05.さびしがらせてはいけません --- アレン=ウォーカー



「…………………来るのは良いけど、もうちょっと上手くやって欲しい」

部屋の外から聞こえる、アレンを探すリンクの怒鳴り声を暗に指しながらは目を眇めた。
そもそも、アレンがリンクを振り切って来る場所など相当限定されるので、恐らくもう気づかれているだろう。

「私を巻き込まないで欲しいなァ。私まで一緒に説教されるんだからね、コレ。
 立場わかってるんですか、とか。甘やかし過ぎです、とかまた言われるんだよ」
「す、すみません」
「と、いうわけだから出てけ」
「ちょっと! 少しで良いから優しくしてくださいよ!!」

あまりにも辛辣な対応に、さすがにアレンも泣きたくなってきた。
こうしてリンクの目を盗んで会いに来たというのに、明らかには機嫌が悪い。

「な、何を怒ってるんですか?」
「怒ってません」
「怒ってるじゃないですか!」
「怒ってないって言ってんでしょ。しつこいよ」
「やっぱり怒ってる!!」

アレンがを怒らせるのはもはや日常茶飯事だが、困ったことにアレンには覚えがなかった。
ふたりきりになぞそうそう成れない現状、何かしでかしたとは考えにくい。

「ぼ、僕なにかしましたか…?」
「覚えがないなら何もしてないんじゃない?」
「それ絶対僕が何かしたって言ってますよね!?」
「言ってねぇよ。ちょっとうるさい黙らないなら出ていけ」
「え、凄い冷たい!?」

平坦な声音で言い放たれたのは、ここ最近では一番の冷たさであった。
これは相当怒りが深い、と判断して、アレンはおずおずと口を開く。

「…あ、あの、…?
 不機嫌の理由を教えてください、でないと改善も出来ません…」
「……………」

一瞬、は不機嫌そうに押し黙った。
そして、そのまま俯く。

「…………ずっと、ほったらかしにしてたくせに」
「へ?」
「ずっと人のことほったらかしにしてるくせに、たまにこうやって部屋に来て!
 何しに来たかと思えばまともに世間話に花咲かせるでもなく!
 一方的に人を押し倒して事の及んだ挙句、朝にはもういなくなってるってなんなの! あんたどこの間男ですか!?」
「間男って! 僕はの恋人じゃないですか!!」
「何が恋人だ!」

怒鳴ると、は手近に転がっていたクッションをアレンに投げつけた。
反射的にそれを受け止めて、アレンは困ったようにを見つめ返す。
それが余計に癪に障ったのか、は眦を釣り上げた。

「そりゃあんたの立場はわかってる。わかってるけど!
 でもさ、もう少し…もう少しさ、こう…うぅ…ッ」
「え、ええと…」

無意識なのだろうが、今にも泣きそうな顔をされて、アレンは内心相当狼狽えた。
言葉にしなくても通じるなんてのは、所詮は想像に過ぎないのだということを、痛感する。

「…す、すみません」
「…何に対する謝罪ですかソレは」
「……寂しい思いをさせて、ごめんなさい」
「………………………」

アレンがそう告げた瞬間、バッとの顔は真っ赤になった。
耳まで赤くするその様子に、本当に、ただ単純に寂しいと思っていたんだな、と感じられてアレンは微笑む。

「ち、違っ…寂しくなんかないし!!」
「はいはい」
「なんなのその微笑ましいものを見るような目は!!」
「はいはい」
「話聞けよバカ!」

口が悪くて素直じゃなくて、いきなり怒り出すからわかりにくいけれど。
恋人の不在に寂しがったり、細かいことにこだわったりする姿が、酷く愛おしい。
まだ照れ隠しに騒ぐの体を抱き締め、微笑いながら、アレンはもう一度謝罪の言葉を返した。
深い愛情と、歓喜を滲ませながら。









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