「…………………来るのは良いけど、もうちょっと上手くやって欲しい」
部屋の外から聞こえる、アレンを探すリンクの怒鳴り声を暗に指しながらは目を眇めた。
そもそも、アレンがリンクを振り切って来る場所など相当限定されるので、恐らくもう気づかれているだろう。
「私を巻き込まないで欲しいなァ。私まで一緒に説教されるんだからね、コレ。
立場わかってるんですか、とか。甘やかし過ぎです、とかまた言われるんだよ」
「す、すみません」
「と、いうわけだから出てけ」
「ちょっと! 少しで良いから優しくしてくださいよ!!」
あまりにも辛辣な対応に、さすがにアレンも泣きたくなってきた。
こうしてリンクの目を盗んで会いに来たというのに、明らかには機嫌が悪い。
「な、何を怒ってるんですか?」
「怒ってません」
「怒ってるじゃないですか!」
「怒ってないって言ってんでしょ。しつこいよ」
「やっぱり怒ってる!!」
アレンがを怒らせるのはもはや日常茶飯事だが、困ったことにアレンには覚えがなかった。
ふたりきりになぞそうそう成れない現状、何かしでかしたとは考えにくい。
「ぼ、僕なにかしましたか…?」
「覚えがないなら何もしてないんじゃない?」
「それ絶対僕が何かしたって言ってますよね!?」
「言ってねぇよ。ちょっとうるさい黙らないなら出ていけ」
「え、凄い冷たい!?」
平坦な声音で言い放たれたのは、ここ最近では一番の冷たさであった。
これは相当怒りが深い、と判断して、アレンはおずおずと口を開く。
「…あ、あの、…?
不機嫌の理由を教えてください、でないと改善も出来ません…」
「……………」
一瞬、は不機嫌そうに押し黙った。
そして、そのまま俯く。
「…………ずっと、ほったらかしにしてたくせに」
「へ?」
「ずっと人のことほったらかしにしてるくせに、たまにこうやって部屋に来て!
何しに来たかと思えばまともに世間話に花咲かせるでもなく!
一方的に人を押し倒して事の及んだ挙句、朝にはもういなくなってるってなんなの! あんたどこの間男ですか!?」
「間男って! 僕はの恋人じゃないですか!!」
「何が恋人だ!」
怒鳴ると、は手近に転がっていたクッションをアレンに投げつけた。
反射的にそれを受け止めて、アレンは困ったようにを見つめ返す。
それが余計に癪に障ったのか、は眦を釣り上げた。
「そりゃあんたの立場はわかってる。わかってるけど!
でもさ、もう少し…もう少しさ、こう…うぅ…ッ」
「え、ええと…」
無意識なのだろうが、今にも泣きそうな顔をされて、アレンは内心相当狼狽えた。
言葉にしなくても通じるなんてのは、所詮は想像に過ぎないのだということを、痛感する。
「…す、すみません」
「…何に対する謝罪ですかソレは」
「……寂しい思いをさせて、ごめんなさい」
「………………………」
アレンがそう告げた瞬間、バッとの顔は真っ赤になった。
耳まで赤くするその様子に、本当に、ただ単純に寂しいと思っていたんだな、と感じられてアレンは微笑む。
「ち、違っ…寂しくなんかないし!!」
「はいはい」
「なんなのその微笑ましいものを見るような目は!!」
「はいはい」
「話聞けよバカ!」
口が悪くて素直じゃなくて、いきなり怒り出すからわかりにくいけれど。
恋人の不在に寂しがったり、細かいことにこだわったりする姿が、酷く愛おしい。
まだ照れ隠しに騒ぐの体を抱き締め、微笑いながら、アレンはもう一度謝罪の言葉を返した。
深い愛情と、歓喜を滲ませながら。
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