※注意※ 学パロです。



――春。それは学生にとっては、大きな意味を持つ季節。
そして私は、今日、ここで、最高に恐ろしい通告を受けることになったのだ。



「…。3-A所属。成績は常に学年トップ、一時期は生徒会長候補にもなってるね。
 しかしあんた、あの名門進学校,黒の学園の入学試験に受かってたのに、なんだってこんな学校に来たんだか」
「家から近かったからです」
「そんな理由かい!」

そんな理由ですよ。
私の愛する親友殿は黒の学園に行ったけど、私は中学の終わりに引っ越したから遠くなってしまった。
通おうと思えば通えたし、寮に入ることも出来た。
でも、ぶっちゃけ面倒くさかったのだ。朝早く起きるのも、規則に縛られた寮生活も。

「…まぁ、それは良い。で、あんた、ここに呼ばれた理由はわかってるかい?」
「さぁ。理事長に呼ばれる覚えなんかサラサラ無いです」
「あんたそれ本気かい」
「う?」

凄味の効いた声で言われて、私は首を傾げた。
そんな私を見て、理事長は呆れたように深くため息を吐いた。

「…傷害事件起こした生徒が言う台詞じゃないだろう」
「えー? 言い掛かりやめてくださいよー」
「何が言い掛かりだい!! …春休み中に、しつこいナンパ野郎を鉄パイプでボコ殴りにしたらしいじゃないか」
「鉄パイプじゃありません! 金属バットです!」
「同じじゃボケェェェェェェッ!!」

思いっきり怒鳴られて、さすがの私も肩を竦めた。

「えー…理事長ォ、私ってば退学ですかぁ?」
「ま、まぁ…ある意味正当防衛でもあるし、何よりあんたは我が校始まって以来の秀才。
 学校生活に関して落ち度はなかったってのも考慮してだね、」
「謹慎? じゃ、帰りますー」
「話は最後まで聞けこのボケ娘がァッ!!」
「あだっ!?」

遂に手が出た。
机上に乗っていたメモ帳を投げつけられ、しかも見事にヒット。
…地味に痛いです。

「…暴力反対です理事長」
「やかましい。…で、話を戻すよ、良いね。
 ……。あんたには、3-Zに移籍してもらうよ」
「は、」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。
ゆっくりと瞬きをして、私は理事長の言葉を反芻する。
…移籍。まぁ、A組は特進クラス、問題を起こした生徒がのうのうと在籍出来るクラスじゃない。
で、今、理事長が私に告げた移籍先のクラスは…、

「えええええええッ!? ちょ、待っ、よりによって3Z!? 陸の孤島,3Z!? 島流しじゃんソレ!」
「退学よりマシだろ」
「いやいや! だったら私、黒の学園に編入し直すから!」
「傷害事件起こした奴が何言ってんだい。
 書類作成とか全部終わってるし、あんたが春休み中に学校に置いてった荷物も3Zに移動させといた」
「おおい、強制退去かよ!!」
「やかましい小娘だね。で、今日からあんたの担任になる教師だが…」

理事長が言いかけた瞬間、理事長室のドアが開かれた。
反射的に振り返ると、そこには白衣を着た若い男が立っている。

「失礼しまーす。呼んだか、理事長」
「遅いんだよあんたは。
 紹介する必要もないだろ、。3Z担任、国語科教師の坂田銀八だ」

知っていた。
というより、この名物教師を知らない生徒は、それこそ転校生か新入生くらいだろう。

――坂田銀八。常にZ組を担任する、白衣を着てるけど国語科教師。
顔はまぁ良い方だけど、性格は適当。授業中に喫煙するわ居眠りするわ、むしろやる気無いわのアンニュイ教師だ。

「おー? お前かぁ、ナンパ野郎を日本刀で返り討ちにしたっていうのは」
「日本刀じゃないです金属バットです」
「なんか逆にリアリティあって怖いよねそっちの方が。ダメだよー、死体はちゃんと隠さないと」
「殺してません。辛うじて」
「そっかー、相手生きてんだ。災難だったなー」
「まったくです」
「あんたら会話がおかしいだろ」

冷静な理事長のツッコミに、私は我に返る。
なんだか今、完璧にペースに巻き込まれていた様な気がする…。

「とにかく銀八、その娘頼むよ」
「へいへい。んじゃ行くぞー、ちゃん」
「…はぁ」

『ちゃん』って。…小学校か、ここは。
緩い先生だなぁ、ホントに。

掃き溜めとまで呼ばれる3Z。
そんなとこで残り1年を過ごすのかと思うと、なんだかちょっと憂鬱だった。


+++


「まー、他のクラスと違ってうちはユルユルだから、テキトーに毎日過ごせば良いよ」
「それが教師の言葉ですか?」
「えー。だってメンドイでしょ、学校は楽しむ場所よー?」
「………」

そりゃまぁ、進学校じゃないけどさ、この学校。
…っていうか、やっぱこの人が特殊なんだよね。うん。

「あのぉ、坂田先生…」
「あー、ダメダメ」
「え?」

気怠げに言われて、私は首を傾げた。
教室の前で足を止めて、先生は振り返る。

「俺、名前で呼ばれる方が好きなの。特に女子」
「は?」
「つーわけで、ちゃんも名前で呼ぶように。ただし先生は付けてくださーい」
「あの、」
「OK? んじゃ、言ってみようかー」
「え、ええと…銀八先生?」
「よろしい」

一応言い直すと、先生は満足そうに頷いた。
かと思ったら、ずいっと身を屈めて私の顔を覗き込む。

ちゃんさァ、ゴルフクラブで男を殴り飛ばす割に、」
「ゴルフクラブじゃないです金属バットです」
「どっちでも良いよそんなん。…で、その割には結構可愛いな」
「は、」

何を言っちゃってるんでしょうか、この先生。
思わず言葉に詰まる私に、銀八先生は口角を持ち上げて笑った。

「んー? どーした、顔赤いけど」
「な、なんでも無いですッ! ってか顔近ッ」

っていうか、なんでいつの間にか壁に追い詰められてんの私!?
顔近いよ! なんでこんな詰め寄ってくるのこの人!?

ひとりでパニックに陥ってる私を眺めている先生は、どこか楽しそうに見えなくもない。
怖い人か! この先生怖い人なのか!? ほら、なんて言うの、Sってやつですか!?

「…せんせー。女生徒口説いてないでHR始めて下さい」

返す言葉を必死に考える私の思考は、地味に大きな音を立てて開かれたドアの音によって現実に引き戻された。
そっちの方に視線を向けると、これまた凡庸で地味な男子生徒が、教室のドアから顔を出している。

「…新八よォ、お前タイミング最高だぞ。腹立つなー」
「教師が生徒を口説く方がどうかしてんですよ!!」

ホントだよ。
メガネの男子生徒のツッコミを受けて、小さく息を吐いてから銀八先生は私から離れた。

「へーいへい。ったく…んじゃHR始めっぞー」

そして、何事もなかったかのように教室に入っていく。
…え? なに、あれ。

「…な、な、な…」
「あー、大丈夫? あの人基本的にああいうひとだから、真面目に相手しない方が良いですよ」

思わず座り込んだ私に、新八と呼ばれていた生徒が手を差し伸べてくる。
その手を掴んで立ち上がると、彼は人好きのする笑顔で口を開いた。

「編入生ですよね? 僕は志村新八って言います」
「あ、私は
「おーい、ふたりとも早く教室入ってこーい」

自己紹介の途中で呼ばれて、私と新八は顔を見合わせる。
…どうやらあの坂田銀八という教師は、割と…というよりかなり身勝手なところがあるらしい。
教師としてどうなのそれ。

「せんせー、その子誰アルかー?」
「噂の編入生じゃねーの?」
「綺麗な人ねぇ」

教室に入ると、生徒達は興味津々な視線を私に向けてくる。
転校生とかによくあるパターンだけど、ここ3Zは銀魂高校の掃き溜めクラス。
よって、別のクラスとの接点はそうそう多くはない為、こっちが知っていても彼らは私を知らない。

「はーい、静かにしろー。
 今日からこの3Zの教室で一緒に勉強するちゃんだよー」
「…よ、よろしく」
「みんな仲良くするよーに。ただし男子、いくら美人だからって手ェ出すなよー。
 下手するとテニスラケットでボコ殴りにされっから。過激派だからこの子」
「先生、テニスラケットじゃなくて金属バットです」
「余計怖ェよ」

さり気なく訂正した私に、銀八先生は速攻で突っ込んでクラス名簿で私の頭を叩いた。
…地味に痛い。
恨めしげに見上げると、にやりと笑われる。

「ま、これからよろしくなー。ちゃん」
「はーい…っていうか先生」
「お?」

返事を返す以外で、ほぼ初めて先生に話しかけた。
恐らくは先生もそれに気付いていたんだろう。少しだけ不思議そうに、かくんと首を傾げる。

「私、タバコ嫌いなんです。頭クラクラするんです」
「…え。お前それ、銀八先生全否定じゃね?」

知りませんよ。
だって嫌いなもんは仕方ないじゃないですか。









運命的事件の幸福----クラクラする。

気に入っていただけたら、ぽちっと押してあげてください。コメントは入れなくてもOKです。