※注意※ 10年後設定で、ボスツナ&婚約者ヒロインです。



類稀な美貌を持ち、その能力も一級品。
普通の人間から見れば、超能力にでも該当するような特殊な能力の保有者。
しかしその能力を除いたとしても、この男は非常に優秀だった。
…その性格以外は。



「……」

彼女――=フォンティーナは、眼前の男を見上げた。
特徴的な髪型と左右色違いの瞳の、酷く整った顔立ちの青年。
その男はに拳銃を突きつけ、片手にこれ見よがしにロープを携えていた。


「レディ・。一緒に来て頂きましょう」


無駄に、笑顔で。



僕らが見守る未来




「お前何やってんの!?」
「何って。ボスの命令に忠実に従っただけですが?」
「どこが!? なんでが縛られてんの!?」
「普通にお連れしてもつまらないので、奇をてらってみました」
「要らんサプライズすんなーーーっ!?」

目の前で言い合うふたりの青年を交互に見て、は深々とため息を吐いた。
拳銃を突きつけられた時点で、何か下らないことを考えているとは思ってはいたが。
……まさか縛られた上にヘリで運ばれるとは、思いもしなかっただった。
まったくもってこの男――ボンゴレ10代目霧の守護者は、何を考えているのかよくわからない。

「…あの、ツナ。これはどういう…」
「ごめん、本当にごめん。骸に頼んだオレが馬鹿だった」
「頼んでおいてなんですか。職務は全うしてますよ失礼な」
「やり方! やり方の問題だからこれ! 仮にもオレの婚約者だよ!?」
「知ってますよそんなこと。
 むしろいい加減籍入れたらどうですか、子作りは早い方が母体に負担が掛かりませんし」
「なっ!? ちょ、骸っ、お前何言ってんの!?」
「24にもなってそんなことに動揺しないでください、ボス」

いけしゃあしゃあと言い放って、骸はわざとらしく溜め息を吐いた。
確実に相手を怒らせるタイミングと仕草。絶対計算してやってるんだろうな、とは人事のように考える。

「まったく、やってられませんね。
 彼女は女盛りの25ですよ? 今結婚しないでいつするんです」
「余計なお世話だよッ!!」
「24にもなって婚約者の手も握れないようでは困りますね、彼女が」
「手くらい握れるよ! なに、馬鹿にしてる!?」
「はい。思いっきり」

骸が笑顔で応えた瞬間、ガッとツナは骸の胸ぐらを掴んだ。
かつての彼らの関係からすれば信じられない光景だが、今ではこれが日常茶飯事だ。

「…あのさぁ、骸? もうオレはどこに突っ込んで良いのかわかんないんだけど?
 なに、お前いったい何がしたいの? オレに喧嘩売りに来たの? なぁ、そうだったら殴っても良い?」
「クフフ、いやですねぇボス。僕に殴られて悦ぶような性癖はありません」
「誰もそんなこと言ってないし!?」

そこでなんで楽しそうに笑うのお前!、と。
胸ぐらを掴んだまま怒鳴るツナに対して、骸は余裕の微笑を崩さない。
既に見慣れた感はあるが、やはり奇妙なその光景に、はかくんと首を傾げた。

「…骸はいったい、何をしたいのかしら」
「単にボスで遊んでるだけだと思う…」
「あら? 居たのね、クローム」
「はい。縄、解きますね」

近づいてきた気配にが首を動かせば、背後から彼女と同世代の女性が姿を現した。
もうひとりの霧の守護者、という特殊な存在である彼女、呼び名はクローム髑髏。本名は凪という。

「まったく…やんちゃが過ぎるのも困りものね」
「ごめんなさい。でも、骸様はボスと様がお気に入りなの」
「そうみたいだね…まぁ、良いけど。
 …で! 喧嘩は後にしてちょうだい、ふたりとも! というかここはどこなの?」

ようやく拘束から解放されたは、声を張り上げた。
その問いに、ツナと骸は一瞬動きを止め、彼女の方を振り向く。

「ごめん、言い忘れてた」
「ここは日本ですよ、さん」
「…日本…え!? 日本!?」

普段は何が起きようと冷静さを失わないだが、さすがにこれには驚いた。
随分長い時間を掛けて連れてこられたとは思っていたが、まさか目的地が日本だったとは!

「仕事で日本に来たんだけどね。なんか並盛中の同窓会があるんだって」
「…は?」
「折角だからも呼ぼう、って話になって」
「で、急遽僕がお迎えに上がりました。
 ボスはおろか守護者のほぼ全員を日本に呼び寄せるなんて、うちのボスは前代未聞の大馬鹿者ですね」
「…じゃあお前帰って良いよ」
「嫌ですよ。僕は日本観光するんです」
「じゃあ文句言わずに…って。観光!? 観光して帰る気だったの!?」

『イタリアの本部を空けるなんて』という趣旨の言葉を口にした同じ口で、遊ぶ気満々の宣言だった。
思わず掴んでいた胸ぐらを離して、ツナはゆっくりと瞬きをする。
それに対して返されたのは、それはもう胡散臭いほど晴れやかな笑顔だ。

「当たり前じゃないですか。何の為に山のような仕事を片付けて来たと思っているんです。
 せっかくの日本ですよ、楽しんで帰らなくては古き良きこの島国に失礼でしょう?」
「骸…あんた、本っ当に日本好きよね…」
「ええ、とっても。さん、一緒に古都・京都巡りなど如何ですか?」
「…どさくさに紛れてを口説くの、やめてくれない?」
「ボス、絞まってます。さすがの僕もこれは死にます」

首が絞まって死にかけてる人間とは思えない、呑気な口調だった。
呆れたように溜め息を吐いて、ツナは骸から手を離す。

「もう、観光だろうがなんだろうが好きにしろよ。
 クローム。骸が馬鹿やらないように見張ってて、何かあったら連絡して」
「はい、ボス」
「行こう、

クロームが小さく頷くのを確認すると、ツナはの手を取った。
そのままどこかへ連れていこうと歩き出したので、慌てては口を開く。

「ちょっと待って、ツナ」
「ごめん、あんまり時間ないんだ。着替えとかなら勝手だけど、こっちで一通り揃」
「そうじゃなくて」

いったい、突然どうしたの。あなたらしくもない、と。
困惑気味にが言うと、ツナはぴたりと足を止めた。

「…折角、日本に帰ってきたから、さ」
「?」
「母さんに報告しておこうと思って。手紙じゃなんだし。…オレ達の事」
「……」

振り返らずに言われた言葉に、はゆっくりと瞬きをする。
言われた言葉の意味を理解するのに数秒掛かり、ようやくツナの意図に気付いて口を開いた。

「…同窓会より、そっちが本音?」
「う…」
「…あなたって、本当に、」

不器用と言うか、馬鹿というか。
そんな言葉を飲み込んで、はゆるりと微笑む。
不器用でも馬鹿でも、真っ直ぐなツナの感情はにとって、とても愛おしいものだった。

「…わかった。奈々さんに『息子さんを私にください』って言えば良いのね」
「は? ちょ、違! 逆! それ逆だから! 待ってお願いだからそれは間違っても言わないでッ!?」
「でも前にドラマで見たよ」
「だから逆なの! 女の人は言わないのそれは!!
 ああもう、なんでそういう器用な勘違いが出来るのかな…!」

冗談でもなんでもなく、本気で首を傾げるに、ツナは頭痛を抑えるように頭を抱える。
未だ日本文化に疎いとはいえ、少なくとも5年以上は日本で生活したというのに。
確実にただの天然だ、と呻くツナを眺めながら、骸とクロームは顔を見合わせた。

「やれやれ…まるで子供の恋愛ですね、あれは」
「…でも骸様、楽しそう」
「楽しいですよ? 彼らは僕のお気に入りですからね」

そう言って微笑うと、骸は視線をふたりの方に向ける。
二十代も半ばという年頃だというのに、未だに中学生の恋愛から抜けきっていない。
そんなふたりをもどかしいとは思うが、見ていて飽きないというのも彼の本音だった。

「彼らが生きている間くらいなら、もう一度この世界で生きるのも悪くないと。
 そう思えるくらいには、この日常を楽しんでいるのです。君もそうでしょう、クローム?」
「…はい、骸様」

そう応えて頷いたクロームの表情もまた、柔らかな微笑だった。
そんな彼女の変化に、骸は改めて感心したようにツナとへ視線を向ける。
あのふたり、一見すればただの甘ちゃんと天然ボケだが、人心を動かすことに関しては、恐らく右に出る者は居ない。

「ボス、それでは僕達は行きますが」
「あ、うん。わざわざ悪かったね、ふたりとも」
「いえいえ、普段の仕事に比べれば楽なものですよ」

意図の読みにくい、常の笑顔で応えてから、何かを思いついたように骸は「あ」と呟いた。
首を傾げる面々の中、彼は確実に愉快犯であろう爆弾を投下する。

「ああ、そうだ。さん似のお嬢さんが生まれたら是非、僕に下さいねお義父さん」
「は?」

あんたいきなり何言ってるの、と。
が言い返すより先に、ツナが口を開いた。

「なんでお前みたいなのに嫁に出さなきゃいけないんだよ!?」
「良いじゃないですか、さんは譲ったんですから」
「良くないよ! 絶対嫌だ!」
「そういう父親は年頃になると娘に煙たがられるんですよ、お義父さん」
「そんなわけあるか! オレとの娘なら素直で良い子になるよ! っていうかお義父さんって呼ぶな!!」

再び骸に詰め寄るツナと、至極楽しそうに笑う骸。
突っ込みたいところは多々あるが、とりあえずは会話の内容がおかしい。

「…生まれてもいない子供の話に、なんでそこまで熱くなるのあのふたり…」
「でも、骸様は半分くらい本気」
「…そうなの?」

嫌そうにが顔をしかめると、クロームはただこくりと頷いた。
…こんな姿を見てもなお、彼を「骸様」と呼んで慕うクロームは、割と大物かもしれない。

「……先が思いやられるわ」

…絶対娘は産むまい。
遂には実力行使に出たふたりを眺めつつ、は深々とため息を吐いた。






基本的に、人の話を聞かないやつが多過ぎる。



END

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