注意※銀さんとヒロインが既に恋人設定です。一応パラレル扱いでお願いします。
04.だっそうにきをつけましょう --- 坂田銀時



月光のみを灯りとする薄暗い室内で、白い肌は妖しく際立つ。
僅かに震える華奢な肩。女らしい丸みを帯びた肢体。
初々しさと妖艶さを矛盾なく併せ持つその女は、微かに震える唇を開いた。

「ぎ、銀さん…」
「ん?」
「む、無理…」
「は?」
~~~ッ!!」

いきなり跳ね起きると、肌蹴た襦袢の前を掻き寄せ、は早口に捲し立てた。

「無理無理やっぱ無理!! ごめん無理ッ、やっぱりやめる!!」
「はァ!? お前これ何度目!? ここまで来てやめるとかよく言えるなオイ!?」
「だってなんか緊張する! 無理恥ずかしい! 物凄く照れる!!」

薄暗い部屋でもわかるほどに耳まで赤く染めて捲し立てるに、対する銀時はため息を吐いた。
気が強い、を軽く飛び越えてドSの領域に達する猪娘とは思えない、初々しい反応である。

「…オメーは…普段はドS全開のくせにこういうときだけ…」
「だってね銀さん! 私だって年頃のうら若き女の子なんですよ!
 いざそういうことしようとしたら照れるじゃない! 恥ずかしいじゃない!!」

――互いに想い合う仲となり、いわゆる「恋人同士」なる関係となってだいぶ経つ。
初めてこの状態に陥ったを前にしたときには、「ああ、こいつも普通の女の子なんだな」と、
年上彼氏の優しさと余裕でもって手を引いたのが、どうやら間違った選択肢だったらしい。

「……いや、わかるけどね? ちゃんまだ19歳だもんね?
 ………………でもお前これ何回目だと思ってんの?」
「…………」
「覚えてねぇんだろ」
「…えへ」

可愛らしく笑って誤魔化そうとしているが、全然誤魔化せていない。
逃げ癖がついたのか、いざ事に及ぼうとするとは全力で逃げるようになった。
中でも一番性質が悪いのは、途中まで許しておいていきなり逃げる、まさしく今の状況だ。

「なんだろーねー。この若い子連れ込んだらシャワー浴びてる間に逃げられた援交のオッサン、みたいな気分」
「え、凄い自虐ネタ! 大丈夫だよ銀さんまだ若いよオッサンじゃないよ手前なだけだよ!」
「それほとんどオッサンじゃね?」
「と、とにかく大丈夫だよ援交じゃないよ!」

そこじゃない。
問題はそこではないのだが、軽く混乱状態にある彼女には言うだけ無駄だ。

「あ、あのね銀さん…何も銀さんが嫌とか言ってるんじゃないよ?
 ただね、気恥ずかしいというか緊張してるというか…こう、無性に照れちゃってね…?」
「………」

罪悪感は、一応あるらしい。
あたふたと必死に言い訳するを横目に、銀時は重苦しいため息を吐いて座ったまま背を向けた。
哀愁漂う背中に、ますますは狼狽える。

「拗ねないでってば! いじけないで!
 銀さんのことをす、好きなのはホントなんだってば、でもねあの、恥ずかしくてね…うぅ…」
「……」

とにかく必死の言い訳を並べるが、自分で言っていて説得力を感じなかったらしい。
困ったように眉根を寄せて頭を抱えるの姿は、普段のドS姫の面影はない。

仕方なさそうに振り返ると、銀時はおろおろしているの肩を掴んで抱き寄せた。
一瞬身を固くする彼女の頭を宥めるように撫でてやりつつ、呆れたように口を開く。

「…あー、もう。可愛いなァ、お前は。
 普段平気で人のこと蹴ったり踏んだり容赦なく殴ったりするくせになんだよ」
「…いやそれはそれというか。だってそうさせる銀さんが悪い」
「どういう意味だ」

普段の行いに関しては、悪いと思っていないらしい。
たまには暴力に出る前に踏み止まれないのかね、この猪娘は、と。
そんな他愛のない会話をしながら、少し体を離して柔らかな頬からふっくらとした唇へと指先を滑らせる。
僅かに開いた唇に、深い口づけを落とした。

舌を絡め合う官能的な口づけは、呼吸すらも奪う。
震える指先が、何かを訴えるように、縋るように着物の裾を掴んだ。

「…で、ダメなの?」
「ダメなの」
「この流れだと良いよ、って言わない? 普通。空気読めよ」
「そんな簡単に割り切れたら苦労しないです」
「お前逃げ過ぎじゃね? しかも全力で。
 銀さんもさぁ、男だからさぁ…あんまりこの状態続くとね…?」
「わ、わかってるけどー…で、でもさ…」

困ったように言葉を探しながら、しかし次に彼女が言い放ったのは、結構残酷な一言だった。

「…ちゃんと、その…待って、くれるんでしょ…?」
「………」

伺うように、恐る恐る口にされた言葉の語尾が弱弱しい。
少しばかりの不安と、その内にある信頼の情とに、銀時はため息を吐くしかなかった。

「…そういう信用のされ方したら、手ェ出せねぇだろうが…」
「わーい、銀さん優しー」
「………はーいはい、優しい銀さんで良かったねー」

猫がじゃれつくように抱きついてきたの頭を、少しばかり乱暴に撫でる。
無邪気な子供のような所作だが、歳よりよほど女らしい肢体で抱きつかれて、何も思うなというのは無理な話。
いつまでこの生殺し状態は続くのだろうかと、銀時は頭を抱えたくなる。

「…女って怖ェな、ホント」

思わず呟いたその言葉を、責められる者はいないだろう。









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