「おおおお…これがセルティちゃんの『首』かー…!」
目を輝かせて生首を見つめる女に、臨也は正直頭痛しか覚えなかった。
好奇心が服を着て歩いているようなこの女――に、遂に隠していた物が発見された。
今更と思わなくもない。偶然見つけましたみたいな体を装ってはいたが、相当前から見つかっていたのだろう。
いつでも、彼女を相手にすると臨也は後手に回るしかない。
彼にとっては、それが非常に腹立たしい。
「…よく言うよ。いつから見つけてたの、それ」
「何を言うのかな! たった今見つけたのだよこの至高の宝物をね!」
「そんな言い訳通じるか。…君と話してると頭悪くなりそうだ」
「失礼だな! 私は天才だよ!!」
冗談のように言うが、実際、その自己評価は正しい。
誰が呼び始めたのかは知らないが、彼女に与えられた称号は〝人間コンピュータ〟。
その頭脳が打ち出してくる計算は正確無比。
一度に複数のパソコンや携帯を動かしても、一度も間違いを起こしたことのないその実力。
まさしく、努力する人間を踏みにじるかのような女。
苛立ち紛れに、臨也は舌打ちした。まったくもって面倒な女だ。
「はいはい、天才様は努力家を笑っていれば良いよ。ホント死ね」
「臨也は努力するとこ間違ってるからそれ以前だよ。お前が死ね」
この言い合いもいつも通りだった。
ここに新羅でもいれば、「君達の頭は高校生で止まってるね。あ、中学生かな?」とでも突っ込んだだろう。
「…………あのさ。俺も正直このやりとり飽きたんだけど」
「先に突っかかって来たの臨也じゃん。そんなに私が好きなのかモテる女は辛いなァ」
「馬鹿じゃないの」
「またまた、素直じゃないね?
それともなにか、私がセルティちゃんの『首』に興味津々なのか気に入らないのかな臨也くんは?」
黙っていればそれこそ可憐な顔に、はにやにやと意地の悪い笑みを浮かべる。
そう、これが嫌だ。少女のように幼く可憐なその顔立ちで、悪意しか無いような表情を浮かべるところが。
この表情をしている時のは、本当に性質が悪い。
「…別に興味でもなんでも持ってれば良いよ。そんなの規制したりしないさ。
ただ俺の邪魔をしないでくれるなら、それこそ声が枯れるまでI LOVE YOUを繰り返しても良い」
「あははは!! 胡散臭い愛の言葉ね、素敵だよ臨也!!」
…そこで笑うか。本当に変な女。
実に楽しそうに笑うを横目に、臨也は彼にしては珍しく、不機嫌そうに顔をしかめた。
「波江さんをバカに出来ないねぇ、臨也」
「…はァ? いきなり何言い出すの? なんで波江が出てくるわけ?」
「だって、今の臨也はセルティちゃんの『首』に嫉妬してるよ?」
「…………は?」
予想もしていなかった一言に、臨也は一切の動きを止めた。
対するは、その細く白い指先で『首』を弄びながら、嗤う。
「そんなに、私の興味が他に移るのが不服かい?
…そうだね、私の興味の対象は来神に居た頃から臨也とシズちゃんにしか向けられていなかったものね?」
「な――にを、言ってるのかわからないん、だけど」
「またまた。とぼけんなよ」
その容姿にそぐわない、妖艶な微笑を湛えて、は視線を『首』から臨也へと向ける。
唖然としている臨也の方へ身を乗り出すと、は彼の胸ぐらをぐいっと掴み、引き寄せた。
「安心して? 私はオカルトにそこまでの興味は無いよ、臨也。
私が愛しているのは『人間』全てを愛してる馬鹿と、『普通の人間』に焦がれる怪物じみた馬鹿だけだから」
「………」
触れ合うほどの距離で囁かれた、言葉。
そんなことを言い放つ彼女こそが、異常で愚かだと、臨也は思う。
だがそれを今更口にすることは無い。
――――彼女が『異常』であることなど、今に始まったことではないのだから。
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