるだろうが」
「待って? …なんで連絡先知ってるの?」
「後輩の連絡先くらい知ってても別に普通でしょ…」
「……俺が連絡するからいいよ」
「いいけどなんで…?」

首を傾げるに、複雑そうな表情を一瞬浮かべてから、五条は特に返答はせずにそのまま後輩へ電話を掛ける。
電話の向こうから聞こえる、テンション高めな後輩の声に少しばかり五条が安堵しているように見えるのは、夏油と硝子の気のせいではないだろう。

「アイツ心狭いな」
「ほんとにね」

は「私は後輩に変なこと吹き込みそうだとか思われてるの?」などと見当違いなことを呟いて不満そうにしている。
コイツらは圧倒的に言葉が足りないな、とアンバランスな級友たちの相変わらずな様子に、ふたりは苦笑した。


――これはまだ、比較的平穏であった頃の話。


+++


穏やかな日常など、長くは続かないものだ。
五条と夏油の等級は特級へと上がり、も等級こそ変わっていなかったが、それぞれ単独での任務が主体となっていた。
三年に進級してからはまともに教室で授業を受けることも減り、寮内で顔を合わせればまだ良い方で、丸一日顔を見ない日も増えている。
呪術師は万年人手不足の上、現在の高専生の能力が著しく高いせいでもあった。「学生だから」と言う配慮は一切無く、当たり前のように一級以上の案件に放り込まれる。
それでも平然と生還する達に、上も感覚が麻痺して来たのかもしれない。先日二級術師である七海と灰原に充てがわれた任務は、呪霊の等級を見誤ったために悲惨な結果になった。
その後を引き継いだのが五条であることから見ても、上の大きな失態だ。だがそれを咎め、糾弾するような者は居ない。居たとしても無視される。
とて、それに憤りを覚えないわけではない。あまり周囲に興味の無い彼女でも、後輩は可愛い。それでも、眠るように横たわる青白い灰原の顔を前に涙すら出ず、塞ぎ込む七海に掛ける言葉は見つからない。
そして、久しぶりに顔を合わせた夏油が、酷く憔悴していたのが印象的だった。


そもそも平然としている自分や五条がおかしいのだろうな、とぼんやり考えていたは、ドアがノックされる音に我に返った。
時刻は22時を過ぎた頃。こんな時間に訪ねてくるような身勝手な奴は、ひとりしか心当たりがない。
深々と溜め息を吐き出して、は内鍵を外してドアを開けた。

「…俺らまだ高校生なのになんでこんな仕事ばっかやらされてんの?」

夜遅くに女の部屋を訪ねて来た挙句、開口一番がそれか。
少し不機嫌そうな見慣れた顔。せめて「ただいま」くらい言えないのかこいつは、と呆れながら、が返した言葉も大概だった。

「…なんでそれを私に言う? あと任務後にいちいち人の部屋に寄るなよ。コンビニじゃねェんだよ。せめて来る前に連絡しろ」
「携帯の充電切れた」
「バカなの? 部屋戻れよ」
「コキ使われてる特級様を労われよ」
「面倒くさい彼女かお前は」

面倒臭そうにそう返しながら、部屋に入るように促す。こんな時間に入口で言い合っていると他の生徒に迷惑だ。

当たり前のように部屋に入ってきて、当たり前のようにベッドの横に座る。
じっと見上げて来る彼が何を要求しているのか、理解出来る程度に慣れてしまった自分に、は軽く頭痛を覚えながらベッドに腰掛け、くしゃくしゃと五条の頭を撫でた。

「遅くまでお仕事お疲れ様ですー」
「ひっでぇ棒読み」
「そろそろ寝るかー、って時間にワケわかんねェ訪問されたこっちの身にもなれ」

あの日から時々、こういう日がある。
五条に向けられる視線は、賞賛より畏怖の方が多い。今更そんなことを気にするタイプではないだろうが、たまには褒めて欲しいとか、そういう欲があるのだろうか。にはよくわからない。

「いちいち褒めてやらんとお仕事出来ないんですか、特級サマ」
「モチベーションって大事だと思うんだよな」
「私に頭撫でられるのがモチベーション維持に繋がんの?」
「んー…うん」
「デケェ幼児だな」
「言い方。なんでそう口が悪いかな。疲れてるんだから優しくして」

そんな勝手なことを言いながら、膝に額を乗せて来る五条に、は呆れたように目を細めた。要求が図々しい。

「…そんなに疲れてるなら、少し任務の量減らして貰えば? さすがに貴重な人材に無茶やらせないでしょ」
「なんかそれも癪に障るなぁ」
「面倒臭ェ奴だな…」
「任務後にが労ってくれるならまあ、良いや」
「なんだそれ。私のことは誰が労ってくれるのかね」
「俺が労ってやるよ」
「えー」
「何が不満だ」

不満は無いが、それ以外の返答が選べるはずもない。自分も大概な性格だな、などと自己評価しながら、少しばかり自嘲する。

「…も任務増えたな」
「増えたねぇ」
「一級案件もひとりで片付けてるだろ。まだ等級上がらねぇの?」
「…んー…「に一級術師としての十分な能力があるのは認めているが、一級に上げることはできない」」
「は?」

又聞きの言葉を伝えると、五条の表情は見るからに不機嫌になった。対して、は何でもないことのようにパタパタと手を振る。

「上に言われたらしいよ。加茂家への忖度だろ、上は保守派の加茂家と仲良しだからね。夜蛾先生怒ってたなァ」
「そりゃ先生じゃなくても怒るだろ」

としては、対呪霊の等級など大して意味はない。担任である夜蛾にとって嬉しいことなら、まあ頑張ろうかと思っていた程度。既に五条と夏油が特級という等級を手にしている時点で、自分は別に良いかなと、今は思っている。
ただ、周りはそのように認識していないようだ。

「等級を据え置きにして一級案件の任務はやらせるなんてのは、道理が通らない」
「うん。だから私は毎回こう言うことにしてる。「等級が合わないので追加報酬を下さい。当然ですよね?」」
「……」

予想外のの言葉に、五条は目を瞬かせた。
ニコリとも笑わないの表情から、どうやら冗談ではないらしいと受け取って困惑気味に首を傾げる。

「オマエ、それ、上の爺さんたちに言ったの?」
「うん。冥さんがね、「金で動くと思わせておけば、君みたいな子は案外生きやすいよ」って教えてくれたから実践した」

それを勧める冥冥もなんだが、あっさり受け入れて実践するも大概だ。冥冥のように当たり前の顔をして追加報酬を要求したであろうの姿が容易に想像できて、思わず五条は噴き出した。

「…ってほんと、イカレてるなぁ…」
「何笑ってんの」
「いや笑うでしょコレは」

の実力自体は認めている上層部からすれば、金で動くのであれば扱いやすいと受け取られる。立ち位置が微妙に危ういが気楽に呪術師をやっていくなら、確かに良い手だろう。

「で、報酬上がったの?」
「凄いよ、未成年の分際で新築の家が買えそう」
「図太いなオマエ」

得意げに返して来るに五条が笑って、少し、沈黙が続く。嫌な沈黙ではない。
猫か犬でも撫でているみたいだな、と言葉にしたら怒られそうなことを考えながら、はまったく別の言葉を口にした。

「…灰原のこと、聞いた?」
「…任務引き継ぐ時にちょっと聞いた。傑はアイツのこと可愛がってたからな、落ち込んでるだろ」

灰原の件は、昨日今日の話では無い。
その言い方だと、それ以降一度も夏油と会っていないということになるが――

「そういやお前、最近夏油と一緒に居ないよね」
「え? そう? あー…任務バラバラだからかな…。三年になってから俺、あんまり授業受けてねぇし」
「喧嘩でもしてんのかと思った」
「しねーよ。しても引きずらねぇわ」
「だよねぇ」

怪我するような激しい喧嘩の後でも、けろっとして昼食の話をしているようなふたりだ。引きずるようなレベルはもはや喧嘩では無い。

「私達もあんまり授業受けられてねェけど。一般教科大丈夫かな」
「俺らの中でそこまでポンコツいねぇだろ。普通の進学校じゃないし」
「まあそうなんだけどさ」

飛び抜けて得意な教科も無いが、苦手な教科もない。も問題無いのはわかっていて、それでもこんなどうでも良い話をしているのはどうしてだろうか。

…たぶん、落ち着かないからだ。
夜、客人を迎え入れる準備もしていない自分の部屋に、他人がいる。それが不快ではないから、困惑している。きっと、お互いに。

頭を撫でている手とは逆の手の指先に、不意に指を絡められる。手持ち無沙汰なのか、握ったり離したりを繰り返して暫くの指で遊んでいた五条は、不意に視線を上げた。

「…
「なに?」
「一緒に寝ても良い?」

いったい、どういう意図でそんなセリフが吐けるのか。
思わず目を瞠ってまじまじと見つめるに対して、言った当人の方が困惑した表情をしていた。咄嗟に出てしまった、本人も意図していない言葉だった、のだろうか。

「ダメに決まってんだろ。何言ってんの。寝るなら部屋戻れ」

何度か口を空回りさせてから、はようやく、言葉を返す。普段通りに出来ていただろうか、動揺は伝わっていないか。正直自信は無かった。

「ケチー」
「ケチじゃねェわ。なんで了承貰えると思ったの」
「…なんとなく」
「調子に乗るな」
「いてっ」

指先で額をパチン、と弾く。
地味な痛みに声を上げる五条から視線を外して、は怒ったようにそっぽを向いた。実際に怒っているわけではないが、どんな顔をして良いのか分からない。

「…
「今度はなに…」
「呪術師なんてのはさ、御三家だの名門だの天才だのって色々言ってても、結局は呪霊を祓うための道具だ」

突然、声のトーンが変わった。反射的に、は逸らしていた視線を戻す。

「救える人間の数には限りがある。全部救うなんて不可能だ。呪霊が人に危害を加えてから初めて術師が派遣されるんだから、間に合わない場合だってあるだろ」
「…そうだね」
「いちいち帷を下ろすのも面倒だし、一般人が人質に取られたって無視して祓った方が効率が良い。ただでさえ後手に回らざるを得ない状況で、効率を重視して何が悪いんだ、って思う」

手を掴んだまま、どこか淡々と吐き出される言葉。たぶん、この言葉の羅列を吐露したくて自分のところに来たのだろうと、そう受け取っては五条の声に耳を傾ける。

「…でも、傑が言う「力を持つ者は持たない者を守るべきだ」っていうのも、納得は出来ないけど理解は出来るよ。だから、出来る限り助ける。でも、助けられなかったものを引きずったりしない。その代わり、必ず残さず全部祓う」
「…それ、割としんどいよ?」
「知ってる。でも、なら理解(わか)るだろ?」

そう問い返して笑う五条に、は小さく頷いた。
人としてはどこかズレた、呪術師としては正しい在り方。道具や武器として生きるようなその在り方でも、五条も、も、心を磨り減らすこともなく生きていける。そういう資質があるのだと、朧げに理解している。

「呪霊祓いの道具としての人生なんて御免だ、って思ってたけど。傑が居て、硝子が居て、…オマエが居る高専(ここ)に居られるなら、それも悪くないと今は思う」

掴まれた腕を、強く引かれた。
傾いだ体を支えようと、は咄嗟に五条の肩を掴む。
見つめ合うような姿勢になって、至近距離にある青い瞳に、思わず息を呑んだ。

「…が、一緒に居てくれるなら、俺は、」

深い、深い、宝石のような青。
射抜くような真っ直ぐなその色に、は魅入られたように動けなくなる。
腕を掴む手とは逆の手が、腰に回る。そのまま引き寄せるようにぐっと力を込められて、距離が、さらに縮まった。

顔、が近い。今までで一番近い。どうして抵抗出来ないのだろう、とぼんやり考えながら、は瞬きすら出来ずにされるがままに距離を詰められる。
唇が触れそうになる直前に、五条は少し顔を逸らしてを抱き留め、そのまま立ち上がった。

「…は?」

思わず、は間抜けな声を上げていた。
目を白黒させるから五条は体を離して、彼女の手を取る。

「…よし。行こう」
「え、なに。急に。どこ行くの?」
「傑の部屋。途中で硝子も拾おう」
「は? こんな時間に!?」
「夜更かしは若者の特権ー。ホラ行くぞ」
「私も!? え、なんなの、ちょっと待って!」

の言葉は綺麗に無視して、五条は彼女を有無を言わせず部屋から連れ出した。



.
.
.



「……………それで、みんなで来たの? こんな時間に?」

困惑した表情で自室のドアを開けた夏油は、居並ぶ三人に順番に視線を向けた。

「おう。花火やろーぜ」
「えええ…寮母さんに怒られないかな…」
「ちゃんと片付けすれば平気平気」

そう言いながら、片手に携えたバケツを目線の高さまで持ち上げる。

「私は明日、朝から任務なんだけど…」
「夜更かしは若者の特権だろ」
「諦めろ、夏油。五条は言い出したら聞かないぞ」

遠慮なく欠伸をしながら、硝子がそう返した。
相変わらずやる気がない。

「硝子が付き合ってるのが意外だね…」
が居なきゃ付き合わねーよ、こんなバカみたいなこと」
「相変わらず辛辣ー」
「ごめんね硝子…」

謝ってみたが、もなんでこんな展開になったのかまったくわかっていない。

「ま、いいよ。どうせ思いつき即実行のいつものやつでしょ。眠くなる前にさっさと花火しよう。五条ー、バケツに水を用意しろー」
「おー」

硝子の雑な結論の出し方は、こういうとき頼もしい。
困惑したままの夏油を部屋から引っ張り出し、揃って庭に出る。
高専は東京とは思えない山の中にあるので、夜の庭はかなり暗い。建物から離れたら何も見えなくなりそうだった。

「いつ買ったの、この花火?」
「去年…?」
「湿気てない?」
「大丈夫だろ。花火は10年保つって聞いたことある。…うん、大丈夫そう」
「悟、それロケット花火だよ。やめな?」

五条が手に取った先端に小さな筒のついた花火を見て、夏油が口を挟む。

「ダメ?」
「ダメ。さすがに寮の庭じゃ狭いよ」

ロケット花火の威力は物によってまちまちだろうが、どこに飛んでいくかわからない。寮の庭の向こう側は森だが、拾いに行くのも大変だ。
仕方ないな、とロケット花火は傍に避けて、他の花火を見る。こういうセットに入っているのは珍しいものを見つけて、五条はそれを手に取った。

ー、見て見てー」
「なに?………ギャー!? なにこれキモい!」
「あれ、は鼠花火知らないのか」

急に足元まで回転しながら近づいて来た花火に、は可愛げのない悲鳴を上げる。

「硝子、硝子助けて!」
「見事に鼠花火の軌道上を逃げるとか面白いよねアンタって」
「助ける気ゼロ!!」

要するに横に逸れろと言われているのだが、混乱しているにその意図は伝わらない。

「呪霊を踏み潰して祓うような奴が、なんでそんな鼠花火怖がってんの?」
「怖いなら踏み潰しなよ」
「やだよサンダル焦げるじゃん!」
「そこかよ」

数十秒後、鼠花火が燃え尽きてほっと胸を撫で下ろしたは、視界の端にかなりの光量を確認して嫌な予感がした。視線を向けると、両手にそれぞれ5本ずつ、点火済みの花火を持った五条が近づいて来たのを確認してぎょっと目を瞠る。

「…………なに10本も花火持ってんのバカなの!? 花火持ったまんま追いかけて来んな!」
「呪霊に追いかけられてもそんな顔しねぇだろ、って変な奴だよなー」

今度はふたりの追いかけっこが始まった。
ふたりとも足が速いので、風圧で花火の火が消えるんじゃないかなと、どうでも良いことを考えながら夏油と硝子は他人事の顔でふたりを眺める。

「悟ー、花火は人に向けるなー。小学生みたいな嫌がらせやめなよー」
「アイツらほんとに一年の頃と変わんねーのな」

小学生男児が好きな女の子にイタズラして怒らせているのと大差ない光景だ。色々と彼らを取り巻く環境は目まぐるしく変わってきているのに、そこだけはまったく変わっていない。

「ふたりで線香花火でもやってりゃ、それっぽい雰囲気にくらいなっただろ」
「なるかな…」
「…ならないかぁ」
「悟とはあのくらいがちょうど良いのかもしれないね」

そう返した夏油の表情には、普段の少し困ったような笑みは無かった。
どこか仄暗い色、のようなものが見え隠れするその奇妙な表情に、硝子は訝しげに首を傾ける。

「……夏油?」
「ん? なんだい、硝子」

応えた彼の反応は、至って普段通りのものだった。

「……いや。なんでもないよ」

気のせいだろうと結論付けて、硝子は持ってきていたタバコに火を付ける。
星が煌々と輝く深い闇空に向けて、紫煙を吐き出した。


+++


一通り花火を楽しんだ後は、再び夏油の部屋に押し掛けて、飲み物片手にどうでも良い話に花を咲かせてる。
その空気に懐かしさを覚えながら、椅子代わりにベッドに腰掛けたと硝子は、うとうとと船を漕ぐ。
やがてふたりとも重なり合うようにして倒れ込む。それに気付いた夏油が、少し困惑気味に口を開いた。

「悟」
「ん?」
「……女性陣、爆睡してるんだけど」

ふたりが視線を向けると、いつの間にかと硝子は仲良くベッドを占領して寝入っていた。
仲が良くて大変結構だが、揃って無遠慮である。せめて一言くらい声を発してから寝て欲しい。

「仮にも男の部屋で爆睡って…」
「傑、掛け布団出して。硝子は大人しく寝てるけどが思ったより寝相悪い。さすがに目の毒だコレ」
「はいはい…」

無防備に眠るふたりに、五条は受け取った掛け布団を掛ける。まったく反応を返さないふたりに、さすがに呆れながら。

「…無駄に警戒されるのもアレだけど、無警戒なのも納得いかねぇな…」
なら寝てても攻撃して来そうだけどね」
「え。怖い」

口より先に手足が出るタイプの女なので、有り得ないとは言い切れない辺りが怖い。
イタズラでもしようものなら、速攻で跳ね起きて蹴り飛ばされそうだ。

「…….な、傑」
「ん?」
「今日なんで付き合ってくれたの?」
「え?」
「やつれた表情(かお)。…本当にただの夏バテか? 具合悪いんじゃねぇの?」
「散々遊んでから聞く? …心配ないよ、夏バテで食欲があまりないだけさ」

六眼にそんな能力は無いのだが、本音を見透かされるような、そんな感覚になって夏油は視線を逸らした。

「…明日の任務、俺が代わりに行くか?」
「悟は今日も遅くまで任務だったんだろう? 気持ちだけ貰っておくよ」
「……だったらに頼むとか。等級は足りなくてもの実力なら、」
に会いたくて無理して帰って来たんだろう? そんな気を回さなくて良いから、明日はデートでもして来なよ」
「な、ん」

予想外の返答に、五条は目を瞠って硬直する。
相変わらずの反応に、どうして突然花火大会が開催されたのかを察して、夏油は苦笑した。

「…夜にと二人きりになって、どうして良いかわからなくなったから私と硝子を巻き込んだんだろ。まったく、悟がこんなに奥手とは意外だったよ」
「そんなんじゃねーよ!」
が特別なんだよね、はいはい」
「話聞け!」

大声を上げてから、ハッと気付いたように五条は自分の口を押さえた。視線を向けた先で、寝入っていると硝子は身じろぎひとつしない。

「………まあ、うん。違くない。手、出しそうになって、正直慌てた」

別に何かしようと思って部屋に行ったわけじゃない。詰めてしまった距離に、咄嗟に反応しかけた。寸前で踏みとどまった自分は偉いと思うと、もそもそ呟いた五条に、夏油は苦笑する。

「好きな子を前したら触りたくなるのも普通じゃない?」
「そ!? …それ、は、うん…否定しねぇ、けど」
「…まあ、でも。誰だって、大事な相手に嫌われたり失望されたりしたくないし、格好悪い姿は見せたくないものだよ。それは悟がを大事にしたい、っていう強い意志だろ。間違ってはいないよ」

まさか花火大会が開催されるとは思わなかったけど、と笑う夏油に、五条は少し拗ねたように目を細めた。

「オマエらと遊びたかったのも本音だよ。に言われて気付いた。全然、オマエと話せてない」
「………仕方ないさ。今年の夏は、呪霊の発生が多いからね」
「それでも、俺はオマエらと一緒にいる時間は大事にしたい」
「……」

どう返していいのかわからなくなって、夏油は口を噤んだ。
そんな彼の変化に、五条は気付いていない。

「…なぁ、傑。俺達みたいな持ってる側の人間は、持っていない側の人間を守るべきだ、って話だけど。納得してないけど、理解はしてるんだ」
「……悟、その話は」
「俺やは、人間としてはどこか外れてる。壊すことに特化した力は、誰かを助けることはできても、本当の意味で弱い立場の人間に寄り添うことはできない」

五条もも、やはりどこかで「弱い奴の事情なんて知るかよ」と思っている。この思考は変えられないだろう。力を制限するのはストレスが溜まる。

「…だからさ、俺やみたいな外れ者は、弱い立場の奴らに寄り添えるオマエみたいな奴の理想を叶える手足になれれば、真っ当な人間になれるような気がするんだ」
「……悟」
「硝子は怪我人治せるし、俺ら四人が揃ってれば出来ないことなんか無いと思わねぇ? 卒業した後もさ」
「………」

夢、のような未来予想図。
だが、彼は実現出来ると疑っていないのだろう。僅かに仄暗い感情が顔を出したが、夏油はなんとかそれを飲み込んだ。

「卒業した後も君たちの面倒を見させる気かい?」
「なんだよ良いだろそれくらい。俺たちで呪術界に伝説を打ち立ててやろーぜ」
「ははっ…そうだね。私たち四人なら…なんでも、出来るかも知れない」

少しだけ笑って、夏油は「でもその前に、」と話を切り替えた。

「まずは目先の目標を片付けてからだね。私は明日の任務。悟は明日、をデートにでも誘っていい加減交際を申し込むと良い」
「は!? え!?」
「交際を申し込む前に、うっかり手を出したりしたら目も当てられない。君たちが気まずくなったら私たちも困るよ」
「そんなん俺だって困るわ!」
「順序って大事だよ」
「わかってるけども!」

結局続く言葉を見つけられず、五条は力無く床に転がった。

「……もう寝る……」
「そうしてくれ。明日も早いからね」

体を痛めるから布団敷きなよ、と夏油が予備の布団を引っ張り出す。
緩慢な動きで寝床を適当に整え、電気を落としてから改めてふたりは横になる。

「おやすみ」
「ああ、おやすみ」





――これが、運命の分かれ道。
この日、この時間に、もっと別の行動をとっていたなら、違う未来が見られだろうか。


+++


どこかで、いつかこうなることを予想して来たのかも知れない。
そう思える程度には、の心情は異常なまでに静かだった。

――特級呪術師、夏油傑が集落の非術師112名を殺害し逃亡。呪術規定に基づき、呪詛師と認定。処刑対象とする。

その報が高専に舞い込んで来た後は、高専中が騒然とした。
夜蛾ですら動揺を隠せないこの状況で、比較的冷静だったのはだけだったのかもしれない。
五条はその話を聞いて飛び出して行ったし、硝子も気がついたらいなくなっていた。夏油を探しに行ったのだろうか。硝子に関しては、少し意外だった。

はひとり、教室の窓のヘリに腰掛けて思案する。耳に届く喧騒は彼女にとって雑音でしか無いが、僅かなりとも情報を拾うのに一役買っていた。
――夏油は特級呪術師。しかも呪霊操術の使い手だ、手数が多い。並の術師では相手にもならないだろうな、と冷静に考えてしまった自分の思考回路が嫌になる。


「先生」

掛けられた声に顔を上げれば、夜蛾が少し驚いたような表情でを見て、教室に足を踏み入れる。

「…オマエは行かないのか?」
「行きませんよ。行ってどうするんですか、私に夏油を殺せとでも?」

一瞬、夜蛾は言葉を詰まらせる。
その様子を見て、は視線を伏せた。

「すみません。言い過ぎました」
「…いや。悪かった」
「…まあ、でも。五条にやらせるくらいなら、私がやりますよ」

「手数の多さや戦略の広さでは夏油の方が上ですけど。近接戦なら、…壊すことに関してなら、私の方が上です。やれます」
「…オマエたちにそんなことはさせられん。考えなくて良い」

そんなことを、夜蛾が望むわけがないことはにもわかっている。
それでも、自分はできるだろうなとも、思う。

「…先生」
「ん?」
「…普通、この場合って、私たちみたいに長く一緒に過ごして来た立場の人間は、夏油のことを心配しますよね」
「…そうだな」
「私は、…去って行った夏油より、残された五条の心配をしました」

覚悟を決めた相手に、言葉なんて今更届かない。
早々に諦めたは高専に残ったが、飛び出していった五条は違う。五条にとっての夏油の存在の比重は大きい。夏油が変わってしまったように、五条の中の何かが変わってしまうのではないか――そんなことを咄嗟に案じた時点で、の中の答えは明白だった。

「その時点で、私が夏油の心配をする権利は無いです。我ながら薄情ですね」
「……」

級友として、信頼はあった。情もあった。大人になっても四人で連めたら、きっと楽しかっただろうと夢想できる程度には、も夏油のことは好きだった。
比重の差だ。の中では、五条の方が比重が大きかった。だから夏油への情は切り捨てる。それだけの話だ。情が薄いのはきっと、生まれつきだろうと自嘲する。

「…こうなる前に止めてやれなかった時点で、心配する権利なんて誰にも無いのかも知れん」
「……」
「オマエたちには何の責任も無い」

責任、という言葉に思うところはあったが、は口を噤んだ。何か言えた立場ではないし、言ったところで夜蛾の心が軽くなることはないだろう。

「今日はもう寮に戻りなさい。あとのことは、我々大人がなんとかすべき問題だ」
「……」

くしゃりと頭を撫でられ、は無言で小さく頷いた。
自分はこんなことを言える大人になれるだろうかと、そんなどうでも良いことを考えながら。



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――責任が無い、なんて言葉に納得出来るなら、あの時駆け出したりはしないだろう。
戻って来た後の五条は、自室に篭って出て来ない。静かなので中で暴れていることはないだろうし、誰も彼を無理に部屋から出そうとはしなかった。
普段なら「放っときゃ勝手に出てくるだろ」とでも言いそうな硝子すら、ノーコメントだ。さすがの彼女も、多少は動揺しているのだろう。
大人たちは諸々に奔走し、強制的に寮に戻された生徒たちは不安そうに暫く共有スペースに居たが、時間も遅くなれば各々の部屋に戻っていく。
時計の針が深夜…というより明け方に近い時刻を指す頃には、共有スペースに残ったのはひとりだけになっていた。
薄暗い空間でひとり、クッションを抱えて静かに蹲る。
眠いはずなのに意識は眠ることを拒否していて、かと言って特に何かを思考することもなく、カチカチと鳴り響く秒針の音をただ、聴いていた。



困惑しているような、怒っているような、そんな声音で呼ばれてはゆっくりと顔を上げた。
声音の印象そのままの表情で目の前に立っている相手に、軽く手を挙げて挨拶する。

「おはよう」
「まだ夜中だよ。いつまで起きてんだ、寝ろよ」
「お前、人のこと言えないだろ」

夜中に目が覚めて部屋から出て来た、と言う顔では無い。
じっと見上げてくるに、五条は呆れたように目を細めた。

「…オマエ、俺が部屋から出て来るの待ってたの?」
「……」

無言は肯定である。
睨み付けるような強い視線を受けて、五条は小さく溜め息を吐き出した。

「…お節介…」
「うっせェわ。たまたまだよ自惚れんな」

否定し切れていない辺り、案外の反応も素直だった。
不機嫌そうな返しを照れ隠しと受け取って、の頭を軽くくしゃりと撫でてから、五条は彼女の隣に腰を下ろした。

「…部屋に閉じこもって泣いてるとでも思った?」
「…思ってない。寧ろ泣けた方がまだ健全だっただろ」
「だよね」

悲しい、悔しい、と。そう叫んで泣けるなら、その方が人間としては健全だ。
だけど、残念ながらそんな真っ当な感性は持ち合わせていない。お互いに。

「…私はさ。お前らほど、ショック受けてないんだよね」

敢えて主語を省いたが、何のことを示しているかは明白だった。
対する五条は、沈黙で言葉の先を促す。

「びっくりしたし、気にしないでいるのは無理なんだけど、…納得もしたというか。その、…なんかゴメン」
「…一番近くにいたつもりだった俺が、何も気付けなかったんだから、謝られるの変だろ」
「…そっか。…その、…話は、出来た?」
「喧嘩すらさせてもらえなかったよ。殺したければ殺せ、それには意味がある、だってさ」
「覚悟決めた奴に今更言葉は届かねェわな」
「まったくだ」

非術師を集落ごと皆殺しにした。その時点でもう、彼は後戻りは出来なかったし、するつもりも無かったはずだ。硝子や五条の前に現れたのは、彼なりの最後のけじめだったのだろう。

「…アイツは、呪術師やっていくには、真っ当過ぎたんだ」
「…そうだね。お前は、…私も、術師としては正しいけど、人間としてはイカれてる。あいつは、根っこが真っ当のまんまだった」

良い奴ほど先に逝くし、真っ当な奴ほど道を踏み外す。予兆はあったはずだ。だけど、誰もが気付かなかった。勝手な思い込みで見落とした。同じものを、見ていたつもりで見えていなかったのだと、今なら理解出来る。

「…それなのに呪詛師とかさぁ…自分からしんどい道選ぶなよ、って」
「変なところがクソ真面目なんだろうねぇ…」

自分を騙せなくなったんだろうな、と。どこか一部分だけ冷めた思考がそう結論付ける。
呪霊操術という術式も、その要因のひとつだったのかもしれない。腹の中に溜め込んだ呪いはいつしか、揺れる意思を侵食し、別の呪いとして彼の中に巣食っていたのかもしれない。
すべては憶測の域を出ない。確かめる術もない。彼はもう、対話を望んでいないのだから。

「…大して実力のない術師だったら、ああならなかったんだろうな」
「…たぶん、それは違うと思うよ」
「そう?」
「うん。あいつの苦しみは真っ当で、きっと誰にでも起こるかもしれないことで、…私たちが、どうかしてるんだよ」
「…そっか。俺たちが、どうかしてるのか」

ポツリと吐き出された言葉には、後には続かない。
ふたりの間には、沈黙が流れる。心地良さはないが、気まずさもない。そんな沈黙が暫く続き、先に口を開いたのは五条だった。


「なに、………」

掠めるように唇に触れた熱に、言葉を奪われ、思考が止まる。
至近距離にある端正な顔を、は呆然と見上げた。ゆっくりと瞬きをする。言葉は何も、出て来ない。ただ、手を握り締められて無意識に肩が跳ねた。

「…は、居なくなったりしないよな」
「……」
「俺たち、付き合おうか」

――最悪だ、と。思わず溢れそうになった声を、は咄嗟に飲み込んだ。
いつもの軽口のような響きの中に、どこか縋るような色が混じっていた。好意を伝える言葉より先に出たその確認の言葉と、手を握る指先に籠る力の強さに、見えない首枷をちらつかされている気分になる。
当人も自覚出来ていない、奥底に燻る狂気じみた何か。これを引き起こしたであろう、自分たちに背を向けた級友に、は初めて恨みを抱いた。

「…いいよ」

最悪だと思いながら、は受け入れた。
それ以外の選択肢があっただろうか。
信頼がある。情がある。だからきっと大丈夫だと、自分に言い聞かせる。



――たとえこの先、胸の奥で小さく燻るこれが、『恋』に成れなくても。









To be continued?

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