※このSSは『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルル夢です。視点はルル→ヒロイン。舞台は無印時代。
 ルル×ヒロインというより完全にヒロイン×ルル。ヒロインがドSです。閲覧の際は御注意を!!



――有り大抵言えば、俺は彼女が好きではなかった。
もっとはっきりと言えば、嫌いな人種だ。

まず、挙動不審だ。
いきなり学園の敷地内で倒れて居た、という出現経緯から言って怪し過ぎる。
その上、妙に晴れやかに「記憶喪失です!」などとのたまった変人だ。
…思い返すと本当にただの不審者じゃないか。
しかしそれ以上に、彼女の存在自体が煩わしい。

「……………」
「人の顔見て眉間に皺寄せるとかあからさま過ぎていっそ清々しいね、ルルたん」
「……変なあだ名で呼ぶな変人女」
「人目が無くなると途端に毒舌だよこのヘタレ」
「本当に失礼な奴だな」
「あんたもなー」

…そう、これだ。
10返せば100で返ってくるような。
これで根が素直なら、多少の可愛げはあろうというもの。
だがこの女にそんな殊勝なものは無い。欠片ほどにもだ。

「……お前にギアスが効かないのが本気で腹立たしいよ、この劣化版魔女が」
「劣化版とか言った!」
「じゃあ役立たずか」
「あんたの役に立つために居るんじゃないよ!」
「じゃあなんでここに居るんだ!?」

思わず怒鳴り返すと、一瞬きょとんと目を瞠った後、

「暇だから」

あろうことか、そう即答した。
最悪だ。何様のつもりだ、この女。

「帰れ」
「えー」

切って捨てたところで、まったく応えない。
…この女、空気が読めないのではない。敢えて読まないのだ。
それがわかってしまうから、余計に腹立たしい。


…ああ、もう。煩わしい。
いっそ居ないものとして扱おう。そうだ、無視しよう。
暇だと言うのだから、わざわざ相手をして喜ばせてやる必要はない。

そう決意して、バスルームの扉を開ける。
シャワーの音でも聞けば、仮にも女なのだから大人しくするか部屋を出るかするだろう。

「ルルたんもスーちゃんも居なくて学校つまんない、つまんなーい!」


……
………全然、俺の予想に該当しなかった。

結果的にバスルームの扉越しに会話する羽目になる。
…何故だ。何故無視仕切れないんだ、俺は。

「だからそのあだ名をどうにか…ああ、もう良い!
 好き勝手に人の私室を使っておいてまだ要求するのか?」
「おうとも。私のおもちゃになれ」
「豆粒程度で良いから恥じらいを持て」
「何がだ。っていうか、」

そこで言葉を切ると、一瞬、変な間が空いた。
不審に思ってシャワーを緩めると、聞こえたのは押し殺したような笑い声。
次の瞬間――恐らくシャワーの音が緩むのを待っていたに違いない――、笑いながらとんでもないことを言い放った。

「同世代の女の前で、平気でシャワー浴びてるあんたの方が破廉恥だ」
「誰が破廉恥だ失礼な! だいいちここは俺の部屋だ、何をしようが勝手だろう!」
「おいおい怒鳴るなよハニー。天下のゼロ様が自室で女と口論は格好つかないよぅ?」
「こっ、この女っ…」

ぷちっ、と。
俺の中で、何かが切れた。

「もう我慢の限界だ! 出てけッ!!」

勢い良く、乱暴にバスルームの扉を開けて怒鳴る。
対する相手はまったく意に介せず、あろう事かため息まで吐いた。

「髪くらい拭けよ。ガキか」
「…貴様は人の揚げ足しか取れないのかッ!!」
「暴れるとタオル落ちるぞー、貧弱ボーイ」
「暴れてなどいない! って、誰が貧弱だッ」
「ルルたんが」

は、腹が立つ…!!
顔色ひとつ変えないというのはどういうわけだ。
仮にも女、しかも嫁入り前の少女だぞ。
普通、もっとこう、あるだろうが相応しい反応が!!

「毛ェ逆立てた猫じゃあるまいし、ちょっと落ち着こうよ」
「…誰のせいだと?」
「私カナ?」
「ああ、そうだ! 貴様のせいだ!」

ふざけたように、にやにや笑うその仕草が癪に障る。
黙っていれば、見目の良い少女なのだ。
穏やかに微笑んで座っていれば、何もここまで無下にはしない。

見た目と中身が、これほど食い違う女は他にいない。
…C.C.? あれは魔女だ、どうでも良い。元は人間でも今は人間じゃない。

「だいたい、仮にも女だろう! 男の部屋に意味もなく居座る…な…っ?!」

いつの間にか、眼前に彼女は居た。
感情的になり過ぎて、ここまで近づくまで気付かなかったのだ。

「…お、おい。近いぞ」
「………」

応えず、彼女は無言でスッと手を伸ばしてきた。
華奢な指先が、濡れっぱなしの俺の髪を捕らえる。
その一連の動作が、妙に洗練されているように感じて、思わず目で追った。

「……」

軽く爪先に力を入れて、背伸びする。
若干まだ目線の高さは合わないが、それでも距離が近くなる。
硬直している俺に構わず、彼女は手に捕らえた濡れた髪に、軽く口付けた。

「…風邪ひくよ? ルルーシュ」
「~~~~ッ!!!」

一瞬の間を置いて、にやりと笑うその表情に正気が戻る。
明らかに計算された行動だ。紛う事なき嫌がらせだ。
よりによってこの俺が、計算ずくの行動に踊らされただと…!?

「はっ…破廉恥はどっちだ馬鹿女ッ!!!!」

手を払い除けて、そのままもう一度バスルームに引っ込む。
慌てて捻ったシャワーの蛇口は水だったが、もうこの際どうでも良かった。

…最悪だ。してやられたとはこのことだ。
今頃、堪えきれずに腹を抱えて笑っているに違いない。


何が悔しいって、何が屈辱かって、
………そんな女に、一瞬でも目を奪われたことが、何よりも。


+++


バスルームにルルーシュが駆け込むのと、入れ替わるようにその女は現れた。
見事なプロポーションと、長く艶やかな髪。
まさしく人間離れした、その美貌。魔女の通り名に相応しい。

。来てたのか」
「おお、しーつー。お邪魔してるよー」
「……さっきルルーシュの怒鳴り声が聞こえたが、何かしたか?」
「んー? ヤツアタリ?」

笑いながら応えると、魔女――C.C.は、小さく息を吐いた。呆れたように。

「ふぅん? 良い趣味だが、やり過ぎないよう程々にな」
「はっはっは、非道いなァ魔女サマ」

多少のことでは動揺すらしない彼女に、私は笑う。
だけど次の瞬間、そんなニセモノの笑顔なんて消え去った。

――こんな世界に閉じ込められたんだから、少しくらい溜飲を下げさせてくれても良いじゃない?」
「……お前、」

初めて、C.C.の表情が動く。
だけどそれは一瞬のことで、すぐに胡散臭い笑みに塗り替えられた。

「…どっちが魔女だか。性悪め」
「あんたに言われたくねぇっての、ピザ女」

取っつきにくい…。
ルルーシュの反応がいちいち面白いだけに、彼女はつまらない。
こっちの何倍も生きてる魔女様なのだから、掴み所がないのは仕方ないかもしれないが。

「ああ、そうだ。?」
「うん?」

思いついたように、C.C.が話を振ってくる。
珍しいな、と思いながら視線を向けると、彼女は最高に嫌な笑顔で笑っていた。

「あいつは鈍いぞ。しかも奥手の童貞坊やだ。惚れたら苦労すると思うが?」
「…あ? 何言っちゃってんの魔女サマ」

何を言い出すのかと思えば…。
深く息を吐きながら、私はソファーに座り直した。
ただし、きちんと座ると言うよりは、相当態度の悪い所作で。









「あんな貧弱ボーイに、このサマが惚れて堪るかってのよ」









薄い扉の向こう側に、渦中の人間がいるのが少し気掛かりだけど。
紛う事なき本音で、私は目の前の魔女にそう言い返した。









アンヴィバレンス----濡れた髪に、

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