※注意※10年後設定で、ボスツナ&婚約者ヒロインです。




……
………なんでだ。なんでこうなった。

必死になってとにかく走りながら、心の中で悪態を吐いた。

「しっかり走らないと担ぎますよ、ボス」
「うるさいよ!! 誰のせいだ!!」
「鈍くさいボスのせいです」
「ぐっ…」
「…いい加減黙らないと撃つわよ、ふたりとも」
「「ごめんなさい」」

相変わらず悪意はないが容赦もない彼女の一言に、オレ達は反射的に謝った。



恋路ロマネスク




「…しかし、死ぬ気モードになれないボスがここまで役立たずとは思いませんでした」
「…悪かったな!!」
「一応怪我ひとつしてないから良いんじゃないかしら」
「…それ誉めてないよね?」

どこまでも容赦のないふたりに、ちょっと泣きたくなった。
必死に走るオレの両隣で併走するのは、左右色違いの瞳を持つ長身の男。
そして、華奢な体躯の女性。
説明するまでもないが、霧の守護者,六道骸と、ボンゴレ十代目夫人(予定),=フォンティーナ。
…なんとも奇妙な組み合わせだ。

「先生はいません」
「死ぬ気丸は忘れてきました」

グサリと言葉の刃が突き刺さる幻が見えそうだ。
骸は妙に楽しそうだし、は相変わらず真面目だし。
ちょっと傷ついたオレに、更にふたりは追い打ちを掛けてきた。

「「このダメツナ」」
「うわ懐かしいなそのフレーズ! っていうかまで酷いし!」

めっきり呼ばれなくなった不名誉な愛称。
骸に呼ばれれば腹立つし、に呼ばれたら情けないことこの上ない。

「…もう良いよどうせオレは何年経ってもダメツナだよ!」
「君は実にいじり甲斐のある人ですねぇ」
「笑顔で何失礼なこと言ってんのお前!? っていうかフォローなし!?」

期待しちゃいないけどさ! なんだよこいつムカつく!!

「…よく漫才しがら走れるわね?」
「「息一つ乱してない人に言われたくない」」
「これでも結構疲れてるのに」

絶対嘘だ。
どう見ても余裕の表情だ。

「おや、疲れてるんですか? 歳ですかね」
「……」

またこいつは余計なことを!
顔を青くするオレの隣で、殺気が膨れ上がった。
瞬間、カチリと小さな異音が耳に届く。

「ちょ、待っ…?!」

制止の声とほぼ同時に、響く発砲音。
思わず、オレ達は硬直した。

「…ちっ…何故避ける」
「避けなきゃ死んでましたよ!! なんですかその舌打ち!?」
「ゴキブリ並の生命力なんだから、死なないわよ」
「あなたに撃たれたら死にますから!!」
「私を誰だと思ってるの? 急所撃たなきゃ死なないわよ」
「怖いことを真顔で言わないでください!」
「笑顔で言った方が怖いと思う」
「なんでもいいけどオレを間に挟んで喧嘩すんな」

とりあえず、耳元でうるさい。
ぐいっ、と両手を使ってふたりを引き離す。
…まだ睨み合ってたが。

「もー…と骸は仲悪過ぎ!」
「「仲良くする理由がない」」
「もうちょっとオブラートに包もうよ」

きっぱりはっきり言い過ぎだ。
冗談であることを期待してるが、真顔な辺り相当怪しい。

「君に近づくには、下手な守護者より彼女の方が邪魔なんですよ」
「あんたなんか、ツナに指一本髪の毛一筋触らせないわよ」
「気持ち悪いからやめてくれないその大事な部分が省かれた会話」

真顔で何を言いやがりますかあんたらは。
ぱっと聞いた感じ、すこぶる気持ち悪い。

「…ってか、骸いい加減しつこい」
「僕がそう簡単に君を諦めると思いますか?」
「だからやめろよ大事な部分を省くのは」

こいつ、真顔だけどわかってて言ってるんじゃなかろうか。

「安心して、ツナ。あなたは私が24時間体制で護るから。おはようからおやすみまで」
「なにそのCMみたいなフレーズ。が言うと冗談に聞こえないよ」

ため息混じりに返すと、彼女はきょとんとしながら首を傾げた。

「私はいつでも本気よ」
「…ですよねー…」

少なくとも、がこういう会話で冗談を言ったことはない。
良くも悪くも、彼女は真面目だ。ズレてはいるが。
思わず苦笑したオレに、はますます不思議そうに首を傾げる。
この仕草だけは、何年経っても幼い。
微笑ましい気分になりながら、笑われた理由を考えているらしいを眺めていた、瞬間。

――ぞわりと、背筋に悪寒がはしった。

「…ッ、――骸!!」
「!!」

最後まで呼び終わる前に、骸は動いた。
オレの前に立ち、武器の柄を回転させ、飛んできた鉛玉を弾く。
その間、僅か1秒足らず。
その際に、何か幻覚を作用させたようだ。相変わらず、抜け目無い。

「…問答無用で撃ってくるとは…間違いなく、ボスがボンゴレ10代目だとわかってますね」
「まあ…仕方ないわよね…」

割と呑気に、は銃のリミッターを外しながらため息を吐いた。
そして、ふたりの視線がオレの方へ向けられる。

「「…呼ばれてうっかり振り返ったし…」」
「だからごめんってば!! 済んだことは置いておこうよ!?」

なんでこういう時だけ息ぴったりかなこのふたりは!!
そうですよ、「ボンゴレ10代目」ってカマ掛けられて振り返ったのはオレですよ! 悪かったな!!
…なんか泣けてきた。

「…まぁ、それは置いておくわ。で、幻覚の作用は?」
「咄嗟だったもので。…鉛玉が倍増する程度ですかね。
 せいぜい半数、と言ったところでしょうか」

つまり、幻覚の鉛玉で攻撃し返したわけだ。
…えげつないとも思うが、助かってるのも事実なので何も言えないけど。

「追いつかれたのはさんのせいですね」
「元を正せば骸のせいよ。…ノルマはひとり頭30人、いけるわね?」
「無論です。――ボス、ご命令を?」
「……」

ふたりの視線が、再びオレに戻された。
返す答えを予想していながら、こうやって聞くのは性格悪いと思う。
だけど問われたら、答えないわけのいはいかない。
…どう足掻こうと、今のオレはボンゴレ10代目なのだから。

「迎撃を許可する。…やり過ぎんなよ!!」
「そういうことは、」
「相手に言って頂きたいですね!」

各々の武器を手に、迫る敵へと向かっていくふたり。
妙に楽しそうなのは気のせいだろうか。…どうか気のせいでありますように。


――が、しかし。
数分後、オレはそれが気のせいではなかったことに気付き…
………迎撃を命じたことを、心の底から後悔した。


+++


「…で、誰が暴れて来いと言った? この3バカトリオ」

デスクに頬杖をつきながら、目を眇めてオレ達三人を見るリボーン。
…相変わらず、オレ達はこいつには頭が上がらない。骸は知らないが。

「こうならねーようにお前を行かせたんだがな、? 一緒に暴れてどうする」
「…ごめんなさい」
「だが。ツナが一番ダメだな。部下の失態は上の責任だぞ」
「………一応返すけどは部下じゃないよ」
「なお悪いな」
「ぅぐっ…」

ぐうの音も出ないとはこのことだ。
確かに、部下ではないを巻き込まざるを得なかったのはオレの失態だ。
とはいえ。こっちの弁解だって聞いて欲しい。
…………だって。骸とふたりで仕事するのなんか嫌なんだよ。色んな意味で心配になる。

「まあまあ、終わりよければ全てよしですよ。
 お説教はこのくらいにしてあげてください、先生」
「「「何自分は無関係みたいな顔してんだ」」」
「おやおや」

こっちの気も知らないで、呑気な奴だと思う。
…いや、違うか。骸は常に愉快犯。わかっていて言っているに違いない。腹立たしい。

「ではどうしましょう?
 オトシマエに、指でも詰めますか?」
「ええっ!?」
「……それがリボーンの指示なら」
「何言ってんだよ!? 骸の指はどうでも良いけど!」
「なんですかそれ。泣きますよ」
「うっさい泣いてろ。とにかく!」

がしっ、との両手を掴む。
細くて長めで、白い手。
傷が付くだけでも嫌なのに、指を詰める? 冗談じゃない。

はダメ! 綺麗な手なんだから!」
「………あの、ツナ」
「なに?」
「……恥ずかしい」
「え」

何が、と。
顔を真っ赤にして俯いた彼女に聞き返そうとしつ、ふと気づく。
…オレ、結構恥ずかしいこと言った?

「…ああああああのそのっ、他意はなくて! ごく素直な感想と言うか…
 いやいや! 違わないけどそうじゃなくて…っ」
「う、うん…? あの、手…」
「手!? …あっ、ごめん!!」

握り締めたままだった手を、慌てて離す。
慌て過ぎだろオレ…! 24にもなって何やってんだ!

「中学生かお前らは」
「まったく進展がありませんね」
「うるさいよ! こっち見んなッ!!」

心底呆れたように言われて、反射的に怒鳴り返す。
自分でも24になってまでこれはどうかと思うよ、思うけど仕方ないだろ!!

「リボーン」
「ん?」
「ツナがダメって言ったから、指詰めはなし。他のにして」
「他のもダメ!」

どうしてこの人は、自分を大事にしようとしないのか!
こっちがいつもいつも、…そう、いつも!
どれだけ神経すり減らして、胃痛に悩んでいるのか想像もしていないんだろう。

「どうして? けじめは大事よ」

当然、なんで怒られているのかわかってもいない彼女は、きょとんと首を傾げる。
ああ、腹立つ…! なんでこうも、割と素直に伝えてるつもりなのに、彼女には伝わらないんだ。

やきもきしているオレと、まったくわかっていないを交互に見やって、リボーンは小さく笑った。
何もかもお見通しのように。…こいつがこういう奴だとわかっちゃいるが、やっぱり何かムカつく。

「安心しろ。ボンゴレに不利益にならないことで、大事な守護者と次期10代目夫人を罰したりはしねーぞ」
「…いや、骸は良いよ」
「扱いが酷いですよ、ボス」
「自分の日頃の行いを振り返れ」

笑顔で「酷い」とか言われても胡散臭い。
…骸が胡散臭いのは今に始まったことじゃないけど。

「…ったく。いつまで経っても馬鹿だなこいつら」
「あら、私は馬鹿の方が好きよ?」
「物好きな奴だな。その理由は?」

からかうように目を眇めて、リボーンはニヤリと口の端を持ち上げて笑う。
それに対して、はあっさり即答した。





「退屈しなくて」





裏も含みもない笑顔で吐き出された言葉。
…まあ、悪気は無いんだろうなぁ…これ…。






君が笑顔なら、それが僕の生きる道。



END

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